大人気アニメ「進撃の巨人」のED曲
cinema staffの『great escape』。アニメ「進撃の巨人」後期エンディングテーマです。cinema staffは2003年から活動しているギターロックバンド。2012年にメジャーデビューしました。
アニメ「進撃の巨人」は言わずと知れた大ヒット漫画のアニメ化。よりインパクトの強いオープニングテーマ『紅蓮の弓矢』を作詞作曲したREVOのほうが有名で紅白出場も果たしています。
しかしcinema staffのエンディング曲も「進撃の巨人」の世界をしっかり再現しています。
great escape
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例えば俺が俺じゃないとして、お前はお前だと言いきれるのか?
砂の器を壊して、こぼれた心を拾って集められるか?
≪great escape 歌詞より抜粋≫
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この歌いだしがまず良いですね。
「俺が俺じゃないとして」この歌詞は自分と相手が人間であるか否かを問うています。アニメ本編において、巨人化する人間がいることが分かってきたタイミングでのED曲。そんな人間同士の疑心暗鬼の感情を最初のフレーズで端的に表現しています。
俺が人間じゃない巨人だとしたらお前も人間だと言いきれるのか?いや言いきれまいという意味。
「砂の器」は松本清張の小説のタイトルにもなっています。「砂」は壊れやすいもののたとえ。器は「あの人はリーダーの器ではない」というように、人間を指します。
もろい人間を壊して、その人間の心を拾って集めることはできるか?いやできないと言っています。巨人に殺される人間を指しているんですね。
また、人間同士の信頼を壊して、こぼれて離れてしまった心を集めることができるか?ということも指しています。ここでも人間同士の疑心暗鬼を表現。
壁の外へ行きたいという思いを表現
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誰かの呼ぶ声が耳鳴りに変わった。
時が止まったみたいだ。さあ、目を覚ませ。
≪great escape 歌詞より抜粋≫
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ここは主人公エレンが巨人化することを表現しています。誰かが自分を呼んでいる声が耳鳴りにしか聞こえない。時が止まったように感じ、巨人として目を覚ます。そういう意味が込められています。
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深い闇を俺は抜け出した。疾風みたいに逃げ出した。
生きた屍みたいだった俺達は、壁の外へ。
≪great escape 歌詞より抜粋≫
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サビがこの歌詞。「壁の外へ」という歌詞があります。壁の中で生きた屍のような生活をしていた「俺達」は壁の外へ「抜け出し」「逃げ出し」ていく。そういう意味です。
またここで、直前の「さあ、目を覚ませ。」の歌詞が、壁の外に行きたいという「衝動」も表していたことに気付けます。「壁の外は危険だ」という誰かの声はもう耳鳴りにしか聞こえない。
目を覚まして、壁の外へ向かうという決意。そしてこのサビにつながっていたのです。
主人公の成長を曲の中で描く
また「深い闇」から抜け出すというのは、壁の中からの脱出も表していますが、巨人化したエレンがひたすら暴力衝動で動く「深い闇」から「抜け出し」、人類のために行動するという意味も込められています。
さらに最後にはこの歌詞の後ろに「また会おうぜ、地図にない場所で。」がつきます。壁の外の地図にもなっていない世界で「また会おう」と言う主人公達の約束を表現しています。
そしてこの曲の歌詞の特徴は「、」と「。」がつくこと。本来だと流れを止めそうな「、」と「。」をあえて1フレーズごとに使っています。
これはあえて歌詞表記上では文章にして、一つ一つの物語を思い起こさせる狙い。「、」と「。」で一呼吸入ることで、歌詞から物語を想像する効果を狙っています。歌詞がしっかりとアニメ本編の内容にマッチしているんですね。
同時にこの曲は、2012年にメジャーデビューし2013年にこの曲を発表したこのバンドそのものを表現しています。メジャーデビュー後の世界というそれまでの「地図にない場所」でこのバンドが戦うという意味もあるんですね。
「、」と「。」をうつように一歩一歩前進してきたバンドが「また会おうぜ」と宣言する歌でもあります。
TEXT:改訂木魚 (じゃぶけん東京本部)
岐阜県出身のオルタナティヴ・ロック・バンド。 メンバーは飯田瑞規(vo,g)、辻友貴(g)、三島想平(b)、久野洋平(ds)の4名。 高校時代に辻、飯田、三島によって結成された前身バンドを経て、2003年に結成。 2006年より現編成となり、名古屋のライヴハウスを拠点にポスト・ロック的なアプロ···