2018年から始まっていたソロとしての活動
宮本浩次のソロとしての活動は、正確には2018年の10月から始まっていました。しかし2018年にリリースした楽曲は、2曲ともコラボ曲となっています。
最初のリリースは『獣ゆく細道』で椎名林檎とのコラボ、そして次のリリースは『明日以外すべて燃やせ feat.宮本浩次』で東京スカパラダイスオーケストラとのコラボ曲です。
なので細かいことを申しますと、本当の意味でのソロ活動は2019年に入ってからということになります。
今回はそんなコラボ曲も含め、エレカシを離れ"宮本浩次"という一人の男としての活動にスポットを当ててみました。
宮本浩次の印象は、ズバリ破天荒!その風貌といい、パフォーマンスといい…他の男性ヴォーカリストとはちょっと一風変わった雰囲気を醸し出しています。
ボサボサの髪を両手で抑え、目をむき出し、全身で歌うそのスタイルは一度見たらしばらく頭から離れません。
そして、歌声も独特。
ハスキーなようで伸びが良く、がなるような唸るような声も全然暑苦しくなく、むしろ心地よい。
少し鼻にかかる声のせいで、繊細な印象さえ受けるんです。
その繊細さは、彼が作る楽曲の中でも強く感じることができます。
獣ゆく細道
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無けなしの命がひとつ だうせなら使ひ果たさうぜ
かなしみが覆ひ被さらうと抱きかゝへて行くまでさ
借りものゝ命がひとつ 厚かましく使ひ込むで返せ
さあ貪れ笑ひ飛ばすのさ誰も通れぬ程狭き道をゆけ
≪獣ゆく細道 歌詞より抜粋≫
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椎名林檎とのコラボ曲。
一番は主に宮本浩次が歌うパート、二番は主に椎名林檎が歌うパートになっています。
そしてそれぞれのパートで宮本は男性心理を、林檎は女性心理を吐き出すように歌うのです。
一番の男性心理では、ぬくぬく生きる現状の自分を"大丈夫か、オレ?"と自問自答している様子です。
今問題がないなら、あえてもがくことなんてしない…そんなことより俺はインスピレーションが大事!
そこで女性からの合いの手「考えと行動が食い違ってない?」
二番の女性心理では、初めてのことに尻込みしそうな弱い女性が見え隠れしています。
"わかんなーい!"なんて言ってれば、許してもらえたりしないかな…これでも気は使ってるんですけど。
そこで男性からの合いの手「またまた~!気使ってるフリでしょ?」
やればできると高を括る男性と、一生懸命やってます感の女性のかけ合いでこの歌は出来ているようです。
男も女も「本性は獣」で「正体は獣」なんですね。
この楽曲は椎名林檎が新しくリリースしたオリジナルアルバム『三毒史』にも収録されています。
明日以外すべて燃やせ feat.宮本浩次
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明日のこと考え過ぎて
もう今日の 勇気とかないのか?
明日以外すべて燃やせ!
燃やした後にオマエだけ残る
≪明日以外すべて燃やせ feat.宮本浩次 歌詞より抜粋≫
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東京スカパラダイスオーケストラとのコラボ曲です。
作詞はスカパラの谷中敦、作曲は同じくスカパラの沖祐市の楽曲となります。
この曲を聴いて一番最初に感じたのは、宮本浩次の"声"を軸に置き、とても計算されているということです。
もちろんスカパラの演奏の良いところも織り込まれていますが、聴いてこれほどしっくりくるということは、やはり宮本浩次のヴォーカルを引き立てるアレンジを徹底したのではないでしょうか。
まるで、元々のスカパラのメインヴォーカルだったかのような錯覚に陥ってしまうほどです。
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夢も愛も絶望も呑み込んでいく運命の炎
それがオマエという時限装置なんだろ?
他の誰なんだ?
まだ何も見てないさ
きっと楽しいこともある
そんなまますべて決めて
後悔しないって言えるか?どうだ?
≪明日以外すべて燃やせ feat.宮本浩次 歌詞より抜粋≫
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歌詞の世界観は、男から男への応援歌のような気がします。
まだまだ夢の途中、余計なことなどに気を取られぬよう、明日以外は燃やしてしまえと鼓舞します。
このコラボは、谷中敦から宮本浩次へのラブコールによって実現したとかしないとか…。
その情熱は動画をチェックしていただければよく理解できると思うので、ぜひ一聴ください。
冬の花
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いずれ花と散る わたしの生命
帰らぬ時 指おり数えても
涙と笑い 過去と未来
引き裂かれしわたしは 冬の花
≪冬の花 歌詞より抜粋≫
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この楽曲は、2019年2月にリリースされた宮本浩次初のソロシングルです。
フジテレビ系ドラマ「後妻業」の主題歌になりました。
この楽曲は宮本浩次の書き下ろしで、スタッフと綿密な打ち合わせを重ね、ドラマに寄り添った世界観となっています。
荒々しい宮本浩次のイメージとは違い、女性の細かい心理描写も鋭く捉えている楽曲です。
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悲しくって泣いてるわけじゃあない
生きてるから涙が出るの
こごえる季節に鮮やかに咲くよ
ああ わたしが 負けるわけがない
≪冬の花 歌詞より抜粋≫
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とても強い意志を持った女性の歌です。
壮絶な人生が見て取れます。
凍える寒い冬に花が咲くことは滅多にありませんが、それでも咲かせるのが自分なんだと言い放っています。
歌詞を読み解く限り、強いけれど弱い…そして美しい女性が浮かびます。
涙も時には見せるがそれも自分を演出する小道具の一つ。
"顔で笑って心で泣いて"という器用な面も持ちあわせている女性のようです。
解き放て、我らが新時代
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しばられるな! 解き放て、理想像
胸の奥の宝物 この世で一番大切なモノ
お前の笑顔とオレの魂
≪解き放て、我らが新時代 歌詞より抜粋≫
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『解き放て、我らが新時代』という題名通り、この楽曲はいい意味でこれまでの宮本浩次らしくない雰囲気に仕上がっています。
がなるような歌い方は従来通りなのですが、ラップが少々入っています。
ですが…ポップではない。そこが宮本浩次らしくてとっても良いです。
「ぶっ!ぶっ!ぶっとばせ!」などの少々荒っぽい歌詞もありますが、その後に「ゆけ!解き放て!」と続くのです…なんとなしに、いってこいでチャラに感じます。
ヤンチャ坊主とガリベン君が合わさったようなイメージに感じてしまうのは気のせいでしょうか?
この楽曲は"新時代"という言葉に相応しく、softbankのCMに起用されています。
宮本浩次の中の"繊細"
前述の『解き放て、新時代』の歌詞を読み解いていくと、宮本浩次の中の"奔放"な部分と"繊細"な部分がとてもよく理解できるはずです。
彼の歌声やスタイルはたしかに攻撃的なイメージを受けますが、よくよく歌詞を読み解くと単語の一つ一つがとても穏やかで美しいのです。
皆さんも、一度じっくりと彼の書く詞を読んでみてください。
ヤンチャ坊主とガリベン君が混在しているのがよく分かるはずですよ。
TEXT 時雨