「Lily」というタイトルの由来
──『Lily』というタイトルと歌詞は、まるでPONさんを表現しているようですね。
PON:ええ!?そうですか(笑)
──そうですね!真っ直ぐに立ち向かう強い精神力が、歌詞とリンクしていると思います。
PON:コンチクショー魂ってやってきたので、それはあるかもしれないです!でも最初のきっかけさえ見つかってしまえば、『文スト』の事を忘れて自分の事を歌にしているんです。
それは毎回そうなんですけど、『名前を呼ぶよ』のときは主人公の敦が探偵社のみんなに名前を呼んでもらって、“自分はここにいるんや”って思えたみたいに、俺らもライブハウスで生きてきて、そこで「ラックライフ」やったりとか「PON」って名前を呼んでくれる人達に沢山出会ってきて、そういう人たちのお蔭で僕が作られている、守られている、僕が僕である理由だっていうのを重ねていて。そのときは、自分の事だけを想って歌っていたし。そういうのでやっていますね。
──なるほど。
PON:あんまり寄せるとかを考えたことはないですね!
──でも、見事に『文豪ストレイドッグス』の世界にハマっていますよね!
PON:そうなんですよ!それが素晴らしいと思いますよね。この作品と自分に近いものを物凄く、感じるんですよ。『文豪ストレイドッグス』は人間臭い人たちの集まりやから、“一番人間臭い歌を作る方法ってなんだろう?”って考えたときに、浮かぶのってやっぱり自分なんですよね。自分が経験した事を出すことによって、一番近い歌が歌えるんじゃないかと思っています。
──『Lily』の歌詞には「らしさ」というワードが沢山出てくると思うんですが、そのワードを入れられたのも、先程おっしゃられた中也のお話しが大きいんでしょうか?
PON:そうですね。中也のお話しと言うよりも、“PONらしさってなんなんやろう?”って曲作りをしているときに、すごく思うんですよ。
色んな靄がかかって、自分が見えなくなる感覚に追い込まれてしまうときもあるので、そういうときに踏ん張れる歌を作りたかった。
自分らしさってなんなのかわからないけど、前を向くことが自分らしさに繋がっていくことだと発見できましたね。
──「やけに大きく聞こえる雑音に苛立っている 褒めてほしくて認めてほしいの ほんの少しだけ」という歌詞がありますが、ここは芥川が太宰に認めて欲しい気持ちが描かれているように感じました。
PON:それ、歌詞を書き終わってから思いました(笑)
──最初はそういう風な部分を取り入れようとは思っていなかったんでしょうか?
PON:そうですね。俺はもう自分の歌やと思って書いているし、どんな風に聴こえるかなって客観視したのもやっぱり中也の事を思って書いているから、中也の歌として聴いていたんです。だけど『Lily』のアニメ盤のジャケットが公開されたじゃないですか?それが芥川だったので、“これもしや芥川の歌なんちゃう~!?ほんまそれ!”って思って感動していました(笑)
──芥川と見せかけて、中也なんですもんね。中也ファンは喜ぶと思います!
PON:“中也やで~”って言いたいです(笑)みんな芥川だと思っているだろうし。
──これまで『文豪ストレイドッグス』のEDになった楽曲たちを通してみると、全て歌詞に「未来」が入っているんですね。この単語を共有して入れている理由などはありますか?
PON:めっちゃ未来って言ってるわ~(笑)実は全然ないんです!ただ、「未来」って言葉は好きなんですよね。前を向いた先には未来ってあるじゃないですか?結局『文豪ストレイドッグス』とかで歌っていることって、人の弱さやったりとか、挫けたときに何を想うか?とか、ちょっと下を向いたときの事が描かれているような気がしていて。
ダメなときに何かに気付いてまた歩き出すときは、必ず未来を見ていたい。『文豪ストレイドッグス』に関わらない曲でも、ラックライフの曲には「未来」という単語はめちゃくちゃ出てきていますね。
──そうなんですね。
PON:歌詞を書いたあとに、ちゃんと自分が前を向けるようになりたいんですよ。だからバッドエンドの曲はないし、最終的に前を向いて未来に踏み出そうというメッセージをどの曲でも歌っています。
▼ラックライフ「Lily」(『文豪ストレイドッグス』第3シーズンED主題歌)
PONはポジティブ?ネガティブ?
