彼らの描き出す大人の恋愛模様は多くのファンを虜にしたんです。
そんなバービーボーイズの代表曲「負けるもんか」の魅力を詳しく解説してゆきます!
男女ツインボーカルのレジェンドバンド
バービーボーイズは1984年にデビュー。
KONTAと杏子の男女ツインボーカル、いまみちともたかのギタープレイが評判を呼び、80年代を代表する人気バンドとなりました。
武道館、東京ドームでのライブを成功させるなど1992年の解散まで精力的に活動しました。
今も数年に一度復活しライブを行うなど、若い世代にもアピールするレジェンドです。
『負けるもんか』は1985年にリリースされた2ndアルバム『Freebee』に収録されています。
バービーボーイズの魅力とエッセンスが凝縮されたような名曲です。歌詞を中心に、ご紹介しましょう。
突然の電話の理由は…?
バービーボーイズの大きな魅力は男女ツインボーカルであることです。
どちらかがメインでボーカルをとる曲もありますが、バービーボーイズの醍醐味はやはり男女ボーカルの掛け合いです。
疾走感のあるギターサウンドに乗ったその男女のやり取りは短編小説やドラマを見ているような趣があります。
それでは『負けるもんか』の歌詞を見ていきましょう。
杏子による女性パートから始まります。女性は男性に電話をかけているようです。
男はおそらく誰かからの電話を待っていたのでしょう。
電話が鳴りすぐに出てみると待ち人とは違う女性の声。
「あの娘と間違えて慌ててるの?」という言葉に驚いた様子が見て取れます。
まだKONTAのボーカルが出てきていないのにもかかわらず、ここまでの状況描写は見事です。
女性が電話をかけた理由は「帰れないから泊めてほしい」というものでした。
取り付くしまもなくグイグイと話を進めてきます。
うろたえるばかりの男性の姿が目に浮かぶようです。
当時は携帯電話もまだない時代です。女性は公衆電話からかけているのでしょう。
硬貨がないからもう電話切るわよ、今から行くからよろしくね!と電話を切ってしまいます。
何とも押しの強い女性です。
1番のサビ前まで、杏子のボーカルのみで、女性目線での物語が進みます。
テンポの速い曲の中で状況を理解させる展開の見事さと描写力。
バービーボーイズの歌詞のレベルの高さがよくわかります。
勝つか負けるかの駆け引き
サビになりKONTAのハイトーンボーカルが男性の心情を叫びます。女性は泊めてもらおうと今から家に来ようというのです。
しかしそこは男女。真夜中に一緒に部屋にいて寝ようとなったらどんな間違いが起こるかわかりません。
しかもこの男性は別の女性からの電話を待っていたのです。
浮気をしてしまうのか?いやそんなわけには行かない、誘惑に負けるもんか!
曲のタイトルの意味がここで明らかになるのです。
しかし女性はしたたかです。自分の誘惑に男が負けると信じています。
そう、そして実際に男と女はベッドに入ります。ここまで来てるのにまだ迷ってるの?と女は誘います。
「灯を消してからやたら長い」こういう表現で状況を一発で理解させるのは本当に見事ですね。
女性上位のドラマ
最終的に男は誘惑に負けてしまいます。どうにでもなれ、かまうもんか!と嵐の中に飛び込んでいくのです。
バレなきゃいいんだ!という開き直りがこの曲をドロドロした浮気ソングから脱却させている気がします。
最後は男女ボーカルのハーモニーで「かまうもんか」と歌います。男女同意の上で、そういうことになりましたという物語の結末です。
バービーボーイズのラブソングはこのように男女の恋の駆け引きをかなり踏み込んで表現しています。
ボーイミーツガール的な青春の恋愛とは違う、大人の世界です。
杏子のボーカルはハスキーでドスがきいているので、歌の中でも強い女性像を見せることが多いのです。
どこか男の方が尻にしかれているような、そんな関係。
女性の社会進出が目立つようになった80年代、バービーボーイズが人気を得たのは当然かもしれません。
バービーボーイズの曲は大人のドラマと最高にカッコいいギターサウンドの合体です。
ぜひご堪能下さい。
TEXT まぐろ
KONTA(Vo.&Sax)、杏子(Vo.)、いまみちともたか(Gt.)、エンリケ(Ba.)、小沼俊明(Dr.) 昭和57年結成。昭和59年9月、シングル「暗闇でDANCE」でデビュー。ギタートリオという最小編成の上で蝶のように舞い蜂のように刺す男女ツインボーカルとサックス、男女の機微を描いた独特のきわどい歌···