AKB48の名曲『10年桜』
AKBの大ブレイク直前の名曲の一つ『10年桜』。2009年3月発売でオリコン最高順位は3位。1位を獲ることが当たり前になってからは、そんな時代もあったのだなと思わせる順位のシングル曲。10年桜
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僕は忘れない
10年後に また会おう
この場所で待ってるよ
≪10年桜 歌詞より抜粋≫
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「10年後にまた会おう」と歌うこの曲。10年後にこのグループがどうなっているかは分かりません。
現にこのMVに映っているメンバーのほとんどがすでに卒業しています。この曲は10年後はどうなっているか分からないグループが歌うからこそ価値がある曲。
様々な都市伝説…
この楽曲MVは心霊現象の噂が立ち、様々な都市伝説が生まれました。MVの監督も「卒業」や「桜」に「一種の死生観が出ている気がする」と言っています。予測変換に「都市伝説」「心霊」と出るほど、MVのコメント欄も一時期心霊ネタで埋まりました。興味のある方はそちらも検索してみて下さい。
アイドルだから、意味が映える
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どこかで桜の花びらが
はらりと風に舞うように
誰にも羽ばたく時が来て
一人きりで歩き出すんだ
≪10年桜 歌詞より抜粋≫
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この歌詞から始まる『10年桜』。
「一人きりで歩き出す」という表現に、グループアイドルならではの意味が込められています。AKBは卒業加入を繰り返すグループなので、いつかはグループを離れて、この「一人きりで歩き出す」という状況が来ます。
グループで歌っているからこそ引き立つ歌詞。
「…」に込められた思い
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10年後に また会おう
この場所で待ってるよ
今よりももっと輝いて…
≪10年桜 歌詞より抜粋≫
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このサビでなぜ「今よりももっと輝いて」の後に「…」がついているのでしょうか。
それはほとんどのメンバーが、卒業後は輝けない現実があるからです。
この「…」の箇所は、今よりももっと輝いて「る姿で再会しよう」という決意や、今よりももっと輝いて「るよねお互い」という願望などが入るのでしょう。
ただいずれにせよ10年先のことは分からない。それは作詞した秋元康にも歌ってるメンバーにも推しているファンにも分からない。だから切実な思いを込めた「…」になります。
卒業はひとつの過程
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卒業はプロセスさ 再会の誓い
≪10年桜 歌詞より抜粋≫
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卒業=プロセス、過程であると歌っています。
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卒業はスタートさ 永遠の道程
≪10年桜 歌詞より抜粋≫
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同じ個所を2番ではスタートであると歌っています。
卒業は過程であり、開始でありその後に「永遠の道程」があると厳しい現実を示している歌詞。「永遠の道程」という表現で卒業してからのほうが人生は長いということを示しています。
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すぐに燃え尽きる恋より
ずっと愛しい君でいて
≪10年桜 歌詞より抜粋≫
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アイドルは「すぐに燃え尽きる恋」の象徴と言ってもいい存在。歌っている側にとっても、ファンにとっても「ずっと愛しい君で」いることは極めて難しいのです。
だからこそこのグループが歌うことに意味があります。
アイドルが歌うから、響く
▲10年桜 MV / AKB48
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今は悲しみに暮れても
ずっと手を振る君でいて
≪10年桜 歌詞より抜粋≫
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いつまで「ずっと手を振る君で」いられるでしょうか。ファンは新しいものにすぐ心を奪われます。
ステージに立つ側の人でも、心が折れてずっと手を振ることが出来なくなる人もいます。なかなか実現しない「ずっと」。
この曲はそんな10年先は分からないグループアイドルのメンバーが歌うからこそ響く歌詞になっているのです。
AKBはこの曲のあとも毎年春に桜ソングを出していますが、この曲は色褪せません。桜ソングとしてはテンポが速く、桜の花が散る儚さ、卒業の寂しさとこれから新たに歩き出すという高揚感、仲間といる楽しさが同居しています。
それほど曲自体に力があり、AKBが本格的にブレイクする直前のタイミングだったからこそ生まれた疾走感や瞬間の輝き、空気が込められている。
良くも悪くもAKBはこの後どんどん巨大化していきます。人気が上昇するにつれアンチも増え、握手商法が批判され前田敦子が執拗に叩かれるようになるのもこの後。
この曲がある種の輝きを放っているのはそんなAKB巨大化前の高揚感をとらえているからだと思います。
TEXT:改訂木魚 (じゃぶけん東京本部)