デビュー11年目「THUNDERBIRD」をリリース
──大橋トリオさんはデビュー11年目ということで、今回のニューアルバム「THUNDERBIRD」でも、求める音楽を探求されていると思うのですが、今作で目指したものはどういうものなのでしょう?大橋トリオ:去年アナログレコードにハマったので、そういう質感のものを作りたいなというのが今回のテーマです。
小さい頃、父親の影響でレコードをよく聴いていました。改めて去年聴き返したんです。アナログって何なんだろうって。何でアナログレコードになるとこんなに音が暖かいんだろうとか、グルーヴ感があるんだろうとか、音楽的なんだろうとか、そういうのをすごく考えました。
そのサウンド、その存在、音楽の聴き方を1曲1曲すごく大事に聴く感じです。レコードは早送りとかもできないし、頭出しとかも難しい、取り扱いも結構気をつかいますよね。でも今は全くその逆じゃないですか。いくらでも聞き放題だし、すぐ目的の曲が見つかる。
僕はそうやって大事に聴いてきた世代なので、古き良きというか、そういう行為を忘れないでほしい。ファンクラブのイベントとかで布教しているんですよ。レコード屋さんで掘り出し物を見つけて、実際にレコードをかけて、ファンの方にプレゼントするんです。その時に、レコードプレイヤー持ってないんだったら買ってくださいねって言って、その会でレコードの良さをこんこんと説いてます。
「テレパシー」は、YMOのオマージュと
──そうですよね、昔は針がレコードの溝を走る音とかを聴きながら音楽を聴いていました。それでは「THUNDERBIRD」の収録楽曲についても聞かせてください。M1. 「テレパシー」。こちらが私は”どストライク”で、アルバム1曲目から浸りすぎました。そのあとの楽曲でも、“このテレパシーの残り香”を探してしまったほどです。古くと言っても当時は最先端のアナログ的なシンセ感、すごく心地よかったです。
大橋トリオ:今回の楽曲の音は、ギター以外は全部パソコンの中の音です。そして、この「テレパシー」は、YMOのオマージュというか。はっきり言ってしまっていいと思うんですけど、その中にT-SQUARE的なシンセサイザーを入れたんですよ。T-SQUAREのあの感じは、3年前にはリリースできなかったんです。要は時代がまだ1周してなかったんですね。僕は、中学校1、2年の時に吹奏楽部で、T-SQUAREの『TRUTH』をやっていたのを思い出します。
──続くリード曲のM2. 「THUNDERBIRD」は緩く流れながら大人の渋かっこよさ。若い奴はわからなくていいかなと思うくらいの、ムーディーでエロティックさですよね。最後のサビ前とか、ライブだとすごいグルーヴが生まれそうです。
大橋トリオ:本当にいろんなグルーヴ、サウンドもそうなんですけど、その辺がうまいこと絡みあえているなと思うんですね。だから実際はライブでの再現は難しいと思うんです。
ドラムがいわゆるライブのドーン!ターン!みたいな感じだとこれは再現できないかもしれない。逆にその感じになったときに別の良さが生まれる可能性もあるから、それはちょっとやってみないと分からないですね。メンバーがどこまでこれを解釈してグルーヴしてくれるのかという。
アルバム名「THUNDERBIRD」の理由
──ライブでの演奏は一味違う表現になりそうですね。タイトルはどうして「THUNDERBIRD」にされたんですか?大橋トリオ:このアルバムはアナログレコードというテーマだったので、タイトルが1番最後に決まったんですけど、アナログレコードの時代を象徴するような、その雰囲気を持つような言葉って何だろうと考えていたら、スタッフが考え出してくれました。
車の名前だったんですよ。マスタングとか、エルカミーノとか。その中にTHUNDERBIRDがあって、これは2周くらいした感じでダサカッコイイなと思っています。
──わかります。その年代だとアメ車の「THUNDERBIRD」のカクカクしく尖っている。アナログ感がありますね。そこは楽曲を聴いても、想像できませんでした。ファンの方も、何でTHUNDERBIRDなんだろうと思っていた方も、今インタビュー読まれて、「あぁ!」って思っているかもしれないですね。
大橋トリオ:「THUNDERBIRDっていったら?」、僕は人形劇のサンダーバードと、ツアー中で毎回乗る特急サンダーバードでした。あとギブソンサンダーバードっていうのもありますね。それぞれのTHUNDERBIRDがあると思うので(笑)
──もう1曲だけ聞かせてください。M4. 「S・M・I・L・E・S」が上戸彩さん、小芝風花さんが出演しているTikTokのCM曲ですね。11月から放送されています。大橋トリオさんとTikTokという組み合わせに、ギャップがありますが、CMが流れて何か変化はございますか?
大橋トリオ:周りの変化は特にないんですけど、僕が変化しました。TikTokって面白いんですよ。最初ちょっと若者向けだなと思って、見ていて何が面白いかよくわからなくて。
それでも見ていたら、割とちゃんとしたダンスの基礎みたいなステップがあるんですけど、けっこう有名なので5、6個あって、それを見ていたら何かだんだんクセになってきて、ちょっとやってみようと思ったんです。やり出したらちょっとできるようになるんですよ。コツをつかむまではちょっと難しいんですけど、やっているうちにできるようになりました。
そして「THUNDERBIRD」のPVどうするっていう時にTikTok的なクセになるような印象的なダンスにしようと。こういうグルービィな曲なのでそういうのにしようって言って。
──そこから、あのPVを作られたんですか!
大橋トリオ:そうです、完全に。踊っている人たちが割とコンテンポラリーなダンサーなので、いわゆるダンスっていう推しではないと思うんですが。
だから若者の感覚がまだ自分の中に残ってるんだ、っていうのは分かってよかったです(笑)。
──ご自身はアカウントとって投稿されたりするんですか?
大橋トリオ:しないです。ちょっと手遅れかなと思って。今さら感がね。あんまりいいね!つかなかったりとか、そういうのは心折れるんで。そんな心強くないから(笑)。
TikTokの社員の人が年末のライブに来てくれて、楽屋挨拶の時にアカウント作って投稿してくださいって言われたんですけどね(笑)