ミドルの声質が持ち味
──ご自分の「歌声」にはどういう印象を持ってます?七海ひろき:男性の様な低音は私には低いかなと思いますね。かといって、とても高い感じの声も……すごく頑張ったら出るかもしれないけど、ちょっと違うと思ってて。
低音と高音の中間のミドルな声質が、持ち味というか、特徴なんじゃないかなとは、思っているんですけど。
──確かに。中低音のロングトーンは、聴いてて気持ち良かったです。歌う際、キーについてもこだわりがあるんじゃないですか?
七海ひろき:今回の『GALAXY』の制作の段階で、最初にいただいた曲は結構キーが高めだったんです。その方が確かに華やかな印象で楽曲として素晴らしかったです。
でも私の場合、華やかさより自分らしさの方が大切で、それは、たぶん、キーがもう少し低いんだろうなと。キー調整は時間をかけて話し合い調整していきました。
──お客さんの反応も受け止めて、自分の声の特徴やいいところをわかってる。
七海ひろき:自分の声について、すべてわかってるかどうかはわからないんですけど(笑)。皆様からのお声は、いつも真摯に受け止めております。
ちょっと専門的なテクニックの話になるんですけど、例えば、同じ音程にしても、どこで響かせるかで変わってくる。(口の中の)前の方で歌うと可愛らしく聴こえたりしますし、奥の方で歌うと響きが変わって来る。
だから、歌う時、あまり前の方ばかりで歌わないようにするのを心がけていました。
オリジナル5曲の作詞を担当
──T.M.Revolutionさんの『WHITE BREATH』をカバーなさってますが、あの曲、すごくキーが高いですよね。西川さんの歌い方もハードロック的なアプローチで、スコーンと高音が抜ける感じ。でも、七海さんのはそうじゃなかった。そこにまず、七海さんの歌声の個性を感じたんです。
七海ひろき:確かに『WHITE BREATH』は前の方で歌った方が歌いやすいし、抜けもあるんですよ。でも、そうすると力強さとかカッコよさには欠けてしまって、自分らしさからは遠くなってしまうんです。なので、少し奥の方で響かせようかなって思って。そういう歌い方をしましたね。
──なるほど。声質もそうだけど、声の響き方も熟知して歌っているんですね。今回、カバー曲(2曲収録)以外、全曲、七海さんの作詞ですね。
七海ひろき:そうですね。歌わせていただいたカバー曲はどちらも大好きな曲で、思い入れのある曲です。
今回作詞をさせて頂き、自分の言葉だからこそ、伝えたい気持ちをより深く表現できるというのは、すごく感じています。
──歌詞は元々書かれたりしたんですか?
七海ひろき:宝塚時代に、企画で1度だけ書かせていただく機会はあったんですけど、これだけしっかり書いたのは今回が初めてです。
──どういう経緯で、全オリジナル曲の歌詞を手掛けることになったんですか?
七海ひろき:アルバム1曲目の『Ambition』の作詞をしてみたら、制作スタッフの方たちから「いいじゃないですか」っておっしゃってくださって。「他の曲も、ご自身で作詞してみませんか」って言っていただいて「是非、やらせてください」と。
──書きたいこと、歌詞にしたいテーマが元々あった?
七海ひろき:そうですね。まず曲をいただいて、曲に合う歌詞のテーマを考えて。テーマに沿って言葉を書き出して、メロディに合わせていくみたいな感じでしたね。
言葉がぴったりはまる瞬間
──歌詞を書くのは大変でした?それとも楽しかった?七海ひろき:楽しかったですね。
──どういう楽しさがありました?
七海ひろき:自分が考えた言葉が、メロディにぴったりあった瞬間がたまらなくて。例えば、8文字の言葉を書くじゃないですか。その8文字が音符にぴったりあった時に、すごく嬉しいなと思いましたね。
何となくこういうことを書きたいって中から出て来た単語があって、でもこのメロディは9文字だから、言いたい事を伝えるために、9文字でどう表現するか、どう単語をメロディにつけるか、みたいな。
──ひとつ、ひとつ、文字の数を数えてやった。
七海ひろき:そうですね。すごく数えて。数えてばかりいました(笑)。今回、初めてだったので、シンプルにしようと思って。英単語を使うかどうかとかも考えたんですけど、ほとんど日本語になりましたね。その方が、自分の気持ちをストレートに伝えれるかなと思いました。
──自作詞の曲全体に「星」とか「夜」とか「空」とか、情景が浮かぶ言葉が多くありました。
七海ひろき:そうですね。元々、宝塚歌劇団の「宙組」と「星組」にいたので、やっぱり「宙(空)」とか「星」は好きな単語だったっていうのあるし。「海」とかも自分の名前入っているし。この辺りの言葉は、入れたいなと思っていたので意識して入れてった感じですね。
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人間・七海ひろきにときめいて
──歌うことは好きだった?七海ひろき:小さい頃から好きでしたね。中学高校時代は、友達とカラオケにいって6時間とか歌っていましたね。
──学生時代、演劇部に所属していたということでしたが、当時は、歌うことと演じることは別々のものでした?
七海ひろき:学生時代は別々のモノでしたけど、宝塚に入団したことによって、同じ土台にあるものだな、と思うようになりました。
役として歌うっていうのが前提にあったと思うんですよね。でも今は役ではなく「七海ひろき」として歌っているので、宝塚時代とは、また違う。
──「七海ひろき」として歌った場合、自分のどんな部分が出てるか、または出したいと思いますか?
七海ひろき:お客様に、舞台を見て恋をしていただく。これが、宝塚時代からずっと私のコンセプトだったんですよね。そこは七海ひろきとしても変わってなくて。その伝え方が役を通しているのか、私自身から出ているのかの違いっていう感じなんです。
だから、アーティスト七海ひろきに、もっというと人間・七海ひろきにときめいて、恋をしてもらえるかってところですよね。そこは本当にいつも意識して大事にしていきたい。
──恋をしてもらう……って、まずは相手のことを考えるっていうのがあるんでしょうか?
七海ひろき:そうですね。ファンの方は、私の原動力なので、まずお客様の気持ちを大切にしたい。
そういう中で、自分のやりたいことが、あるんですよ。私がやりたいと思っていることに対して、ファンの方がときめいたり喜んでくれるかなって考えること。自分の中で、1番大切にしている時間ですね。
──「今、ときめいてる」とかってわかります?例えばライブだとダイレクトに感じるんでしょうけど。
七海ひろき:ライブは、まだ東京と大阪しかやっていないんですけど、ライブで、2階の1番後ろの方達まで、高揚してる瞬間みたいなのがあって。高揚の仕方や、気持ちはそれぞれだと思うんですけど、それこそそこにいる皆さん全員が「ワーッ」って声を出してくれているのを見ると、嬉しいし、楽しいなぁって思うし。何かあるんですよね、ふわっと空気全体がこう……高揚している瞬間が。