連続リリース2弾『Zero Gravity』
──avexに移籍されて4月から連続リリースが続いています。前回の取材に新作の『Zero Gravity』は交互に出てくる英語詞と日本語詞、どちらか一方だけを読んでも世界観が伝わるようにとお話しされていました。YU(ボーカル):僕はいつもタイトルから考えるんですけど、この曲はタイトルが最後にできた初めての曲でした。
今回はなかなか書けなかったんです。歌詞が…。で、どうしよう、どうしようってやっていて、歌詞が書けないことを歌にしようというのが、初めのきっかけでした。
▷「Zero Gravity」を聴く
──歌詞が書けないことを書いてみよう。
YU:そうですね。サウンドの感じから、ラブソングにはしたいと思っていて。大層なことじゃなくて、いまの等身大の思いを歌いたいなって。
で、そのものどかしさを言葉にしたいと思ったんですけど、いい言葉が思いつかなくて…。その過程を歌にした感じですね。
──気持ちをうまく言葉にできないのと、歌詞がなかなかまとまらない葛藤を恋愛になぞらえた?
YU:そうですね。その2つが組み合わさった。自分的には、形がまとまってきたときにタイトルになった『Zero Gravity』って無重力っていう意味なんですけど、その言葉が出てきたとき、表現したかったもどかしさと、この浮遊感があるサウンドを表現できたかなと思って、気に入っています。いいものができたなと。
──曲はどんなイメージで制作を進めたのでしょうか。
YU:この曲は、最初のきっかけはSamantha Thavasaさんが25周年を迎えるにあたってONKYOさんとコラボレーションしたワイヤレスホンを僕らが監修させてもらって。
こういうイヤホンで聴きたくなるサウンドってどういうものかなっていうことを、みんなで話し合って。手にとってくれる人に、生のバンドサウンドの気持ちよさを味わってもらいたいなってイメージができてきて、方向性を決めていきました。
KENJI(ベース):キラキラッとし過ぎないことをイメージしました。歌詞も今の僕らを投影したような内容になっていると思うので、曲はできるだけシンプルにって。
経験してきた大人だからこそできること。全てそぎ落として、そのままでいい状態って言うのをすごく意識しました。
──若いときはいろんなことをやりがちですが、そこを通り越していまの自分たちをありのまま表現した。味付けなら塩だけみたいな?
KENJI:そう、そう。
YU:料理ならそうですね。
KENJI:それでいかにおいしくできるかみたいな。
YU: 移籍第一弾の『Do Ya?』は、やったことないことにトライしてみようとスパイス的な感じで生まれて、僕らにとっては変化球だったんですけど。
第二弾の今回はアイドラの直球ストレートなサウンドと、その世界観を蒸留酒的に、その上澄みを楽しんでもらいたい。
▲『Do Ya?』MV / I Don't Like Mondays.
──それぞれ新曲で気に入っているフレーズや歌詞を教えてください。
CHOJI(ギター):割とずっと同じようなギターのループが続くんですけど、あの後ろに実はバッキングがいたりしてセッションっぽい感じなんです。
録音もドラムとベースで「せーの」って同時にやったりしたので。あんまり決めずに、大ぶりっていうんですか。曲の最後にギターソロも入ったりして、結構気持ちよく弾くことができましたね。
──最後のギターは、言葉にできなかった切ない思いに寄り添うような優しい音色ですよね。
CHOJI:まさにそんな感じで、やれたのが良かったですね。
YU:渋いギターが入っているよね。
──イメージした情景ってありましたか?
CHOJI:割とそよ風みたいな。
YU:そよ風。(笑)。
KENJI:知らなかった。そよ風感は確かにあるね。気付きだな…(笑)。
CHOJI:歌詞も結構好きで、主人公とあなたっていう人の間に、言葉がないものが愛っていうか。つまり、地球上にないものが『Zero Gravity』なのかなって。最後にマスタリングしているときに歌詞を読んでいて、「愛ってそういうものか」ってしみじみしたっていうか。いい歌詞書いてるんだなって思いました。
YU:目に見えない。物質的なものではないっていう解釈で書いているんですけど。
CHOJI:それを『Zero Gravity』っていうタイトルにはめたのは、すごいなぁって。
──SHUKIさんは、前回は曲作りがとても大変だったと話されていましたが、今回はいかがでしたか?
SHUKI(ドラム):シンプルな曲は、ドラムでガラッと印象が変わっちゃうんで、打ち込みにするのか、生にするのかから始まり、どこまで派手にできるのか考えた結果。結構アナログっぽいサウンドに寄せて、最後のミックスのときにもそういう加工をかけたりして。音的にはかなり満足しています。
今回はドラムだけじゃなくて、全体に70’ソウルを参考にしていて、それを今っぽくするにはどうしたらいいか試行錯誤して。
これまではレコーディングした後、ミックスはエンジニアさんにお任せしていたんですけど、今回はレコーディングした音源を全部一回もらって、自分でミックスをしてみて方向性をある程度探してから、戻すって言う作業もしたので。それもうまくいって良かったなって。
──追求されていく中で、難しかったところは?
