アトムの誕生に合わせて生まれた曲
『Now or Never』はCHEMISTRY meets m-flo名義の2003年発表の曲です。
「ASTRO BOY 鉄腕アトム」の主題歌である今作。「送り出そうぜ 科学の子」「アストロボーイ」とアトムに関する歌詞があります。テンポが良く近未来を感じさせるアレンジ。オープニングのアニメーションとして合っていた楽曲です。
タイトルの『Now or Never』は「今かもしくは永遠にないか」から転じて「今こそ」の意味。このタイトル通り「今こそ」のタイミングで作られた2003年のアニメアトム。原作におけるアトムの誕生日は2003年4月7日なのです。
Now or Never
----------------
どこから
(この話を始めよう?)
誰にも
(話してないすべてを)
みんなで (このまま)
このまま (みんなで)
(送りだそうぜ
科学の子)
≪Now or Never 歌詞より抜粋≫
----------------
この歌いだしのとおり、アトムは「科学の子」の物語。「この話をはじめよう?」というフレーズがOP感を出します。
この歌いだしはCHEMISTRY とm-floの掛け合いになっています。最初からそれぞれの声で自己紹介をしているんですね。
----------------
Now or never…
いくつもの
Now or never…
メモリーを 共につくり
ここまで来たのだろう?
Now or never…
目を閉じて
Now or never…
問いかけろ
未来は
この手にあるから
(Follow we)
≪Now or Never 歌詞より抜粋≫
----------------
サビの歌詞。「いくつもの」「メモリー」は積み重ねたアトムのストーリーを指します。
「問いかけろ」とあるように、アトムも「問いかけ」ます。人間とロボットの間で「問いかけ」るのがアトムの物語。この歌詞はそんな『鉄腕アトム』の本質をついています。
新たな鉄腕アトムの可能性を見出した
アニメOPではこのサビの一番大事なところでアトムと青騎士が映ります。原作でも重要なキャラ、青騎士。ロボットを率いて人間に対し反乱を起こすキャラです。
人間とロボットの間で揺れるアトム。アトムにとって人間は良い「いくつもの」「メモリー」ですが、反乱を起こす青騎士にとっては人間とは憎悪の「メモリー」。「未来はこの手にある」とは青騎士にとってはロボットだけの国を作る「未来」なのです。
衝突するアトムと青騎士のカットで終わるアニメOP。「青騎士」のエピソードを予感させる緊張感のある終わり方。
そしてこのある種の緊張感はCHEMISTRY とm-floという実力者同士のコラボで生まれたものでもあります。CHEMISTRY 二人の伸びのあるボーカル、m-floのラップと近未来的な音を詰め込んだアレンジが化学反応を起こし「科学の子」の新たなOPを生み出しました。
あまりに有名な初代「鉄腕アトム」のテーマに比べ、この曲は有名ではありません。また、原作から大幅にアレンジが加えられ、原作の持つ良さを損なってしまったこの「ASTRO BOY 鉄腕アトム」のアニメ自体も、決して評価は高くはありません。
しかし、それでもこのOP曲はアトムの新たな可能性を感じさせるものでした。
アトムとCHEMISTRY 、m-floという組み合わせは2003年当時だからこそできた『Now or Never』の関係だからです。
TEXT:改訂木魚 (じゃぶけん東京本部)