今回のアルバムはスタイリッシュに。
──2016年に活動を再開。2017年以降、毎年アルバムをリリースしていますよね。
フクスケ:だんだん期間が開き始めてるとはいえ(笑)、今は、毎年アルバムを出すペースを作れていますね。そうしているのも、リリース記念のツアーなど、名目を掲げたほうがライブツアーもやりやすいじゃないですか。だからなんです。
──最新アルバム「確率論≠paradox」は、どういう狙いや想いを胸に制作を始めたのでしょうか。
フクスケ:メトロノームにとっては毎回のことですけど、それぞれに作ったデモ曲を出し合ったうえでアルバムとしての軸となるテーマをみんなで決め、そこから掲げたテーマへ寄せる形を取っています。
──アルバムのテーマ性を定めたほうが、制作へも向かいやすいということでしょうか?
フクスケ:メンバー全員が、掲げたテーマへ真っ直ぐ向かっていくわけじゃないですけど。テーマ性があったほうが、制作していく中で迷いが生まれたときに「そこへ向かえばいいんだ」と意識を向けていきやすくなる。
要は、各自が自由に曲を作っていくうえで、そのテーマを心の片隅にも置いてくほうが安心という感覚です。
──今回、掲げたテーマが気になります。
フクスケ:アルバム制作の途中で、今回の衣装のビジュアルが決まったんですけど。その衣装が、僕らには「スタイリッシュ」に見えていた。そこから、「今回のアルバムはスタイリッシュに。
それこそ、スマートに、お洒落に見せていこうか」と3人で決めました。ただ、メンバーそれぞれ「お洒落」の定義は異なるので、そこは各自が自由に捉えたところです。
──先にも言ってましたが、テーマがあったほうが道を定めやすくなりますもんね。
フクスケ:テーマがあったほうが曲制作の道筋は見えやすくなりますよね。3人とも、無理やりそこへ寄せることはしていないのですが、「そういえば、今回はお洒落にというテーマがあったな」と思うことで、自然に統一感が出るというか。
持ち寄った楽曲の中からアルバム用に選曲していくうえでも、そのテーマを基準に選ぶと、よりアルバムの中身を揃えやすくなりますからね。
実際、曲出しの段階ではどんなアルバムになるのかまったく見えなかったところが、テーマに沿った形で選曲したことで、「いい感じにまとめあげられたな」とも思えましたからね。
テーマがあったほうが色を出しやすい
──リウさんは、「お洒落」というテーマをどのように解釈していました?
リウ:僕は、今回のアルバム用に6曲提出したんですけど、どれも異なる表情だったので、テーマ性が見えたことでアルバム用にどれを入れるか選曲しやすくなった面はありました。
同時に、各自が曲を持ち寄った時点では、どういうアルバムになるのか見えなかったんですけど。そのテーマ性を軸に据えたことで、いい感じにまとめあげられたなという手応えも覚えています。
お洒落…というか、スタイリッシュに関しても、そのテーマを掲げて以降の制作からは、ちょっとずつですけど、音使いやアレンジ面でそのテーマへ寄せていくようにも心がけました。
──シャラクさんは、どうでした?
