井上苑子は兵庫県出身の現役女子高生のシンガーソングライター。ギター女子の一人です。井上苑子作詞の『赤いマフラー』は片想いを歌っている曲。赤いマフラーを通したストーリー仕立てになっています。
“何故か照れたように巻いていた暖かそうな赤いマフラー
似合ってるよって言って 引っ張ってみたり”
曲の冒頭で赤いマフラーは幸せな日々の象徴として登場。曲の登場人物、「あたし」が「君」に惹かれている日常の風景がよく分かります。
“あの子が君を好きになって 君もあの子に惹かれて
「良かったね」って冷やかして気付いたの
冗談を言って笑っていないと泣いちゃいそうなあたしの気持ちに”
ここで「あの子」が登場して、「あたし」は自身の気持ちに気付きます。曲の冒頭で「冷えきったあたしの右手」とありますが、ここで「冷やかして」という単語を使って対比させています。曲冒頭では冷えていても気持ちは温かく充実しているのに対し、こちらは冷やかしていないと泣きたくなる感情。「冷」の字で季節感を表現しているのと同時に、気持ちを対比させているんですね。
“「綺麗だったよ」って光る街の中 白い吐息と君の笑顔
ピースの先にはあの子がいるんでしょう?そんなメールは送らないでよ“
情景が想像しやすい歌詞。ここで「白い吐息」という色が出てきます。これは「赤いマフラー」と対応させているんですね。そして「あの子」が風景の中にいないにも関わらず、その存在を感じさせています。
“「似合ってるよ」って言った赤いマフラーもあの子が選んでたんだね”
このフレーズが曲における「赤いマフラー」の転換ポイント。「あたし」にとっての幸せの象徴だった赤いマフラーが悲しみのアイテムに変わります。「何故か照れたように巻いていた」理由もここで明かされます。伏線になっていたんですね。
“ずっと隣にいたのに ヘタクソな笑顔に君は気付いてくれないの
でもこの気持ちを君に伝えたとき 今の関係も壊れそうで“
「ヘタクソな笑顔」の「ヘタクソ」がカタカナなのはギクシャクしている、不器用な感覚を表現しています。サビの「でも」で一番音に感情がこもる構成。「でも」はこの後も3回出てきますが、全てその後のフレーズで言葉に出せない気持ちが続きます。
最後は「桜の季節までにこの気持ちもちゃんと溶かすから」と雪にかけて綺麗に終わります。この曲は風景や登場人物の気持ちを想像しやすい曲なんですね。
TEXT:改訂木魚(じゃぶけん東京本部)