どうしようもない孤独
人間は誰しも心を持っている。それは一人一人異なった形をしており、全く同じものなど無い。それは至極当然なことである。
それなのに、人はいつも同じ形の心を他人に求めてしまう。
自分が信頼の置ける人、愛する人には特に、全く同じ趣味・嗜好・考えであることを求めてしまうのだ。
しかし、君と僕はあくまで別の人間、他人であり、全てがピッタリ同じ考えに当てはまることはありえない。必ず何処かでズレが生じて、あくまでも君は他人であることが浮き彫りになってしまう。
その時、人はどうしようもない孤独を味わうことになる。
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寂しがりの月はまた 今日元に戻るよ
なんでだろう 風邪を引いたときのような微熱さ
≪君は僕じゃないのに 歌詞より抜粋≫
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友と呼べる仲間に会っても、愛を交わした相手が傍にいても、お互いに言葉と心が通わなければ孤独を感じてしまう。
その孤独感は、まるで、星が光りだす前の澄んだ空に、一人ぼっちで浮いてる月のようである。
伝わらなかった想いを抱えて、怒りや悲しさ、そして寂しさが混ざりあった心のまま、浮かぶ月のように、何もできない時間を過ごしていく。そんな瞬間が訪れるのだ。
しかし、孤独に浮いている月も、いずれ時が経てば、夜空に星々が輝きだし、辺りには雲が覆っていき、その世界に月は溶け込んでいく。
それと同じように、人間もいくら孤独感を味わっても、自然とまた人を求めてこれまでの世界に戻っていくものである。
そして、無意識に熱を帯びてしまうほど纏わりついてた孤独感の正体を考えてみたりするのだ。
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ああ君は僕じゃないのに ああ僕は君じゃないのに
求めてしまう気持ちは わがままというのでしょう?
≪君は僕じゃないのに 歌詞より抜粋≫
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君はキミという一個体の人間であり、僕はボクという一個体の人間である。どれだけ似ていても完全に同一になることはない。
その事実を改めて知り、孤独感を感じ取っても、僕はまた同じように、つい君に求めてしまう。
その気持ちは果たして、本能なのだろうか?それとも、ただの自分のわがままなのであろうか?
いっぱいのポケット
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いつまでも 僕らはまた 同じ事繰り返す
ポケットは 中は違えど いつもいっぱいさ
≪君は僕じゃないのに 歌詞より抜粋≫
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求めては躓いて、また求めてを繰り返す。
頭では理解していようとも、心が自然と別の方向へと移動しようとする。それによって、いつも頭を悩まされ、途絶えることはない。
常に誰かとともに生きていく中で、自分の心のポケットに余裕ができる時はないのだ。
君に伝えよう
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とろけそうな 忘れちゃいそうな 古ぼけた写真
握りしめて 決して紙ヒコーキはだめ
≪君は僕じゃないのに 歌詞より抜粋≫
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揃わなかった心で孤独を感じてしまった後に、またその人を求めながらも、その人をこれまで通り信頼することができるとは限らない。
普段どおり接したいのに、どうしようもないモヤモヤが残ってしまう時もある。
そんな時、かつての思い出の力が二人を繋ぎ止めてくれる。
心の形は違えど、心を許しあった瞬間のピースが、心の隙間にはまることによって、別々の心を、ひとつのモノに変えてくれるのだ。
だからこそ、思い出の一瞬は常に持っておかなければならない。
常に何かでいっぱいの心だからこそ、容易に捨てることなく、ひとつひとつ大切にするべきなのだ。
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明日 街が晴れたなら 僕は傘を畳んで
深緑の服を着て 君に伝えに行こうかな
≪君は僕じゃないのに 歌詞より抜粋≫
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ズレてしまった心が降らせた孤独感が過ぎて、自分を見つめ直そうとしたとき、きっと、一人で考えることに限界がきてしまうはずだ。
その時こそ、キッカケになった君と話すことが、一番未来に繋がる行為である。
形の違う心の声を直接耳にすることで、これまであった心の形を変えることができるからだ。
その為に、いますぐ君に自分を伝えるべきなのである。
同じ心を求めてしまった、君と違う心の声を。
TEXT 京極亮友