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back number「雨と僕の話」から見る大人の恋愛の終わり方

恋愛の痛みや悲しみを表現する天才back number。これまでリリースした失恋ソングはどれも、未練や後悔という感情がたっぷり詰まった楽曲が勢揃いだが、最新アルバムの1曲「雨と僕の話」では、過去にないあっさりとした恋愛の終わりが描かれている。

「君」と「僕」のエンドロール


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雨の交差点の奥に
もうすぐ君が見えなくなる
おまけのような愛しさで 呼び止めても
傘を叩く音で 届かないだろう

終わったのさ ただ 君と僕の話が
エンドロールは無い あるのは痛みだけ
≪雨と僕の話 歌詞より抜粋≫
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シーンは雨の中の交差点。主人公の「僕」に別れを告げた「君」は、雨で視界が曇った奥へと消えていってしまう。

それを見ている僕は、彼女を追いかけることも、強く呼び止めることもせず、ただ唖然とその場に立ち尽くすだけ。

というのも、この物語の終わりに「僕」が「君」へと抱けたのは、たった少しの「おまけのような愛しさ」でしかなかったのだ。

なんと冷めた結末なのだろう。

今までのback numberの歌の主人公であれば、彼女を好きで好きでたまらなくて、他の人の物になった後にまでも自分の元に返ってきてくれないかと考えていたはずだ。


感情的に行動することなく、別れの瞬間さえも冷静に考えるようになってしまった主人公は、良くも悪くも大人になってしまったと感じる。
 
映画のエンドロールには、作品に関わったあらゆる人や物、場所が羅列されている。

けれども、この「君と僕の話」にはそんなエンドロールは存在せず、ただ「終わった」という言葉だけであっけなく完結してしまう。

今の「僕」に残ったのは、彼女と共に過ごした日々やかけがえのない思い出ではなく、じれったい感情さえも差し置いて、たった1つ、「痛み」というなんとも単純な苦しみだけだったのだ。

二人のストーリーという名のありきたりなお話


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今となれば ただ ありきたりなお話
言葉にはできない そう思っていたのに
≪雨と僕の話 歌詞より抜粋≫
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自分たちが築いてきたストーリーは、あの終わり方を含めて「ありきたりな」ものだった。

別れからさらに時を経た「僕」は、そんなことを考え、心のどこかで自己防衛をしている。

自分を傷つけないように、そして今後も傷つかないように、出会いと別れを「ありきたりな」誰にでもあることだと自身に言い聞かせる姿こそ、歳を重ねて恋愛に臆病になってしまった大人の乗り越え方なのだ。

冷静沈着を装うのも、そこに出来るだけ感情が入らないようにするための1つの手段であり、「僕」が覚えてしまった一つの逃げ方。

「言葉にはできない そう思っていたのに」という歌詞からは、今まで二人の関係は言葉では表せない程に複雑で特別なものだと思っていたのに、終わった今になってみればどこにでもありふれた、単純明快なストーリーだったのだと、客観的に振り返っているのが伝わってくる。

「君」が「僕」に残したもの


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君が触れたもの 全部が優しく思えた
例外は僕だけ もう君は見えない
≪雨と僕の話 歌詞より抜粋≫
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冒頭でもうすぐ見えなくなりそうだった「君」は、「僕」から見えないところへと消えてしまった。

これまで共に創りあげてきたストーリーの中で、彼女が触れたもの全てが優しく、愛しく思えてしまう程に「僕」は「君」を愛していたのだ。

「僕」もそんな「君」が触れたものの一つであったことは確かであるが、自身はもう「例外」であると綴っている。

それは、最後まで彼女を全力で愛すことができなかった自分には、優しさなんて微塵も残っていないと感じていることの表われだろう。

「雨と僕の話」で描かれるように、大人の恋愛の後味は案外さっぱりとしていて、残るものも何もなく、非常に淡泊に終わる。

そんなつまらないエンディングこそが、長年失恋ソングと向き合ってきたback numberだからこそ見えた、新たな恋愛の結末なのである。

TEXT もりしま

Vocal & Guitar : 清水依与吏(シミズイヨリ)  Bass : 小島和也(コジマカズヤ) Drums : 栗原寿(クリハラヒサシ) 2004年、群馬にて清水依与吏を中心に結成。 幾度かのメンバーチェンジを経て、2007年現在のメンバーとなる。 デビュー直前にiTunesが選ぶ2011年最もブレイクが期待でき···

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