語りすぎない歌詞の世界に惹かれる
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3月の雨はすごく冷たくて
ねぇ少しだけ
あなたに逢いたくなる
≪青のじゅもん 歌詞より抜粋≫
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雨音を思わせるコロコロとした鍵盤の音色が印象的な、優しい響きをもつイントロ。温かさを感じるメロディに「三月の雨」という歌い出しを乗せることで、楽曲の世界はとたんに冷たさや寂しさに包まれる。
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青い傘 青いかばん
こんなに こんなに
愛してる
ずっと ずっと 信じてた
青のじゅもん
あなたには
かからなかった
≪青のじゅもん 歌詞より抜粋≫
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「あなたにはかからなかった」…突然あらわれたネガティブな言葉。
青いアイテムを持つことが、なんらかの恋のおまじないなのであろう。願いごとは「今日も会えますように」かもしれないし、まるで別のことかもしれない。
この時点では分からないが「あなた」にはかからなかったという言葉が気にかかる。
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あなたの腕の中
すごく温かくて
ねぇずっと側にいさせて
鼓動が響く
あなたの寝息やさしいね
そう ふうわり
しゃぼん玉 揺れてる
≪青のじゅもん 歌詞より抜粋≫
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二番の歌詞には、幸せな二人の時間が描かれている。ここでようやく、二人は恋人同士だったことがわかる。
秀逸な“失恋”の表現が切ない
このフレーズで、失恋が明らかとなる。「すごい稲妻」には、運命的な恋に落ちる衝撃が反映されている。----------------
すごい稲妻
落ちたのが ねぇ
どうしてあなたじゃ
なかったんだろう
≪青のじゅもん 歌詞より抜粋≫
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あなたには落ちなかった。
運命で結ばれた相手は、あなたじゃなかった。
どうしてあなたじゃなかったんだろう。
恋にやぶれるたび誰もが想い、嘆く気持ちを、じゅもんに願いを託す女性らしい純粋な言葉で語られる。誰のことも責めない、まっすぐな想いだからこそ心に響いて痛い。
Kiroroの歌詞の秀逸さを感じられるフレーズだ。
青のじゅもんにかけた願いとは
「あなたが私を好きになってくれますように」誰かを好きになるたび「私」があなたを想うくらい想われたいと、おまじないをかけていたのだろう。
あなたにはかからなかった。青のじゅもんは、いつだって願いを叶えてくれた。だからずっとずっと信じていた。
それなのに、「運命の人でありますように」とまで願ったあなたにだけは、どうしてかかからなかった。
ほしいのはあなただけなのに、あなただけが手に入らない。切ないはずの恋の歌には、悲しみや憎しみではなく、大好きだった人への愛があふれている。
誰かのせいではなく、青のじゅもんがかからなかっただけ、運命の人じゃなかっただけだから。
叶わない恋を嘆いて心の行きどころがないとき、忘れられない恋を想って思いきり泣きたいとき、そばで寄り添ってくれる優しい曲。
『青のじゅもん』はKiroroだけが使える、恋の傷を癒やす魔法だ。
TEXT シンアキコ