シャラク:楽曲が出揃い、具体的にアルバム用の選曲をしてゆくときに、フクスケが「お洒落なテクノ系の歌があってもいいんじゃないか」と言い出したことから、お洒落やスタイリッシュという軸が生まれたわけですけど。出揃ったバラバラな曲調を、そのテーマへ向けて揃えていけたという面では良かったなとは思います。
ただ、オイラ自身お洒落とはどういうものを指すのかよくわかっていなかったので、正直テーマは気にしていなかったです。ただ、楽曲のアレンジを寄せていくうえで、そのテーマがあったほうが色を出しやすいのは、自分でも理解はしていました。
──アルバムへは「お洒落」「スタイリッシュ」へ寄りそう曲たちを選び、収録したわけですね。
フクスケ:それは、あくまでも一つの指針にしていたこと。最初に決めたのが、「アルバムのメイン曲をどれにしようか」ということでした。そこで選んだのが、MVも制作した「とある事象」。その曲をアルバムの中心に据えたうえで、「じゃあ、どの曲を入れようか」となったときに、「お洒落」や「スタイリッシュ」というテーマも参考にしてくという感じでしたね。
そうやって組み立てていく中、「こういう表情もあったほうがいい」となればそれに合わせてさらに曲を持ち寄るなど、そういう過程も踏まえながらアルバムを作っていきました。
──アルバムの軸となる楽曲が見えたほうが、より選びやすくなるわけですね。
フクスケ:メンバーみんな、どれをメインに持ってきても大丈夫という曲を持ち寄るんですけど。いろんな表情があるからこそ、一つの軸を決めたほうが揃えやすくなるという意味で、まずはメイン曲を定めるという感じです。
そのメイン曲も、それぞれに「これじゃない?」と感覚的に選んだ曲の中から多数決で決めてゆく形を取りました。
──アルバム「確率論≠paradox」は、テクノな表情から始まりながら、次第にディープに、そこからポップへ、そして激しめにとブロックごとに表情が変化していきます。選曲に関しても、いろんな意見を出し合いながら決めた形でしょうか。
フクスケ:バラバラに出揃った楽曲の流れを整えてゆく作業って、じつは大変なこと。基本的な流れはリウくんが作ってくれたんですけど。その流れに対して、それぞれが意見を出しながら調整を繰り返してゆく。そのうえで、最終的に今の形になりました。
リウ:聴いててブロックっぽい流れを感じるのも、シャラクくんの曲やフクスケくんの曲が続くなど、同じ人の書いた曲が続くことも大きいんじゃないかな。
他にも、メトロノームには珍しいメジャーコードの明るい曲が2曲生まれたから、それを一つの流れとしてくっつけるなど、そういう組み立て方をしたことも、ブロックごとに聞こえる要因なのかも知れないです。なんか結果的に、ライブのセットリストみたいな流れにもなったような気がします。
歌詞へ込めた想いについて。
──アルバムでは、メンバーそれぞれが作曲はもちろん、作詞を担当した歌も収録になっています。ぜひ、それぞれに書いた楽曲の歌詞についても聞かせてください。リウ:僕は、「憂国の空」と「Hello Stranger」の2曲の作詞を手がけてるんですけど。「Hello Stranger」には、「まわりに気を使いつつも楽しんでいこうよ」というニュアンスの歌詞を書けば、「憂国の空」には「まわりにばっか気を使わないで、もっと自分中心になってもいいんじゃない」と記したので、あえて相反する想いを2曲に書きました。
加えて、僕は夕方や夕陽という言葉を使うことも多いんですけど。今回、夕刻と憂国と言葉を重ねあわせ、憂いを持った気持ちも「憂国の空」には書き記しています。
シャラク:オイラは「テンションゲーム」「Catch me if you can?」「とある事象」「そうだ手紙を書こう」「まだ見ぬ世界」と、全部で5曲の歌詞を書いているんですけど。5曲中4曲はウジウジとした愚痴をつらつらと書いていて、どれも自問自答している感じになっています。
そういう歌詞になるのも、オイラは日頃からつねにウジウジ悩んだり考えたりしているんですよね。だから、自然とそういう歌詞を書いてしまうんだと思います。そんな中、リード曲となった「とある事象」では歌詞的な表現を心がけました。
──歌詞的な表現とは???
シャラク:オイラの書く歌詞は、思ったままを割とストレートに。それこそ、話し言葉のような書き方をしていくことが多いんですけど。「とある事象」に関しては、言葉の響きや字面、韻を踏む言葉使いも含め、歌詞らしい表現を心がけています。
フクスケ:僕は、「脳内消去」「戻れぬ世界で」「忘れん坊」の歌詞を書きました。「脳内消去」と「忘れん坊」は、「忘れること」をテーマに書いています。同じ「忘れる」でも「脳内消去」はみずから忘れてゆく様、「忘れん坊」へは勝手に忘れてしまう姿を書いたので、意味合いの違いを楽しんでもらえたらなと思います。
僕は「忘れん坊」の歌詞に書いた、「歪んじゃったみたい」や「転げちゃう」のような、ちょっとふざけた感じの表現を使うことが好きなんですけど。「戻れぬ世界で」へは、あえて格好をつけた真面目な歌詞を書きました。この歌詞に関しては、内容以上に格好いい言葉を羅列して書いているのも特色です。