「素敵なもの」を人から人へ
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さっき とても素敵なものを
拾って 僕は喜んでいた
ふと気が付いて横に目をやると
誰かがいるのに気付いた
≪僕が一番欲しかったもの 歌詞より抜粋≫
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この歌は「僕」が「素敵なもの」を見つけるところから始まります。
素敵なものが一体どんなものなのか、目に見えるものなのか、そうでないのかは最後まで分かりません。しかしそれは、「僕」を幸せな気持ちにさせ、周りの人をも惹きつけるものです。
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その人はさっき僕が拾った
素敵なものを今の僕以上に
必要としている人だと
言う事が分かった
惜しいような気もしたけど
僕は それをあげる事にした
≪僕が一番欲しかったもの 歌詞より抜粋≫
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それが何か分からずとも、誰かの心にとってとても大切で、切実に欲しているようです。
奪うわけでもなく、ただ熱心に見つめてしまったのでしょうか。自分にとって大切なものを他人に譲るのは簡単にできることではありません。
二度と手に入らないかもしれないと思うと、それほど欲しくなくても人にあげるのが惜しい気がして、親切にできないこともあるでしょう。しかし、少しの我慢で、相手を幸せにしてあげることができるなんて素敵ですね。
透明感のある声で歌い上げるサビのこの歌詞は、聴いている方も幸せな気持ちにさせてくれます。
幸せのおすそ分け
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その後にも また僕は
とても素敵なものを拾った
ふと気が付いて横に目をやると
また誰かがいるのに気付いた
その人もさっき僕が拾った
素敵なものを今の僕以上に
必要としている人だと
言う事が分かった
惜しいような気もしたけど
また それをあげる事にした
≪僕が一番欲しかったもの 歌詞より抜粋≫
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2番でも、やはり素敵なものを、別の誰かにあげてしまいます。先に見つけたのは自分だからと、いくらでも断ることはできるのにそうしない理由は、とてもシンプルです。
それは、譲り受けた人の笑顔や「ありがとう」という言葉。その笑顔があるから、「譲ってよかった」と思えるのです。
相手を思いやる気持ち
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きっと また この先探していれば
もっと素敵なものが見つかるだろう
その人は何度もありがとうと
嬉しそうに僕に笑ってくれた
≪僕が一番欲しかったもの 歌詞より抜粋≫
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「僕」は、せっかく見つけたものを、もったいないと思いながらも本当に必要としている人にあげてしまいます。自分が手に入れたものを他人にあげるというのは、なかなか難しいものです。
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きっと また この先探していれば
もっと素敵なものが見つかるだろう
なによりも僕を見て嬉しそうに
笑う顔が見れて嬉しかった
≪僕が一番欲しかったもの 歌詞より抜粋≫
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「きっとまたチャンスがある」と言い聞かせても、もしも自分が損をしたら嫌だとか、これ以上よいものはないかもしれないと思ってしまうのも人間です。そんな中で、「次があるさ」と割り切って、目の前の人に親切にできる心が素敵です。
最後に見つけた、「本当に欲しかったもの」とは?
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結局僕は そんな事を何度も繰り返し
最後には何も見つけられないまま
ここまで来た道を振り返ってみたら
僕のあげたものでたくさんの
人が幸せそうに笑っていて
それを見た時の気持ちが僕の
探していたものだとわかった
今までで一番素敵なものを
僕は とうとう拾う事が出来た
≪僕が一番欲しかったもの 歌詞より抜粋≫
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素敵なものを見つけては人に譲り、そんなことを繰り返している内に、時間だけ過ぎてしまったのでしょう。人生の終焉を感じながら、自分がこれまで歩いてきた人生を振り返ってみる。「虚しい人生だったかな?結局、いいことは一つもなかったかな?」
そんなことはありません。自分がこれまで人に譲り続けてきたものは、その人たちの笑顔とともに心に焼き付き、人生を豊かに彩ったはずです。
そして、最後に、本当に欲しかったものは自分の手の中にとっくにあって、それは自分が親切にしてきた人たちの笑顔であったと知るのです。
素敵なものを見つけては人に譲り渡すだけの人生は、損をしていたのではなく、しっかりと自分の人生の糧になっていたのです。
人を幸せにすればするほど、自分の心も満たされていたことを、長い人生の終わりに気付く。それもまた、素敵な人生です。
譲る事なんて、本当はそれほど難しいことではありません。ほんの少し、相手の気持ちや立場になって考えれば、気持ちよくできるはずです。自分本位になりがちなこの時代にこそ聴きたい楽曲だといえるでしょう。
TEXT 岡野ケイ