SHUKI:音作りですかね。あとでKEIJIも言うと思いますけど、レコーディングの前日にCHOJI以外の3人で、ジョン・メイヤーのライブを観に行っていて、それが衝撃的過ぎて。
特にベースとドラムが。なので、そのライブの翌日にレコーデイングをしたのも良かったと思います。
前日に感じたグルーブを思い出しながら、できる限り混ぜ込みたいとそういう意識でのぞんだので。タイミングもすごく良かった。
──歌詞は、いかがですか。
SHUKI:CHOJIも言いましたけど、タイトルに恋愛観を落とし込んで、ここまでハマった曲って今までなかったかなって。
──愛ってどんなものなんでしょうね。
SHUKI:愛とは…。
KENJI:オレも次にそれを聞かれると思うと、怖いです。(笑)
──歌詞に「人はそれをきっと 愛と呼んでいるのだろう」とあって、CHOJIさんから一つ、愛に関しての解釈が出たので。SHUKIさんはどうかなと思って。
SHUKI:僕の答えは分かんないですね。その時々で変わるから。ほんろうしているつもりで、ほんろうされている場合もあるから。状況によっては。
──KENJIさんは新曲の制作で印象的だったことは。
KENJI:音作り的には70’sソウルを参考した部分はあるのですが、そのままだとちょっとオールドに偏ってしまうので、一回シンセ(シンセサイザー)で、鍵盤で弾いてそっちにするかすごい迷ったんです。
でも僕自身、生でやりたいっていうのがどうしてもあったので、その70年代のソウルを消化してかっこよくやっているアーティストさんもいらっしゃるので、そのシンセベースのうなる雰囲気とか、そういうのを生で表現できたらと思って、いろいろ試しました。
前の日にジョン・メイヤーのライブを聴いたことも刺激になったし。普通に弾くだけじゃなくて、うねりを出すためにグリス(グリッサンドのこと、スライドする奏法)を結構入れたり。あとは音価(最初の音符から次の音符までの間隔のこと)って言って、ひとつの音をどれだけ広げて弾くかということも、すごく意識して。
セクションごとに同じグルーブなのが普通なんですけど、フレーズによって細かく研究して、どの長さが一番気持ちよく聴こえるか、すごくこだわりました。シンプルなことをやっているんですけど、その分込めた熱量がすごいです。
──そこまで火が付いたのは、なぜですか。
KENJI:シンプルなものだからですかね。こういう曲をやれてこそバンドだって思うんですよね。僕ら年齢を重ねて、弾き込んでいくごとに、味わいが変わってくる曲だとも思うし。そこもこの先、追求して行くことができる曲にしたかったんです。それができたのはすごくうれしく思いました。
──歌詞については?
KENJI:歌詞はサビの「フレーズ」っていうワードが、僕は元々すごい気持ちいいから良いなって思っていたんですけど、1回録るってなったときに歌詞が変わっていたんです。「せりふ」とか「言葉」とか…。だから「フレーズ」っていう言葉が残ったことが、良かったですし、やっぱりこれが一番気持ちいい。(ギターと同じく)“そよ風”のような。(笑)
▲『Zero Gravity』ジャケット写真
──YUさんは、レコーディングで思い出深かったことなどありましたか。
YU:いつも楽器録りをしてから、別日で歌録りをすることが多いんですけど、今回はスケジュールの関係で、1日で楽器も歌も録ろうということになったので、昼ぐらいからみんなでスタジオに入って作業をして。僕はみんなが楽器録りをしている間に、歌詞を直していて。
楽器録りが終わったのが夜だったんです。で、夜から歌を録り始めたのは今回が初めてだったんですけど、すごい喉の鳴りが良くて、気持ちよく歌えたんです。コーラスは別日に録ったんですけど、コーラスを入れない状態でも、ず──っと聴いていたくなるような。今までで一番良く録れたなって感じています。これからも夜に録った方が良いのかも。
──3人は違いを感じましたか?
KENJI:かなり良かったと思う。2Aの感じとかすごく好き。
YU:歌詞は全体的にキザなことを言っていると思うんですけど、自分的に気に入っている部分は「Maybe I’m drunk tonight」っていう部分なんですよ。酔っ払っているんだって。そのキザなせりふも、酔っ払っているから言えるんだよって。それを自分的にできたって。この酔っているかも実は、確定していないんですけどね。(笑)
──「Maybe~」の部分に男性の切なさを感じました。
YU:そうですね。男心をうまく言えたな、自分っぽさを書くことができたと思います。サウンドもそうですが、等身大な僕たちを表現できた。歌詞をシンプルにできたので、聴いた人それぞれが自分に当てはめられるようになっているかなと思うので、気持ちを重ねて聴いて欲しいです。
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