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時の無常さと儚さを描く、フジファブリック「花」の歌詞の意味とは?

フジファブリックの1stアルバムに収録されている「花」では、刻々と進む時間の流れの無常さと、それによって失っていくモノの儚さを、これから開花をしようとしているつぼみの花を通して詩的に描かれている。今回はその歌詞を読み解いていく。
TOP画像引用元 (Amazon)

花開くミライ

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どうしたものか 部屋の窓ごしに
つぼみ開こうか迷う花 見ていた

かばんの中は無限に広がって
何処にでも行ける そんな気がしていた
≪花 歌詞より抜粋≫
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例えば誰かに恋をした日。
例えば将来の夢を見つけた日。
人生の中で、そういった目標を見つけた瞬間は、誰しも必ず存在する。

そしてその瞬間、現在よりも未来にその目標が成就した自分の姿を想像するのだ。

未来の想像は全能感を与え、何処にでも行け、何者にもなれると思える希望を湧かせてくれる。

人が持てる希望の数に制限はない。

思い描けば描くほど、あらゆる未来への可能性が開かれる。

“無限のキャパシティを持つ自分というかばんに、思いつく限りの希望を詰め込めば、これまで見たこともない場所に辿り着けるはずだ"

そんな希望に満ち溢れ、どんな不可能なこともなく、望む姿に大成していけるはずと進んでいた自分の姿を、これから咲こうとしている花に重ね合わせて、ここでは歌われている。

しかし、"そんな気がしていた"という一節によって、その全能感は過去のものであることがわかる。

花散りゆくイマ

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花のように儚くて色褪せてゆく
君を初めて見た日のことも
≪花 歌詞より抜粋≫
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美しく咲き誇った花が、永遠にその姿を維持することはない。

やがて、一枚一枚と花びらが落ち、枯れていく。

それと同じように、かつて持っていた愛も夢も希望も、いずれは何処かへ消えていってしまう。

夢や愛が成就したとしても、変わりはない。

時が経てば、やがて同じ姿を保つことはできなくなり、色褪せ枯れていってしまう。

理想とした未来の姿は、その理想に到達しようがしまいが、いつかの瞬間をピークに、刻々と流れていく時間によって過去へと流されてしまうのだ。


無常に流れる時間

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月と入れ替わり 沈みゆく夕日に
遠吠えの犬の その意味は無かった

花のように儚くて色褪せてゆく
君の笑顔を見た日のことも
≪花 歌詞より抜粋≫
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太陽が昇り一日が始まれば、やがて沈み、月の輝く夜が訪れて一日が終わる。

世界は当たり前に淡々と、日々それを繰り返していく。

流れ行く時間を誰も止めることはできない。

例えやり直したい瞬間や、どうしようもない後悔が訪れても、決して揺らぐことなく進んでいく。

そしてその一連の流れは、沈む夕日に吠えた犬の行動と同じく意味の持たない自然の摂理なのである。

その自然の摂理は、愛してた人の思い出も、かつての希望も、美しかった花びらも等しく飲み込んでいく。

無常にも儚く消えていくあらゆるモノを、人は見送ることしかできない。

だが、その時に、わずかでも何かを得られるモノもあるはずだ。

この曲は、ただ無常に流れる時の中で、あらゆるものを失っていく儚さを、敢えて綴ることによって、何か一つでも得られるものを見つけようとする為に作られたものなのだと考えられる。

もし、この曲を聴いて、言葉にならない感情がひとつでも湧き上がるとしたら、失い続ける時間の流れにひとつ意味を与えることができるのかもしれない。


TEXT 京極亮友

2000年、志村正彦を中心に結成。2009年、志村が急逝し、2011年夏より山内総一郎(Vo/Gt.)、金澤ダイスケ(Key)、加藤慎一(Ba)の新体制で本格始動。 叙情性と普遍性と変態性が見事に一体化した、シーン屈指の個性派ロックバンド。 「銀河」、「茜色の夕日」、「若者のすべて」などの代表曲···

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