主題歌と、劇中の音楽も担当したサカナクション
サカナクションの『新宝島』は、映画「バクマン。」主題歌。
『新宝島』は、手塚治虫の初期の代表作のタイトル。漫画のコマ割りに革命を起こしたと言われる漫画作品です。この『新宝島』のタイトルは、手塚治虫の名作と、自分達が新しい宝島に向かう意味両方をかけているんですね。
映画「バクマン。」は、週刊少年ジャンプ誌上に連載されていた漫画の実写化。2人の高校生がジャンプの漫画家になる為に共同で漫画を作る物語です。
サカナクションは、この映画の主題歌である『新宝島』を提供しただけでなく、劇中の音楽も担当しています。映画を観ると、サカナクションらしいインストが全編にわたって流れていることが分かります。サカナクションの映画と言っても過言でないんですね。
そして、エンディングの最高にいいタイミングで流れてくるのが、この主題歌。
新宝島
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次と その次と その次と線を引き続けた
次の目的地を描くんだ 宝島
≪新宝島 歌詞より抜粋≫
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次と その次と その次と線を引き続けた
次の目的地を描くんだ 宝島
次も その次も その次もまだ目的地じゃない
夢の景色を探すんだ宝島
≪新宝島 歌詞より抜粋≫
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漫画家がペンで線を引いて画を描いていく様子を歌っています。この「線を引き続けた」というアクションが映画においても重要。「線を引く行為」が映画におけるアクションになっているからです。
そしてこれは、サカナクションというバンドが新たなる宝島=目標に向けて線を引いてきた=実績を積んできたことの表れでもあります。次なる目標に向けて音楽を作ってきたんですね。
そして二回目に同じフレーズを繰り返す時は「まだ目的地じゃない」と、より強い気持ちになっていることが分かります。
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このまま君を連れて行くと
丁寧に描くと
揺れたり震えたりした線で
丁寧に描く
と決めていたよ
≪新宝島 歌詞より抜粋≫
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「君を連れて行く」とは、映画内で作画担当のサイコーと、ストーリー担当のシュージンが共に連載まで「君=お互いを連れて行く」という意味。同時に、サイコーの憧れのヒロイン小豆を「連れ行く」の意味もあります。
この映画のヒロインは声優を目指していて、自分達の漫画がアニメ化したらアニメの声優をやってくもらう、という約束をしています。その夢の舞台に「連れて行くよ」の意味ですね。
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このまま君を連れて行くと
丁寧に歌うと
揺れたり震えたりしたって
丁寧に歌う
と決めてたけど
≪新宝島 歌詞より抜粋≫
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この曲がすごいのは同じような歌詞なのにも関わらず、ちょっとした言葉の違いで意味に変化をつけていること。ここでは「歌う」とすることでサカナクションのバンド自体の気持ちを歌詞にしています。ここでの「君」はバンドのメンバーであり、ファンのこと。
しかし「決めてたけど」という歌詞から、「丁寧に歌う」と決めていたにも関わらずそうは出来ていないという現実が想像できます。
より固く、強くなる2人の絆
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このまま君を連れて行くよ
丁寧に描くよ
揺れたり震えたりしたって
丁寧に歌うよ
≪新宝島 歌詞より抜粋≫
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さらに続くここでは「君を」だったのが「君と」になっています。個人視点だった映画主人公二人の絆が、より強固になったことが分かります。そしてサカナクションも改めて「丁寧に歌うよ」と宣言。
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それでも君を連れて行くよ
揺れたり震えたりした線で
描くよ
君の歌を
≪新宝島 歌詞より抜粋≫
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最後の繰り返し。「それでも」がつくことで、「それでも、どんな困難があっても」という意味が込められていることが分かります。そして「揺れたり震えたりした線」で「描く」のは「君の歌」。
ここで、これまで漫画の枠線の意味だった「線」が、五線譜の「線」の意味も帯びたのです。曲の最後で、映画の主人公達とサカナクションが同化。「君の歌」とは、この映画主題歌そのものでもあるし、メンバーと共に作る歌でもあるし、ファンの為の歌でもあります。
この曲は映画へのリスペクトと、サカナクションというバンドの葛藤と宣言が込められているんですね。
●新宝島 / MV
TEXT:改訂木魚 (じゃぶけん東京本部)