今年で100周年!?驚きのツアータイトル
全国ツアーのタイトルは「100周年ツアー”百が如く”」。”ユニコーンって100年やっているの!?”と、びっくりしますよね。(笑) 実はこれって遊びごころ満載のユニコーンらしいタイトルなんです。
というのも、この「100周年」は、一度解散したユニコーンが再始動してから10周年、ABEDON(阿部義晴)が加入し、現在のメンバーになってからのアルバム『服部』のリリースから30周年、川西幸一(Dr)の生誕60年の数字を足したものなんです。
音や歌詞で”遊ぶ”アーティストはたくさんいますが、「タイトル」にこんな意味をもたせてユニークさを出してしまうのが、ほんとこのバンドのらしさが出てますよね。
さらに、「働き方改楽 なぜ俺たちは楽しいんだろう」をスローガンに掲げているのも、音楽を思いっきり楽しんでいるのもまた、ユニコーンらしさが表れています。
この武道館ライヴも、音楽をやることが楽しくて楽しくてたまらない気持ちに溢れています。ユニコーンのメンバーもオーディエンスも。
そんな明るいオーラに包まれているユニコーンの歴史が気になりますよね。ヒット曲に触れながらユニコーンの歴史をご紹介しましょう。
デビュー当時はアイドル?
ユニコーンは、1987年にアルバム『BOOM』でデビューしました。ABEDON(Key)、奥田民生(Vo)、EBI(B)、手島いさむ(G)、川西幸一(Dr)の5人からなるロックバンド。バンド名は、イギリスのグラムロック・バンド「Tレックス」のアルバム『ユニコーン』からとったそうです。
グラムロックは、中性的で煌びやかな(きらびやかな)衣装やメイクも特徴としますから、ユニコーンはグラムロックではないでしょう。でも、「グラム」の語源となった「グラマラス」を「ワクワクする。魅力的な」と訳すのであれば、ユニコーンもグラマラスなバンドで
すよね。
デビュー当時のユニコーンは、メンバーのルックスの良さから、毎週のように音楽雑誌のグラビアを飾っていました。アイドルと言っても過言ではありません。髪の毛を立たせて、原宿の個性的なブランドの洋服を着こなした奥田民生が出ているPVは、今も時々ネットで話題になっています。
そんな彼らのデビューアルバムから『Maybe Blue』を紹介します。
許されないブルーな恋『Maybe Blue』
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乱れた後の沈黙で
感じるとまどいが憎い
せめて あと一時間だけ
熱い夜のままで
≪Maybe Blue 歌詞より抜粋≫
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「一夜限りの許されない恋」を歌ったこの歌。キャッチーなメロディラインとロマンティックな歌詞が際立っています。
『Maybe Blue』はユニコーンのライヴでは封印されている曲だと言われていたことがありました。(再始動後の2011年のライヴでは歌われています。)いわゆる「ユニコーンらしい」曲ではない、アイドルが歌うようなキャッチーな曲だというのが、その理由と思われますが…。
しかし、このような沢山の人を気持ちよくさせるキャッチーな曲を作ることは、とても難しいですよね。
デビュー直後の、まだあまり経験を積んでいない中で、このようなキャッチーな曲を作ることができた奥田民生の才能の奥深さ、そして、その後、数十年に渡って日本のロック界を牽引し続けるミュージシャンとしてのセンスを感じることができます。
もちろん、ユニコーンらしくなくても、この曲が大好きなファンは沢山いて、再始動後にこの曲がライヴで演奏されたとき、会場は大きな感動に包まれていたそうです。
では、「ユニコーンらしさ」とは何でしょうか。「ユニコーンらしさ」が表れ出したといわれるサードアルバム『服部』から『服部』の歌詞を見てみましょう。
恋の勝者『服部』
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頭 冷やして 話を聞けよ
愛の技と余裕と車
誘ったのは 彼女の方
Baby 楽勝 楽勝
私にかかれば
≪服部 歌詞より抜粋≫
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20歳のライバルに大人の経験や余裕、経済力であっさりと勝った「服部さん」を歌ったこの歌。「許されないブルーな恋」を切なく表現した人と同じ人が書いたとは思えない歌詞です。
