不思議なフレーズが耳に残る
4人組バンド、カラスは真っ白の代表曲『fake!fake!』。
ウイスパーボイスの女性ボーカルにテクニカルで力強いバンドサウンドが特徴のグループです。かなりテンポが速いこの曲。この疾走感に魅力があります。
作詞作曲のヤギヌマカナはインタビューで、この曲は自身の中ではかなりストレートな歌詞であると言っています。不思議なフレーズがならび、男女の歌であるようにも見えるこの曲。
fake!fake!
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きかないでBGM 中途半端な
シュガーレスなんて いらない いらない
交わしてstep step step 超特急でお願い
メリーゴーランドじゃ 足りない 足りない
≪fake!fake! 歌詞より抜粋≫
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という歌詞で始まります。韻を踏んだこのフレーズは、女性が好きな男性に対して刺激を求めているような意味にもとれます。
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言わないでAtoZ ちゃんと見せてよ
頭のすみで 消せない 消せない
壊してGPS ちょっと待てないわ
君のせいよ そう 3・2・1
≪fake!fake! 歌詞より抜粋≫
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のフレーズ。ここも言葉で言わず態度で見せてほしい、GPSを壊したいほど待てないというあせる気持ちを表現しているように見えます。そしてサビ。
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ねえ Mr.SUNDAY 待って かまって
時を伝って ねじを巻いてよ
ねえ Mr.SUNDAY 待って かまって
箱をあけたら ほら fake! fake!
≪fake!fake! 歌詞より抜粋≫
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この曲は男女の関係以上のスケールを持ち始めます。
「ねえMr.SUNDAY 待ってかまって」ということから日曜日が過ぎるのが惜しいという気持ちがあるのでしょう。そのMr.をつけるほどの「日曜日」というのは、男女で過ごそうが友達と楽しもうが一人だろうが、とにかく「楽しいこと」の象徴。楽しいことが過ぎていくのをつかまえたい。
「待ってかまって」と繰り返し言いたくなるほど、「時を伝って」ねじを巻いて時間を巻き戻したくなるほど、つかまえたい。
そんな「楽しいことをつかまえたい」切実な思いが、曲のスピード感にもキャラクターが疾走するMVにもあらわれています。その「楽しいこと」は、きっとカラスも真っ白に燃え尽きるぐらいの楽しさ。
しかしそんな「楽しいこと」は「箱を」開けてみれば、実際はただの「fake」。タイトルにしたくなるような「偽物」であることも分かっています。
でもそれでも「Mr.SUNDAY」にかまってほしい。フェイクだと分かっていても「鏡に映るものは嘘ばかり」と分かっていても、人は「楽しいこと」を求めずにはいられないのです。
この曲が人の心をとらえるのは、そんな人の業のようなものを密かにとらえているからなのでしょう。
●fake!fake!
"fake"こそがエンターテインメント
カラスは真っ白。そんなことは皆fakeだと知っています。でも「カラスは真っ白」と言いたい。それがエンターテインメント、楽しいこと、人の業なんですね。「白いカラス」は自然界に存在しますが、そんな事実よりfake!fake!なんですね。
TEXT:改訂木魚 (じゃぶけん東京本部)