ディズニー史上初の快挙を受け…
──平原さんは昨年舞台『メリー・ポピンズ』で主役のメリー・ポピンズ役を演じられていましたが、今回ディズニー映画『メリー・ポピンズ リターンズ』で劇中のセリフと歌の吹き替え、さらにエンドソングも担当されることになったお気持ちから伺わせてください。平原綾香:吹き替えはオーディションだったんです、なので受かってよかったという感じだったんですけども。
その先にエンドソングがあることも知らなかったんですけど、途中「エンドソングも是非」ということでお声がけいただいて歌うことになったんです。すごく嬉しかったですね!
エンドソングと吹き替えの両方を同じ人が担当するっていうのは初めてのことらしいので、すごく光栄だなって思いました。
──聞くところによると、関係者の方々も「エンドソングも平原さんじゃなきゃ!」という声を挙げられていたそうで。
平原綾香:昨年の舞台の時もメリーの研究をずっとしてきたので、その経験に助けられました。
──研究というのは、オリジナルの『メリー・ポピンズ』からインスピレーションを得られたり?
平原綾香:ジュリー・アンドリュースの『メリー・ポピンズ』も観たんですけど、原作の小説もまた違ったメリーなので、どう演じようかというところはすごく難しかったです。
というのも、みんなそれぞれに“メリーってこういう人”っていう人物像が心の中にあるので、人によって誰かが表現するメリーがイメージと違ったりするんですよね。
──では舞台『メリー・ポピンズ』で演じられたメリーとはまた違ったメリーを、映画『メリー・ポピンズ リターンズ』の方では感じられるんですね。
平原綾香:そうですね、エミリー(ブラント)さんが『メリー・ポピンズ リターンズ』のメリーを演じられていたからこそ、思い切ってできました。
──劇中で歌われている『幸せのありか』と、エンドソングの『幸せのありか』、アレンジも違ってきていますが、表現も全然違ってそれぞれに胸打たれます。
平原綾香:良かったです(笑)。劇中歌の方は、子供達を寝かしつける時に歌うのであまり歌い上げるような感じではなく、言葉を語るように歌うような歌い方にしました。
──劇中歌の方は映像の口の動きに合わせて歌うというのが大前提にあって、リズムに縛りがある中でこれだけの表現ができるのが、平原さんだからこそだと感じました。
平原綾香:確かに、自分の歌ではないからこそ歌うだけでも大変なのに、映像に合わせていくっていうのは大変な作業ではありました。
でも、いつもは1から曲を作り出していくことが多いんですけど、今回は大本があって、その口の動きや表情に合わせて歌が歌えるっていうのは、私が頑張ればいいだけだからと、とても楽しくできました。
──これまで声優業っていうのは…
平原綾香:1度だけジュリー・アンドリュースの『サウンド・オブ・ミュージック』でやったことがあるんですけど、ジュリー・アンドリュースと何か縁があるんですかね(笑)。
昨年震災の多かった日本にも…
──エンドソングの方の『幸せのありか』について詳しく伺っていきたいと思いますが、「真夜中の」で始まる最初のフレーズから鳥肌が立つくらい、平原さんの歌声がスッと染み込んできます!本当に毎回鳥肌が立つんですっ!平原綾香:ハハハ(笑)!ありがとうございます。そこもこだわったところなので嬉しいですね。
──この曲を受け取ってから平原さんが表現するまでに、映画とは離れたところでイメージした曲の背景ですとか、ご自身の体験ってありますか?
平原綾香:この歌詞を読んだ時はすごく切なくなったんです。原文タイトルを訳すと“失くしたものが住む場所”になりますけど、こういう切り口で書かれている曲って世界にこの曲だけだと思うんです。
っていうのも、愛の曲でしたり、会えない人を歌う歌っていうのはいっぱいあると思うんですけど、なくなってしまったと思ったものも、実は失くしたものが住む場所にいるだけで、思い出そうとすればいつも会いに来てくれるという歌は私もこれまでに歌ったことがなくて、胸にくるものがありましたね。
去年たくさん災害もありましたし、大切な人を亡くしてしまった方たちにも自然な形で届く歌でもあると思うので、大事に歌いました。
──本当に、何かをなくしてしまって辛い思いをしている人に届けたい曲です。劇中ではどのような心情が表された曲となっているのでしょう?
平原綾香:劇中での『幸せのありか』は早くにお母さんを亡くした子供たちが寂しいっていうことを嘆いた時に子どもに向けて歌うんですけど、実はメリー・ポピンズの寂しさっていうのも歌われています。
ジュリー・アンドリュースの『メリー・ポピンズ』の時に教えていた子供が『メリー・ポピンズ リターンズ』では大人になっていて、当時のことを空想だったと思ってしまっているんです。
「星の彼方で 見てるから 見つけ出して」という歌詞が曲の最後の方にあるんですけども、それはメリーからのメッセージのように思います。
──映画を見た後に改めてエンドソングとして流れる『幸せのありか』を聴くとメリーのそんな気持ちも感じられて涙が出てきそうな。
平原綾香:劇中で『幸せのありか』を歌うときも、エミリーが演じるメリーもとっても切ない表情をするんです。
今回初めてメリー・ポピンズが忘れられてしまっているかもしれないという不安とか寂しさみたいなところが見えるので、見所の一つであるすごく良いシーンです。