「僕らまだアンダーグラウンド」
ラジオや、街頭ビジョンなどでも「僕らまだアンダーグラウンド」を耳にしたことのある人はいるのではないでしょうか。Eveの楽曲である同曲は2019年2月6日リリースのアルバム『おとぎ』に収録されており、2019年1月24日にMVが公開され、現在の再生回数はなんと、634万回再生を誇っています。
Eveが人気な理由!
そもそもEveとは?という方に…。Eveは、外人ではなく日本人で、“いぶ”と読みます。では、一体どこからやってきたアーティストなのでしょうか。
Eveは、インターネットのいわゆる“歌ってみた”動画を投稿する歌い手シーンで、人気を博してきた歌い手で、メジャーに上り詰めてきたアーティストといえます。
2009年10月1日に投稿した「TRAGIC BOY」の歌ってみたが、彼の初投稿動画。それ以降は同人枠で、ライブや、CD制作を精力的におこない、2016年10月19日には、全国流通3rdアルバム『OFFICIAL NUMBER』、2017年12月13日には、4thアルバム『文化』、2019年2月6日にはアルバム『おとぎ』をリリースしています。
さらに、特筆したいのは、Eveが独自のユニセックスブランド「はらぺこ商店」の店長であることです。2016年に立ち上げた「はらぺこ商店」では、Eveプロデュースの洋服や小物などを購入することができます。ネットでの購入はもちろん、定期的なショップ開催のほかに、いまでは、アニメイトなどの決まった店舗でもグッズを購入できるようになりました。Eveは人一倍、ファッショナブルな視点を持ったアーティストなのです。
次に、Eveが人気な理由について3点に絞って見ていくことにしましょう。
人気な理由 その1:考察しがいのある、ハイクオリティーなMV
歌い手として活動していた頃は、一枚絵、もしくは原曲の映像を使いつつ歌を歌っていた、Eveでしたが、昨今では、オリジナル曲に合わせたオリジナル動画を絵師に頼むなどして、完全オリジナル動画を制作し、公開しています。
Eveの動画の大きな特徴は、ひとりの絵師に頼み、制作をしてもらうというよりかは、たくさんのクリエイターがひとつの作品に関わることで素晴らしい作品を皆で創り上げているところでしょう。
謎を呼ぶ場面の多い映像は、自然とファンの考察意欲が湧いてしまうもので、ネット上にはEveの楽曲の数々を考察した記事が多くあがっているのも事実。
人気な理由 その2:耳に優しい中性的な声
Eveの声は、耳にすっと馴染むように入り込んでくるような、安心感を与える中性的な声です。邦楽ロックで似た歌声のアーティストを例にあげるとすれば、“BUMP OF CHICKEN”や‟RADWIMPS”のボーカルというとイメージがつきやすいでしょう。Eveも彼らの影響を受けたひとりでもあるようです。
ダーク感漂う楽曲と、そうでない楽曲で、Eveの歌声を聴き比べてみてください。Eveが魅せる歌声は、ひとつではないのです。そのギャップも魅力といえますね。
人気な理由 その3:ずば抜けたソングライティング
MV、声以上に、Eveを輝かせているのは、突出した作詞作曲能力です。Eveはもともと、ライブでギターを手に持ち、弾き歌いすることもありました。その延長戦に、洗練された楽曲の数々が生まれてきたといえます。韻を踏んだり、早口だったり、会話するように歌ったり…飽きさせないをモットーに中毒性のある楽曲を作り上げてしまうのがEveです。年々、Eveの作詞作曲能力には磨きがかかってきているといえるでしょう。
Eveの歌詞の魅力
ここではEveの楽曲について解説含めご紹介いたします。「僕らまだアンダーグラウンド」
タイトルにある“アンダーグラウンド”とは、直訳すれば「地下」。公の管理規制を逃れる「違法」の事物を指すことが多い言葉です。映像でも地下へ地下へと潜り込んでいく場面がありますね。つまり、この曲でいえば、親の命令が公の管理規制。潜り込んでいく少年少女は、管理規制を逃れる違法を犯す共犯者なのです。ただ、既成概念がある世の中では、どうしても規制を排除することは、一般的にはいけないことだと、思われがちです。確かに、新しい考え、モノは最初は受け入れられにくいものが多いと思いませんか?例えば、音楽のジャンルも最初から受け入れられたものばかりではないですよね。それでも、いつかは誰かが理解してくれる、少し先の未来に期待しているから少年少女は自分たちが正しいと思うことを実践するのです。
だから「僕ら(少年少女)まだアンダーグラウンド(世間からは違法とみなされる立場)」なのでしょう。
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ダーリン ダーリン 愛しておくれ
夢にみた 日々は僕の証だった
冗談で言ったんじゃないと 皆嗤っていたんだ
こんな街からさようなら
≪僕らまだアンダーグラウンド 歌詞より抜粋≫
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このフレーズの⟨この夢にみた 日々は僕の証だった 冗談で言ったんじゃないと 皆嗤っていたんだ⟩という部分は、既に未来にいて最終的に世間に勝ち誇った少年少女が歌っているともとれそうではないですか?
「ナンセンス文学」
この曲を公開したことで、Eveのダーク色のイメージがはじめて定着したといえるでしょう。とはいっても、⟨真昼のランデブー ビビディバビデブー⟩や、⟨今だけは忘れてラッタッタ(ラッタッタ)⟩のフレーズからは少し巫山戯ながら、Eve自身が楽しんで歌っているように思えますね。ですので、まだ完全にダークではないのです。
ただ、クリエイターのMahによって、描かれたMVは、かなり毒々しいものとなっており、MVを観ることで、曲に対する印象が変わってきます。
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感情的にはなれない 今更臆病になって
研ぎ澄んだ言の刃 大事そう 抱え笑って
ドクドクドク ハイテンション
吸って吸って 吐き出せない
へそまがりなアンタに嫌気がさしていく
≪ナンセンス文学 歌詞より抜粋≫
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⟨へそまがりなアンタにはもう飽き飽きだ⟩とあるように、誰かに対する辟易とした感情を持っていることも窺えますね。
「ドラマツルギー」
この曲は歌ってみたでも、随分と流行りましたね。そして、なによりEveのダーク色を垣間見せることに成功した楽曲とも言えるのではないでしょうか?
劇場を社会に例え、そのなかで生活する人々は皆自分の役を演じていると歌い、本当の自分の存在意義について問いかけているのです。
これはEve自身の葛藤が見えてくるような歌でもあります。
社会における自分を演じるあまりに疲れてしまうことってあるのではないでしょうか。まさに、本当の自分と演じている自分の狭間で葛藤しているような人の心にしっかり届く歌になっています。
Eveのお勧め動画を紹介
Eveの楽曲はどれも魅力的で、正直厳選するのは難しいところでありますが、なかでも個人的にお勧めしたい動画を3つご紹介。ダーク色剥き出しの楽曲ですね。▼アウトサイダー
▼トーキョーゲットー
▼ラストダンス
最後に、MVと歌詞は必須で!
Eveの魅力から「僕らまだアンダーグラウンド」を中心とした楽曲解説までをおこないました。いかがでしたか?なかなかEveの楽曲は考察のしがいのある楽曲が多いので、想像を膨らませて、音楽を楽しむことができるのも魅力のひとつであることは間違いないです。
また、念押しするようですが、「僕らまだアンダーグラウンド」などのMVが用意されているMVでは、MVを観ながら音を聴くと音源と映像の相乗効果でより想像力が高まりますので、ぜひ、EveのMVを、歌詞と併せてチェックしてくださいね!
TEXT 小町碧音