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中島みゆきの真骨頂。『あばよ』の歌詞にみる女の強がりとプライド

『糸』『命の別名』など、メッセージ性の高い楽曲で幅広い世代に愛されている中島みゆき。 しかし彼女の真骨頂は「ツラすぎるほど重い」恋歌にある。みじめで悲しい女の歌には、彼女にしか描けない「女の強がり」と「プライド」が描かれている。

強烈なリアリティをもつ歌詞世界

今回取り上げる楽曲は中島みゆきの名作『あばよ』。

他のアーティストにも提供した『かもめはかもめ』や、『窓ガラス』。『慟哭』や、中島自身のヒット曲『わかれうた』に登場する強がりで悲しい女は、中島みゆきにしか書けないキャラクターだ。



強烈なリアリティをもつ彼女の歌詞には、救いようもなく破れた恋をとことんまで悲しみ、次の恋へと歩き出すためのパワーが込められている。そう、強がりではない。女は強いのだ。

女の強さと弱さをリアルに描く中島みゆきの才能

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なにもあの人だけが世界じゅうで一番
やさしい人だと限るわけじゃあるまいし
たとえばとなりの町ならばとなりなりに
やさしい男はいくらでもいるもんさ
≪あばよ 歌詞より抜粋≫
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『あばよ』は、自分自身に別れを言い聞かせるところから始まる。

別れの理由を探し、自分を納得させようとしている。しかし、理由を探せば探すほど、心底惚れ抜き愛していた気持ちが見え隠れして切ない。



忘れるため、憎むため、次の恋へ進むために、こう言い聞かせるしか方法がないのだ。

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明日も今日も留守なんて
みえすく手口使われるほど
嫌われたならしょうがない
笑ってあばよと気取ってみるさ
≪あばよ 歌詞より抜粋≫
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「ひどい男だ。別れてしまえ」。そういってやりたくなるような一節だが、それでもやりきれない、捨てきれない想いがあるのが恋というものだ。

中島みゆきはここで、泣き暮らして落ち込むようなことはしない。笑ってあばよと、こちらから手を離してみせるのだ。

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泣かないで泣かないであたしの恋心
あの人はあの人はおまえに似合わない
≪あばよ 歌詞より抜粋≫
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「泣かないで」

ということはきっと今、彼女の心は泣いている。きっとその顔を、涙を、誰にも見せはしないのだろう。

憎しみをぶつけるのではなく「あの人は自分に似合わない」と言い聞かせる。せいいっぱいの強がりに「あの人」を忘れて前を向いてやろうという心意気を感じる。

なぜ女性は「中島みゆき」に共感するのか

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あとであの人が聞きつけてここまで来て
あいつどんな顔していたとたずねたなら
わりと平気そうな顔しててあきれたねと
忘れないで冷たく答えてほしい
≪あばよ 歌詞より抜粋≫
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中島みゆきの描く女はいつだってかっこいい。恋にやぶれてもみじめにはならない。泣き暮れる姿を誰にも見せず、フッてやったんだとでも言わんばかりの威勢だ。

だがしかし、好きな男に見切りをつけてフッてしまえる強い女が主人公だったら、きっと女性は共感しない。

好きな男になぜか愛されない。それでもフラれるのはみじめで、別れを決定づけられてしまうのが悲しくて、だからこそ自分から手を離す…。誰にも涙を見せず、心で泣きながら自ら去る。

女性たちは、中島みゆきの描く「女のつよがり」に共感し、支持するのだ。



女にだってプライドがある。泣いてすがるのが女じゃない。笑ってあばよと気取って、ひとり静かに泣けばいい。

中島みゆきの楽曲はいつの時代も、悲しい女の背中を押す。「前を向け」とエールを送る。

TEXT シンアキコ

1975年「アザミ嬢のララバイ」でデビュー。同年、日本武道館で開催された第6回世界歌謡祭にて「時代」を歌唱しグランプリを受賞。 1976年にファースト・アルバム『私の声が聞こえますか』をリリース。 現在までにオリジナル・アルバムを43作品リリース。 アルバム、ビデオ、コンサート、夜会···

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