accessの魅力
1995年からの沈黙を経て2001年に活動の再開を発表した、男性2人組の音楽ユニットであるaccess。
子供だった私が大人になってからの活動再開の知らせは歓喜でしかなかったし、沈黙の中で子供から大人へと成長した私のaccessへの想いは、特別なものだった。
ライブの度にその特別な想いが溢れすぎて、涙なしではライブを観られなかったのも懐かしい。
気が付けばaccessは25周年アニバーサリーを超えて、今年は活動27年目に突入している。
復活からの活動期間が約6年の沈黙期間を余裕で超えているのだ。
活動再開してからの二人は、沈黙前の統一感のある姿とは少し違っているように感じる。
以前は衣装も統一感を強調していたし、彼らの魅力の1つでもある“かっこよさ"を前面に出していたように思う。
しかし現在は“二人の良いところ"=“二人の違い"が自然に押し出されていて、以前の“かっこよさ"とは別の魅力で私たちを惹きつけている様に感じる。
その魅力と言うのは“違うもの同士が共鳴し合う事で1つの素晴らしさが生まれる事"だ。
シンクビート(accessの楽曲の総称)はキーボードの浅倉大介が作り出すシンセサイザーを駆使したエレクトロニカルな音。
その音の渦に埋もれない機械ではない生身の人間である、貴水博之の美しいハイトーンボイスが見事に“シンクロナイズ"している。
この事だけでaccessの魅力は素晴らしいと言えるのだが、彼らの魅力は楽曲を産むその二人自身にも十分にある。
キーボード浅倉大介は、シンセサイザーの音楽的才能はさることながらプレッシャーに強く、考え方も一貫していて機械に強いのも頷ける。
太陽と月で言うところの月の様な存在だと思う。
反対にボーカルの貴水博之は、“THE生身!THE SUN!!"と言う感じである。
自身の服装や髪型は時期によってまるで違い“楽しかったら、やる!やりたくなったら、やる!"と言う感じだ。
こうして見ると、この二人が何故あんなにもシンクロナイズする音楽を生み出せるのだろうか。
それは“二人の心"が同じだからだ。
「Knock beautiful smile」に抱く不思議な“違和感"
accessの“二人の心"とは何か、シンクビートを通して感じさせてくれる楽曲がある。
彼らの28thシングルで8thアルバムに収録されている『Knock beautiful smile』だ。
ざっと読む歌詞は、笑顔が人に与える強さを歌っている。
笑顔は希望を生み、そして夢も叶えるほどの力を持っている、と言うようなものだ。大
雑把に解釈すると、とてもポジティブな歌である。
しかし合わさる音は、どこか静かでしっとりと重さを感じる。
歌詞に相反して音がそう聴こえる事に、決して不快ではない不思議な違和感を抱く。
この『Knock beautiful smile』に抱く“違和感"にこそ、二人の相反する個性を超えて見事にシンクロナイズした美しい心を見出す事が出来るのだ。
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ビルの谷間 鳴り響くRhythm 踊る夢と現実の狭間
たとえ遠い 明日の果てさえも 追い掛けて
Knock beautiful smile
何処へ行くの 沈みゆく夕陽
紅く鈍く揺れて 燃えながら
壁にもたれ 見上げるこの星 閉じた瞼の奥に輝く
≪Knock beautiful smile 歌詞より抜粋≫
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理想は誰にでもあるものだ。
その理想は夢となり、目指す目標となる。
叶えられたら、それはそれは幸せなのだから。
しかし、「夢」のすぐ背中には「現実」がある。夢が叶う理想郷は「遠い明日の果て」にあるのかもしれないし、ないのかもしれない。
その答えは、夢を叶えるその時まで誰にもわからないから人は夢を「追い掛ける」。
けれど、終わりが見えない事に人はどうしても不安を覚える。
「沈みゆく夕陽」は毎日「何処へ行くの」かわからない。
それはまるで、夢のゴールがどこにあるのか解らないのと同じだ。
そして不安は夕陽が一番深く紅い色を見せる時と同じ様に「紅く鈍く揺れて」ゆっくりゆっくりと、夢への希望を燃やし尽くしていく。
そして、真っ暗な心だけが残ったその時。
その時こそ、今まで見えなかった真の強さが「輝く」のだ。
星が辺りに余計な光がない時ほど、その本当の輝きを見せるのと同じ様に。
人を魅了する笑顔は心のヒカリで出来ている。
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Knock beautiful smile 呼び込めLove & Peace
It's a beautiful life 届けてMore than words
Knock beautiful smile いつか笑顔が
It's a beautiful life 繋ぐyoヒカリ
≪Knock beautiful smile 歌詞より抜粋≫
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星が暗ければ暗い程、その本当の美しさを見せる様に。
人も自分の中に輝く真の強さに気が付いた時、自信に満ち溢れた表情と行動が現れてくる。
本当の輝きを纏った人が見せるその笑顔以上に美しいものはない。
そして、強さと輝きで満ちた笑顔は人を魅了するのだ。
そんな「beautiful smile」は、そこに輝いているだけで人の心に愛が生まれ平穏を生む。
日々の暮らしの中で交わされる言葉よりも大切なのは“心"だ。それは目に見えない「ヒカリ」、希望だ。
人と人の心が希望で繋がっていく事は、明日への期待となって生きる力へと変わっていく。
「Knock beautiful smile」に込められた二人の心とは
冒頭でaccessの二人は月と太陽の様だと述べた。
その個性が、この『Knock beautiful smile』には見事に表れている。
月=浅倉大介が生み出した重い、どちらかというとポップではないサウンド。
太陽=貴水博之のポジティブな歌詞だ。
サウンドと歌詞を分けて考えた時、ミスマッチとまでは言わないが、どこか違和感を抱く。
しかし、『Knock beautiful smile』は最高のシンクビートとして体感する事が出来る。
『Knock beautiful smile』には、“何にも負けない笑顔はたくさんの経験から生まれる。
だから、悲しい事や苦しい事があっても諦めないで自分の中の星を見つけてあげてほしい。
"そんな二人のシンクロナイズした心が、サウンドに歌詞に目一杯込められているのだ。
accessが最高すぎて夢を見る
余談になるが、ライブで聴く『Knock beautiful smile』は異彩を放っている。
曲が始まると温度が1、2℃下がる様な気がする。それまでに熱くなった身体が急に心地いい体温になる。
熱過ぎでも冷め過ぎてもいない、まさに適温だ。
そんな中で聴く『Knock beautiful smile』は、とても視界が広く全体がよく見えるのだ。
たくさん挙げられた腕にはルミカが、色とりどりに光っている。
たくさんの色と、気持ちよさそうに揺れるその光景は、accessがシンクビートに乗せた心が伝わってそうさせている。
そして、全体を見ている私自身や誰かの目には、accessの心が景色となって見えているのだ。
それはまさに「Knock beautiful smileいつか笑顔が」「It's a beautiful life繋ぐyoヒカリ」この歌詞そのものだと思う。
個性が違うのは当たり前だ。しかし、目指すものや心根が共鳴できたら必ずヒカリは繋がっていく。
「It's a beautiful life 世界yo踊れ」accessで“世界が笑顔で踊る"その瞬間も夢じゃないかもしれない。
TEXT 後藤かなこ