バンプの曲に感銘する理由の答えは「Spica」にある
BUMP OF CHICKEN(=バンプ)と言うバンドを、詳しく知らない。と、言う人が実は多いのかもしれない。
しかし、1曲は必ず耳にしたことのある曲があるんじゃないだろうか。
そんな彼らの楽曲を、どこかで耳にして”好きだな”、と感じる人はたくさんいるはず。なぜなら、バンプが作る曲は、聴く人の心を射止める力があるからだ。
加えて、各楽曲の歌詞の中に必ず、自分の心が共感する言葉を見つけることが出来る。
その言葉は、”好きだな”と、思ったその時の自分の中にある”言葉に出来ない想い”が、まるで代弁されているかの様に、しっかりと歌詞として歌われているのだ。
自分の気持ちにしっくりと寄り添ってきてくれたその曲を、”好きだ”と感じないわけがない。
バンプの曲には、人の心に寄り添い、感動を産む力がある。むしろ、バンプだからこの力があるのだ。
なんて、バンプのライブにも出かけた事がない、コアなバンプファンでもないのに、どうしてこんなにもバンプの曲に感銘させられるのだろうか?
その理由が解る『Spica』を中心に解き明かしていこうと思う。
正確には、『Spica』の歌詞から見えるボーカル藤原さんの、ファンへの感謝と信頼から生まれる“愛情”から、その答えを解き明かしていきたい。
感銘の答えは、ズバリこの一節。
----------------歌い出しの一節。ここにすべてが詰まっている。これが感銘させられる答えなのだろう。
名前ひとつ 胸の奥に 鞄とは別に持ってきたよ
声に出せば鳥になって 君へと向かう名前ひとつ
≪Spica 歌詞より抜粋≫
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バンプの唯一無二の力の正体を伝えるべく、さらに細かく意味をくだいてみる。
「君」とは、もちろんファンのことなのだろう。
その「君」である、ファンへ「声に出せば鳥になって」「向かう名前」。
私は、この「名前」を”全てのバンプの楽曲タイトル”の事だと思ったのだ。
「声」というのは、ボーカルの藤原の“歌声”のこと。
彼の声は、ひとたび歌い出せば、まるで鳥のように羽ばたいて、ファンの元へと飛んで行く。
つまりは、バンプの楽曲を意味しているのだ。
そして、「胸の奥にカバンとは別に持ってきたよ」は、それが特別な物である事を意味している。
ボーカルの藤原は、楽曲を自分の子供のように扱う。それだけ、彼にとって楽曲は特別なものだ。
それはファンにとっても同じ事である。
バンプの魅力の正体
ある人には、バンプとの出会いになった曲。ある人には、友達と友情が深まるきっかけになった曲…人生の1シーンを彩ってくれたのだから。
思い浮かべるだけで、天体観測、リボン、車輪の歌、スノースマイル、望遠のマーチ…私にもすぐ、これだけの曲が出てくる。
こんな風に、全ての人が自分にとっての1番の曲を迷わず選んで、藤原とその想いを共有出来るように。
藤原は「胸の奥に、鞄とは別に」全ての楽曲を「持ってきた」のだ。
この、バンプの曲を”好きだ”と言う、一人一人の心に向き合おうとする想い。
それが、バンプにしか持ちえない魅力の正体なのだ。
バンプの曲さえあれば”大丈夫”
----------------バンプの魅力というのは、歌詞が持つ”共感力”にある。
涙には意味があっても 言葉に直せない場合も多くて
こぼれたら受け止めるよ そうすれば何故か ちゃんと分かるから
≪Spica 歌詞より抜粋≫
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人には、絶対に“言葉に出来ない想い”がある。
そんな、心を包む“言葉にならない想い”を、驚くほどに見事な言葉で歌詞にしている。
言葉にならない想いというのは、自分の意志を左右するくらいに大切なものだ。
それなのに、うまく言葉に出来ない為に自分もはっきりしないし、人に伝えることも難かしい。
はっきりと、言葉にさえできれば“大丈夫”なのに、だ。
しかし、 言葉に出来ない想いは、藤原が代弁してくれる。
その“共感力”こそが、『Spica』で「名前」とされる、ファンにとって一番の曲を持ってきてくれたという魅力の正体なのだ。
この曲さえあれば、人生が“大丈夫”になるのだから。
それは、藤原が想うリスナーへの最大の愛情であり、“聴く人の心の味方になる”というのは、バンプが音楽を奏でる意味でもあるはずだ。
メンバーとファンは信じ合っている
そんなバンプのファンはきっと、人生が舞い上がるほどの喜びに包まれていた時も。人生が雲に遮られてしまった時も。BUMP OF CHICKENの曲に寄り添われ、想いを言葉にしてもらう度、強くなって“彼らと共に歩いて来た”のだと思う。
それは、この歌詞を見れば一目瞭然だ。
----------------どんなバンドも、大なり小なりファンとバンドとの絆はある。
約束が生まれた時の 笑った顔が嬉しかったよ
終わりのない闇に飲まれたって 信じてくれるから立っていられる
描いた未来と どれほど違おうと 間違いじゃない 今 君がいる
どんなドアも せーので開ける
≪Spica 歌詞より抜粋≫
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しかし、バンプに見るファンとバンドの絆は、並外れていると感じるのだ。
何と言うのか、バンドとファンと呼ぶよりも“仲間”とか。そんな呼び方がよく似合う。
“BUMP OF CHICKEN”という、ファンを含めたバンドが存在する意味を、双方が同じ気持ちで持っているからだと思う。
バンドメンバーは、ファンの心を音楽で支える為に、どんなことにも負けないように、ファンの応援してくれている心を信じている。
ファンは、いつも音楽で支えてくれるメンバーの支えになりたいから、どんな時もメンバーを信じている。
そんな風に、双方が信じあっている様子が『Spica』からとても伝わってくる。
「いってきます」は、独りじゃ言えないから。
この『Spica』は、ファンにとってはメンバーとの想いが通い合う、宝物のような1曲だろう。しかし『Spica』の輝きは、ファンだけでなく聴いた人全ての心を照らすと思うのだ。
----------------この最後の一節は、ファンという、絶対的な存在があるからこそ。安心して、これからも音楽の道を歩いていけるよ。
どこからだって 帰ってこられる
いってきます
≪Spica 歌詞より抜粋≫
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と、今まで共にしてきてくれた事への感謝。そして、これから共にできることへの喜びを表現している。
そして、そんな風に表現してくれることにより、ファンだけでなく全てのリスナーの心を勇気付けるのだ。
「いってきます」は、誰かがいないと言わない言葉だから。独り不安で、うつ向いている心を“必要な存在”として扱ってくれるから。
『Spica』を通して見る、バンプとファンのひたすらに温かい信頼関係は、聴く人すべての存在に“肯定と共感”だけをもって向きあってくれる。
これは、『Spica』の輝きが照らす先にある感動と。バンプの最大の魅力である事に、他ならない。
TEXT 後藤 かなこ
BUMP OF CHICKENは、トイズファクトリーに所属する4人組のロックバンド。独特な世界観とボーカル藤原の圧倒的歌唱力、更にはドラマの他、アニメやゲームとのタイアップ曲も多く、幅広い年齢層から支持を集めている。 幼稚園時代からの幼馴染であり、1994年、当時中学校の同級生であった4人が、文···