地球が回る意味
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満天の空に君の声が響いてもいいような綺麗な夜
悲しみが悲しみで終わらぬよう せめて地球は周ってみせた
≪トレモロ 歌詞より抜粋≫
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『トレモロ』といえば、歌い出しの美しいメロディーや歌詞がとても印象的です。
たとえば命が終わるということは、その先も続くはずだったその人の人生や鼓動、呼吸が止まってしまうことでもある。
そこから先に続いていくものが、そこで終わることでとまって終わってしまうという考え方をすると、「終わる」とは「とまる」ことでもあると言うことができます。
だから「悲しみ」という状況でとまってしまうことのないように、地球はいつまでも回っているのです。
別れや終わりの悲しみも、すべて出会いや始まりに回りまわってつながって行くのです。
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本当に伝えたい想いだけはうまく伝わらないようにできてた
そのもどかしさに抱かれぬよう せめて僕は笑ってみせた
≪トレモロ 歌詞より抜粋≫
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本当に思っていることがなかなか伝わらなくて、思ってもいないことばかりが伝わってしまったり。
うまくいかないことに捉らわれて悩んだりイライラしてしまったり。
でもそんなことはもったいないから「僕」はせめて笑って過ごすのです。
諦めと希望に揺れる心
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「何もないんだってここには」って笑ってる君も望んでる
そんな声もかき消すほどに 膨れるこの万象を
「意味はないんだって僕には」って叫んでる僕も望んでる
無味を悟る その先に浮かぶ光の粒を
≪トレモロ 歌詞より抜粋≫
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「そんな声」=「何もないんだってここには」という言葉であり、ここには何も無いという叫びをかき消してしまうほどの現象が起こってほしいと「君」は期待しています。
「君」は表面上では諦めたようなことを言っていますが、心の奥底では何かが起こることを望んでいるのです。
「光の粒」とは、夢や希望。
「僕になんて意味はない」と言っている人だって、心のどこかではまだ夢を叶えたいという思いや希望を捨てきれずにいるのではないでしょうか。
命というリズムとメロディー
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最近は映画の見すぎで奇跡も珍しくなくなったね
心にもないことでもすらすら言えるようになったよ
≪トレモロ 歌詞より抜粋≫
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現実ではありえないことも映画の世界では描くことができて、元々はそれが現実を生きる私たちに夢を与えるものでもあったのに、最近では変に悟ってしまって驚いたりワクワクしたりすることもできません。
楽しいことに心を震わせることもできなくなり、口から出る言葉は思っていないことばかり。そんな毎日の中で、自分は本当は何を思っていて、どんなことが好きなのかもわからなくなっていきます。
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ほら 僕が僕から離れてく そんなことさえも忘れたくなる
「真実とはねそれだけで美しいんだ」と 言って
≪トレモロ 歌詞より抜粋≫
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「理想に描いていた僕」からどんどん離れていってしまうことへの絶望感。
でも、本当は今生きていることそれだけでもとても素晴らしいことなんだ。
生きてさえいればいつまでも夢や希望を抱くことができる。
誰かと繋がってしか生きられない私たちだからこそ、誰かから「君は君のままで美しいんだ」と言ってもらえることが救いになることもあるのです。
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今開いていたページの上に描いてみようかな
「離さないよ 繋いでたいの 僕は僕の手を」
今止まっていた景色が動き出した気がしたんだよ
ほら 僕の鼓動も確かに刻み始めた4拍子
≪トレモロ 歌詞より抜粋≫
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「夢に見ていた僕」の姿をまだ諦めたくない。
一度は諦めてしまった夢も、自分がそのページを開いて、描くことを辞めなければ今からでもまた追いかけることはできるのです。
心臓が動いている、ただそれだけでも「鼓動は4拍子」を刻みます。生きているだけで、そこにメロディーが生まれていくのです。
『トレモロ』は美しくも切ないメロディーが魅力の楽曲でもありますが、歌詞に描かれているのは夢や希望をいつまでも持って生きていきたいという前向きな気持ちなのではないでしょうか。
TEXT ぽんつ