若者にも衝撃を与えるかっこよさ
「おっさんなのになんであんなにカッコいいのか。キモチワルイ!」
これは10代ファンの発信したツイートだ。
モテる男性芸能人の代名詞であり続ける福山雅治。『桜坂』をはじめヒット曲を量産し、「ガリレオ」シリーズでは俳優としての才能を見せる。天が二物を与えたアーティストである。
つぶやきに現れる若者の驚き
今年で歌手デビューしてから25周年を迎え、2015年2月には「福山☆冬の大感謝祭 其の十四」を開催した。多くのファンを魅了したのは間違いないのだが、ライヴを観に来てくれた10代のファンから、「あんなおじさん、いるんだって思った」「福山おじさん、細すぎてスタイル良すぎてびっくり」など、冒頭であげたようなアイロニカルなツイートが投稿された。
イケメン福山も今年で46歳。10代のファンに”おじさん”呼ばわりされたのがよほど悔しかったのだろう、8/19には都内で10代限定ライヴを開催して自分よりもふた回り近く歳の離れた観客たちを熱狂させた。
「46歳ですけど、6歳ぐらい若返りました」とコメントするなど、若い観客のエネルギーを受けて自身も若返った心境を吐露する場面も見られたという。
ライヴでは当日発売された新曲『I am a HERO』も披露した。ドラマ「花咲舞が黙ってない」の主題歌であり、2年4ヶ月ぶり、通算31枚目のシングル。25周年記念にふさわしい一曲であるが、歌詞を見てみると、こともあろうか、おじさん感がにじみ出てしまっていた。
I am a HERO
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僕は出来る いやもっと出来る
偉大な人とまでは言わない
「頼れる人」くらいにはなれる
言わせるなよ ここは通過点
聞いてる?もう酔ってんの?
何回めの乾杯だっけな
来たか!無限ループ
10年先の自分をイメージして
虎視眈々と「積んできた」んだ
≪I am a HERO 歌詞より抜粋≫
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(中略)
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どんな仕事だって逃げない
きっと誰か僕を見てるよ
そんなの言うわきゃない
でも言わなきゃわからない
≪I am a HERO 歌詞より抜粋≫
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(中略)
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10年経ってまだこれ言ってるけど
待たせたな本物に変身するんだ
I am a HERO 何笑ってるの?
≪I am a HERO 歌詞より抜粋≫
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酔っ払いが居酒屋で同僚相手に語っているのだろうか。酒が回って寝ている雰囲気さえある同僚を気にすることなく、主人公のぼやきや自問自答が始まる。
明るい未来を信じて、辛いことからも逃げずに主人公は頑張ってきたのだろう。「虎視眈々」なんて四字熟語を使えるあたりからも大人の階段を着実に登っている様を感じる。
ゆとり世代・さとり世代に煙たがられるそうな根性論も愚痴のように飛び出す。上司に日頃からこうやって教え込まれたのかもしれない。酒の勢いに任せて自問自答に拍車をかけている主人公。
リップサービス全開で、去勢を張りすぎたのか、最後には横の人にでも笑われてしまっているシーンが目に浮かんだ。
こんなかっこいいおじさん、見たことない!
飲み屋での一場面を彷彿とさせる歌詞から”おじさんくさい”世界感が読み取れる。福山雅治、46歳。もう年相応の世界観しか表現できないのか・・・いや、そんなことはない!!
この歌詞に演奏がつくと全くもって印象が変わる。力強くアップテンポなロックサウンドと福山のクールでアダルティな歌声がネガティブなイメージを一掃。ロックを”楽しそう”に奏でる曲調からは若々しさすら感じるほどだ。
このギャップを生む力こそが長年の福山の活躍を支えてきたものなのかもしれない。アーティストなのに演技が上手い。かっこいいのに面白い。クールな顔して下ネタ大好き。
世間の常識や期待をポジティブに裏切り続けてきた福山。彼を見て、「おっさんなのになんであんなにカッコいいのか。キモチワルイ!」と10代ファンにつぶやかせてしまうのも納得だ。
若い人に対してだけではないが、周りの評価を気にせずに自分のやりたいことを福山はやればいい。常識や固定観念を破って”ギャップ”を生み続ける力が福山にはある。
これからも”かっこいいおじさん”福山雅治のギャップが見たい。You are HERO!!
TEXT:田中利知