『Sympa』から感じ取る、現在のKing Gnu
King Gnuが2019年1月にリリースしたアルバム『Sympa』に収録されている楽曲はその歌詞に、大きな特徴が見られる。
彼らがKing Gnu名義で初めて2017年にリリースしたアルバム『Tokyo Rendez-Vous』では、“破壊衝動”や“怒り”のような、鋭利な感情にフォーカスした楽曲が多かった。
しかし一方で、King Gnuとして2枚目のアルバムである『Sympa』からは、『Tokyo Rendez-Vous』のそれとは少し違ったメッセージが感じられる。
特にそのメッセージが『Sympa』の収録曲である『Sorrows』には、色濃く表現されている。
King Gnuが『Sympa』を通して訴えるメッセージ、そこから彼らの打ち出したスタンスとは一体どのようなものなのか?『Sorrows』の歌詞を掘り下げ、考察した。
悲しみを分かち合うコミュニケーション
----------------赤裸々な言葉、印象的な刺激のある歌詞が人目を引くのは避けようのない事実だ。それでもきっと、悲しい現実を突きつけるような歌詞を鮮烈に奏でる事だけが正義ではないと信じたい。
優しい嘘をついてくれよ
現実は残酷だもの
酔いどれ踊れ
全てを忘れるまで
強がり笑うだけ
"Why don't you come back to me?"
避けようのない痛みを
二人分け合えるよ
"cause I know you're lonely like me."
こびり付いた悲しみを
拭い去れるの?
≪Sorrows 歌詞より抜粋≫
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事実、残酷な現実は、避けたいと思っても避けられるものではない。どんなに非現実的な音楽で目を塞いだとしても、音楽が鳴り止んだ時には、それぞれの現実が待ち受けている。
『Sorrows』では、そんな拭い去れない“悲しみ”を突きつけるのではなく、分かち合うという選択を示してくれる。
“Why don’t you come back to me.”
「僕のところへ帰ってきてはどうですか?」
“cause I know you’re lonely like me?”
「あなたが僕のように孤独なことを知っているから」
分かち合うための対話をするために距離を縮める。
決して、慰めたり優しくしたりするだけの馴れ合いではない。
そんな、“個(孤)”同士のコミュニケーションを表現することが、King Gnuの音楽のスタンスであることを、『Sorrows』から感じることができる。
「素晴らしき世界」で広がる対話
----------------分かち合うのは、何も悲しみだけではない。
everytime,
I feel as one.
sometime,
We feel as one.
ささやかな人生を
愛せるのならば
everytime,
I feel as one.
sometime,
We feel as one.
信じていたもの全てを
手放したっていいんだ
"You always stay in my mind."
"I want you stay in your mind."
"Why don't you come back to me?"
この素晴らしき世界を
二人分けあえるよ
" cause I know you're lonely like me."
この胸の悲しみと
共に生きてゆくよ
≪Sorrows 歌詞より抜粋≫
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喜びも悲しみも幸も不幸も、目まぐるしく行き交うこの「素晴らしき世界」を分け合うことで、広がっていくのではないだろうか。
個と個の対話が広がることで「素晴らしき世界」も同時に広がっていく。
しかし、対話をしたからといって“悲しみ”が軽減されたり消えたりするわけではない。
拭えない、そして避けられない現実を悲観するのではなく、最後には悲しみと共に生きる、とここでは歌っている。
悲しみであれ喜びであれ、それが音楽でコミュニケーションを取る糧になるのだという、King Gnuのスタンスを知ることができる楽曲が、『Sorrows』だ。
King Gnuの原点にあった破壊衝動を昇華し、行き着いた“Sorrows=悲しみ”の数々がまた新たな音楽を生み出すのだ。
TEXT DĀ