偽りの自分を演じることへの虚しさ
美しいピアノの音色と優しくも切なげな歌声に癒されるが、歌詞には“自分を変えたい”という強い思いを持った人間が描かれている。
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誰にも見つからない
街の灯も灯らない
交差するクレーンを一人見上げた
今は叶わないことばかりのまま
ただあるいていこう
≪まっしろ 歌詞より抜粋≫
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「誰にも見つからない」とあるが、これは孤独だというわけではない。人付き合いは人並みにできるし、社交性もそこそこある。
ただそれは、本当の自分を隠してるからこそできることでもあるのだ。
本当の自分を曝け出せたら、本音で話をできたらと思うが、人が自分に抱いているイメージに近づくように、本当の自分を隠し、いつも偽りの自分を演じてしまう。相手によって態度を変えることもある。
いや、そのように言ってしまうと八方美人のようで良くない感じに捉えられるが、相手によって態度を変えて、合わせにいっていると言えば、まだ聞こえはいいだろうか。誰しも人付き合いをしていく中で、そういう経験をした人は少なくないはずだ。
この歌詞には、人間関係の中で生まれる、自分の本心と偽りの自分との葛藤が描かれ、“いつも本当の自分で人と接しられたら”と切実な思いも読み取れる。
自分を変えるタイミングはいつでもいい
歌詞の途中に幾度と登場する「鐘」とは何だろうか?
著者は、「鐘」は自分を変える決心及び最初のステップだと捉える。“自分を変えたい”と考えてから、すぐに変えられるわけではない。
例えば、人と話す時には少しずつ自分の本音も織り交ぜて話すようにしていくとか、言いたいことは飲み込まずに、発言するようにしていくなどの、変えていく為の過程が必要なのだ。
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冷たさが吹いてきた 悲しみがこみあげてきた
降り積もったすべてよ 時間を超えてよ
そして今まで全部なかったように
気づいたら 少し涙
もう一度帰れたとしたなら
全てに変えても守りたいものを
決して手放さないように
はしっていこう
≪まっしろ 歌詞より抜粋≫
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自分の過去を後悔すると同時に、新たな自分に生まれ変わって歩き出す、これからの人生に希望を抱く歌詞。タイトルの『まっしろ』は今までの自分をリセットするということを表現したものだ。
今の自分を変えることは、そう容易なことではない。
『まっしろ』は自分を変えたいと思う気持ちを持っている人や、変えようと努力している人を応援してくれる楽曲になっている。
TEXT 蓮実 あこ