──PONさん自身は、ポジティブですか?それともネガティブですか?PON:ネガティブ発信、ポジティブ思考ですね(笑)最初はネガティブから始まって曲が生まれたりするけど、だいたいAメロで躓いているんですよ。どの曲のAメロも何か探しているんです(笑)見失ってたりわからなくなっていたりする。
でも最終的には、前を向いていたいっていうか、前を向くために自分が曲を書いていたりしますし。心の引っかかりが生まれたときは、やっぱり落ち込んでいるときなんですけど、そういうときに大切にしたいものが見えてきて、それを歌にするっていうサイクルで曲が生まれています。
歌い終わったときに俺は胸を張れるような気持ちになっていたいし、それと同時に聴いてくれている人にも、ライブ見て帰るときには元気になってほしいし。暗くする意味がわからんっていう感じです。
一緒に落ちる曲があっても良いと思うしそういう曲を聴いたりもするけど、自分が誰かに音楽で左右できるものがあるとすれば、最終的にはポジティブになってほしい。力が湧くようなバンドでありたいと思っています。
──歌詞を書く際にスランプに陥った場合、どうやって気分転換をされてますか?
PON:一旦忘れてめっちゃ遊んでいます!友達に会いにいくことが一番多いですね。メロディーも歌詞も何も生まれてこーへんときがあるんですけど、そういうときはバンドとは全然違う友達と、ほんましょーもないことをして無駄に夜更かしをして、コンビニの前でオールとかして(笑)
──やることが若いですね(笑)
PON:(笑) そんぐらいの振り切り方でクタクタになるまで、しょーもないことを誰かと一緒にすることが多いです。
──そういった何気ないことをした経験が、歌詞に繋がることは多いんですね。
PON:そうですね。結局誰かがいて何かが生まれていると思うし、結局一人でどんだけ考えても何も見つからないし。嬉しいも楽しいも、悲しいも寂しいも誰かがいたからこそ貰える感情。それを貰いにいくために友達に会いに行ったりとかします。人と喋る行為が大事やなって思います。
──サウンド面についてお聞きしますが、メロディーが先ですか?
PON:全曲メロディーが先ですね。
──こういった心が安らぐメロディーはどういう時に思い付くんでしょうか。
PON:安らいでいるんですか(笑)どうやって思いついているんやろ~?結構色んな人に聞かれるんですけど、ほんまわかんないんですよね。でもメロディー作りに関しては、半分遊びの延長があると思います。曲を作るのって誰でもできるんですよ。
──いや、出来ないですよ(笑)
PON:それが間違っているんですよ(笑)誰でも出来ます。曲作りを始めたのが、遊びだったんですよ。友達とアコギ持って駅で楽譜みながらカバーしたりしていて。その内、“目に見える文字を替え歌にしていこう!”っていうゲームが始まって(笑)
──それ面白いゲームじゃないですか!(笑)
PON:駅の注意書きとか、缶コーヒーの裏に書いてある文字とか。そういう替え歌をやっていたんですけど、その延長でどんどん“缶コーヒーの曲を作ろうか!”ってなっていて(笑)その時の感覚が曲作りに近くて。
適当に歌ったり、ギター弾いたり、チャリンコ漕いで歌っているときとかに思い付くことが多いですね。中でも移動中に思い付く事が多いかもしれないです。
──『文豪ストレイドッグス』のEDになったメロディーは、表現すると月のようなイメージがあります。
PON:確かに。それは多分作品のテーマによって、メロディーが生まれているんだと思います。月っぽいメロディーとか、そういう風に自分の中でお題を掲げて鼻歌を歌っているんだと思います。