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■『風ノ唄』Music Video(Short Ver.)
同じ唄を共有する、もう1人の誰か
アルバムの2曲目に収録されている『風ノ唄』は、FLOWのライブの中でもひときわ存在感を示す楽曲である。「テイルズ オブ ゼスティリア ザ クロス」の主題歌にもなった同楽曲は、異なる2つの種族の融合を歌った曲だ。
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遥かその先へと 君の旅路を 追い風に乗って行こう
探す答え 容易く 見つかりはしない 初めからわかってて踏み出したんだ
何度も遠回りして 夢の足跡
描き足していった 世界地図を広げたら
≪風ノ唄 歌詞より抜粋≫
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歌い出しの部分では、挫折を繰り返しながら、一歩ずつ前に進んで行く姿がリアルに描かれている。
決して英雄ではなく、1人の人間。
大きな成功を掴むことなく、ただ夢を信じ、不安と戦いながら前進していく姿に、親近感を覚えた人も多いだろう。
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響け 風ノ唄 目を閉じれば 心の声 背中押すよ 目指す雲は ずっともっと高く
届け 風ノ唄 耳澄ませば 心の声 溢れ出すよ 眩いほどの輝きを放つ
君よ 青い旋律になれ
≪風ノ唄 歌詞より抜粋≫
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サビで歌われる「風ノ唄」は、心の声を聴き、力を与えてくれる唄だ。
そして、風に乗って遥か遠い種族にまで届く、世界が1つになることを象徴している。
離れていても共有する想い
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立ちはだかる苦悩 迷いの数々
同じ風に吹かれている僕らだから歌える唄がある
≪風ノ唄 歌詞より抜粋≫
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ここで初めて、自分以外の誰かを思わせる歌詞が登場する。
「同じ風」とは、同じ時代を吹く風か、同じ境遇に吹く風なのか。
どちらにせよ、自分と同じ思いを抱えた人間同士だからこそ、同じ唄を響かせることができる、と歌っているのだ。
そして、「同じ風に吹かれている」もう1人の人間が、アルバムの6曲目に収録された『サンダーボルト』に登場する。
まず、歌詞を見てみよう。
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舵を取れ!と急かす雷鳴
遠く聞こえるのは風ノ唄
独りじゃないと気付く
吹き荒れる海を渡れ
強く 生まれて来れたのだから
恐れることはないさ 進もう
≪サンダーボルト 歌詞より抜粋≫
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今度は、空ではなく海が舞台になっている。
荒波に揉まれながらも、仲間や自分を信じて進む力強い姿だ。
注目すべきは「遠く聞こえるのは風ノ唄」というくだりだ。
風に乗って、遥か彼方から『風ノ唄』が聞こえてくる。
それはつまり「同じ風に吹かれている」誰かが歌っている歌だ。
ここでようやく『風ノ唄』と『サンダーボルト』が繋がる。
作詞を担当したKOHSHIいわく、『風ノ唄』の登場人物と『サンダーボルト』の登場人物は、同じ時代を生きる人間だという。
境遇は違えど、同じ時代の同じ風に吹かれている2人。
その2人を「風ノ唄」が繋いでいるところが何とも熱い。
『風ノ唄』も『サンダーボルト』も、困難に負けそうになりながらも這い上がり、自分で道を切り開いていく姿は同じだ。
別の人間なのにダブって見えるところがニクい。
「風」と「雷」が意味するもの
『風ノ唄』と『サンダーボルト』は同時代を生きる別の人物を主人公にした楽曲だが、共通点は曲名だけでない。『風ノ唄』では「風」、『サンダーボルト』では「雷」が肝になっているが、「風」も「雷」も、人の力では抗いようのないものだ。
自然の力に翻弄される、か弱い人間。そんな人間が何度もくじけながらも、仲間と共に困難に立ち向かい、前に進んで行く姿が力強い。
『風ノ唄』と『サンダーボルト』の共通点は、同じ時代で、それぞれ困難に立ち向かいながらも信じた道を諦めない人間が主人公ということだ。
人生には抗い用のない大きな力に押しつぶされることもあれば、挫折を繰り返し、自信を失ってしまうこともある。
そんな中でも、最後まで自分を信じて、しぶとく生きていこうというFLOWの願いが込められている楽曲といえる。
TEXT 岡野ケイ