ジャケット写真の方も「服部さん」なのでしょうか。原稿を書いている間、何度も目が合ってしまいました…。
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大人の恋なら
キャリアが必要
無敵の服部
世界を1人占め
遊びも本気も
マジメも 淫らも
まとめてお相手
Never never
ネバー ネバー
≪服部 歌詞より抜粋≫
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サードアルバムから、よい意味での自由奔放で、ノビノビしていて、遊びごころに溢れたユニコーンらしさが発揮されていきます。型にはまらず、次々に新しくて面白くて楽しいアイディアが出てきます。
メンバー全員が曲を作ることができて、ボーカルも全員とれる、楽器の担当もそのときによって違う、そんなハイレベルなところもユニコーンらしさです。
「音楽が楽しくて仕方がない」というワクワクするような気持ちが伝わってきて、明るいオーラに輝いていたユニコーン。しかし、デビューから6年目に解散しました。
解散前の最後のアルバム『スプリングマン』
デビュー6年目、アルバム『スプリングマン』制作中で、且つ全国ツアーを目前に控えた時期に、当時のリーダーの川西幸一が「音楽性の違い」から脱退します。ファンには明るいオーラに輝いて見えたけれど、いろいろあったのかもしれないですね…。
全国ツアーには、中学生の時からプロとして活躍していた古田たかしが、サポートメンバーとしてドラムを叩きました。そして、アルバムのレコーディングでは、なんとディレクターの河合マイケルが川西幸一の代役を務め、数曲ドラムを叩いたのです。
さすが、ソニーのディレクター。突然なのに、ユニコーンのドラムを叩けるなんて、凄すぎます。
ただ、調べてみると、河合マイケルは学生時代からプロのドラマーとして活躍していたとのこと。ソニーに入社してからも、ディレクターやプロデューサーとしてのみならず、ミュージシャンとしても多くの楽曲に関わってきました。
解散から16年間。ユニコーンは沈黙を続けました。正直なところ、ユニコーンが再結成されるとは夢にも思っていませんでした。しかし16年後に突然、再結成が発表されます。
再結成はサーフィン気分『WAO!』
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ブルーNOボード エッジOH切る
インサイドアウト スピード&スリルだぜ
ブンブンブン ブンブンブン
高鳴る鼓動 まるでR&R
愛のキーワード「1173」
≪WAO! 歌詞より抜粋≫
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再結成後の最初のシングル『WAO!』。ABEDONの作詞、作曲、ボーカルです。軽やかで楽しいユニコーンの世界が帰ってきました。
ユニコーンは再結成にあたって、特に大々的なコメントを出していません。同じくらいの長さの活動休止期間のあったTHE YELLOW MONKEYが、再始動後の初アルバムのタイトルを『9999(フォーナイン)』とし、「4桁の最高値、4人の最大限の意味だ」と説明して、メンバー4人の結束の固さを表現しているのとは、ちょっと違いますよね。
そうなると、再結成後のユニコーンの心情について、発表された楽曲から考えてみたくなります。
再出発は船出に例えられることが多いですが…。「ブルーのボード」という言葉や「エッジ」という言葉から、どうやらユニコーンの船出は、頑丈な船で行く旅ではなく、サーフボードで波乗りに行くような軽やかなもののようです。
曲調もスピード感のある明るいものですよね。ユニコーンらしいです。歌詞の中にあるキーワード、「1173」は「いいなみ」でしょう。ABEDONのプライベートスタジオの名前は「1173(いい波)スタジオ」とのことだから。
解散にまつわる重たい空気を吹き飛ばす、軽やかな風と波を感じさせる再結成後の初シングル。ユニコーンの門出は明るいと宣言していますね。
最強のバンド「ユニコーン」
そもそも、ユニコーンとは額に大きな角を一本持つ伝説上の生き物。ユニコーンにまつわるエピソードは多々ありますが、最強の生き物らしいです。まさに「ユニコーン」も、誰もとめることのできない自由さを持った最強のバンド。もう解散することはないでしょう。ニューアルバムのリリースが楽しみですね。
TEXT 三田綾子