ノスタルジーと愛郷
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無口な群衆 息は白く 歴史の深い手に引かれて
幼い日の帰り道 凜と鳴る雪路を急ぐ
街灯の下ひらひらと 凍える頬に舞い散る雪
目を閉じれば昔のまま 厳しくも日々強く生きてる者よ
≪Winter,again 歌詞より抜粋≫
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北国の厳しい冬を描いた情景に、自らの古い記憶を重ね合わせるような言葉選びが素晴らしい。
今までこの「歴史の深い手」というのは、彼らの父や母、祖父母を象徴するキーワードだと思っていた。しかし今回、それ以上の意味も込められているのではと気がつく。
北海道と言えば、先人達の開拓により発展した土地だ。北の大地を発展させた彼らの功績は大きい。
「強く生きてる者」は、自分と共に幼き日々を過ごした人々だけでなく、それ以前に自身の故郷を築き上げた者達、そして現在までにその土地に根付いたすべての人々を示しているのではないか。
幼き日の思い出を懐かしむと共に、故郷への大きな愛を感じさせるフレーズに思えるのだ。
人々の心に残る伝説のサビ
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いつか二人で行きたいね 雪が積もる頃に
生まれた街のあの白さを あなたにも見せたい
逢いたいから 恋しくて あなたを想うほど uh
寒い夜は 未だ胸の奥 鐘の音が聞こえる
≪Winter,again 歌詞より抜粋≫
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決して難しい言葉ではないのに、メロディに重ねたそれは人の心に突き刺さり震わせる。非常にドラマチックなフレーズである。
自分が幼少期を過ごした場所は、それは綺麗な景色を持っている。しかし、それを伝えたい相手は今傍にいない。逢いたいという思いだけが募り、その寂しさを消すことはできない。
有名な『津軽海峡冬景色』のように、雪と言えばもの悲しさの代名詞として使われがちなもの。しかし、この楽曲の雪景色はそんな寒々しさだけではない。むしろ、この恋心を更に情熱的なものに感じさせる。
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逢いたいから 逢えない夜には あなたを想うほど uh
想い出には 二人が歩いた足跡を残して…
≪Winter,again 歌詞より抜粋≫
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彼らはいつかその雪景色を二人並んで見つめるのだろうか。そうして二人で作る思い出はすべて、雪原の足跡のように二人の心に残る。
もし同じような意味合いの歌を沖縄出身のアーティストが作るとしたら、このような雪景色の表現はもちろん無かっただろう。
彼らには素晴らしい自然の中で培った感性があるように、GLAYには「雪」が育んだ心がある。生まれ育った街の美しさを最も印象深く伝えるために「雪」は必要不可欠だったのだ。
そんな冷たい「雪」に対比するように描かれた熱情的な恋。これはきっと北国で育ち、冬の厳しさと美しさを両方知る彼らだからこそ生み出し、表現できた楽曲なのだろう。
TEXT 島田たま子