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1995年から2020年へ「彗星」に乗った小沢健二が見た宇宙

13年ぶりにリリースされた6枚目のアルバム『So kakkoii 宇宙』がオリコンランキング3位を獲得し、完全復活を遂げた小沢健二。配信限定シングル『彗星』の歌詞から、小沢健二が1995年から現在までの25年間に辿った心の軌跡に迫ります。

2019年の「オザケン」


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そして時は 2020
全力疾走してきたよね
1995年 冬は長くって寒くて
心凍えそうだったよね
≪彗星 歌詞より抜粋≫
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1995年、小沢健二はアルバム『LIFE』のビッグヒットで「オザケン」として社会現象を巻き起こし、人気のピークを極めていました。

圧倒的な人気者として目まぐるしく過ぎ去ったであろう1995年の冬を、小沢健二はなぜ今「長くって寒くて心凍えそうだった」と振り返るのでしょうか。

それはどんどん加速していく「オザケン」を取り巻く熱狂に、自身が漠然とした不安を感じていたからかもしれません。

それから間もなく表舞台から姿を消した小沢健二が、2017年に音楽活動を再開し、満を持してのリリースしたのがアルバム『So kakkoii 宇宙』。

ここに至るまで、人知れず「全力疾走してきた」小沢健二の『彗星』は、90年代の『LIFE』を彷彿とさせるハッピーサウンドで、「オザケン」の完全復活を高らかに宣言しているようにも聴こえて来ます。

若き小沢健二の苦悩


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2000年代を嘘が覆い
イメージの偽装が横行する
みんな一緒に騙されてる 笑
≪彗星 歌詞より抜粋≫
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音楽活動から遠ざかってからの小沢健二は、日本を離れ途上国で環境問題に関するフィールドワークに取り組んでいました。

途上国の現実を見た小沢健二は、華やかなスポットライトの中で生きていた自分は無意味なイメージでしかなかったと、「オザケン」を否定したくなる気持ちになったのかもしれませんね。

それが、オザケン時代のヒット曲を含むシングル集につけられた『刹那』というタイトルに現れているのではないでしょうか。

小沢健二が見た光


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だけど少年少女は生まれ
作曲して 録音したりしてる

だけど幻想はいつも崩れる
真実はだんだんと勝利する
≪彗星 歌詞より抜粋≫
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小沢健二の歌詞には、よく「考えてる」という言葉が登場します。頭脳明晰な小沢健二は、きっと物事に対して人より深く思考する事が多いのでしょうね。

それ故に悩み、若い頃には過去の自分を否定しがちだったのかもしれません。

しかし、年を重ねていくうちに、これまで自分が生み出してきたものが無意味ではなかったと思い始めたのではないでしょうか。

「オザケン」時代の自分の曲が若者に影響を与え、新しい音楽が生み出されて行く。「オザケン」というイメージは消え去っても、良い音楽は受け継がれていくと思ったのでしょう。

「オザケン」の再生


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今遠くにいるあのひとを 時に思い出すよ
笑い声と音楽の青春の日々を
再生する森 満ちる月 続いてゆく街の
空を横切る彗星のように
≪彗星 歌詞より抜粋≫
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「今遠くにいるあの人」とは、オザケン時代に一緒に仕事をした人か、それより前のフリッパーズ・ギター時代、もしくはロリポップソニックの頃の仲間でしょうか。

過去の自分の音楽が今も人々の中で息づいていると気が付いた時、小沢健二の心の中で青春時代の情熱が再び目を覚ましたのかもしれません。

「再生する森」という言葉には、冬枯れの木々が春になると若葉が芽吹くように、小沢健二の中で再生していく音楽の生命力が表現されているようです。

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あふれる愛 止まらない泉
はるか遠い昔 湧き出した美しさは ここに
≪彗星 歌詞より抜粋≫
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再生した音楽への愛が心から溢れ出し、次々と生まれて来る新しいアイデア。青春時代の純粋な心はまだここにあり、それをみんなに伝えたい。

その想いが小沢健二を音楽シーンへとカムバックさせたのではないでしょうか。

小沢健二が辿り着いた宇宙


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今ここにある この暮らしこそが
宇宙だよと
今も僕は思うよ なんて素敵なんだろうと
≪彗星 歌詞より抜粋≫
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再び表舞台に登場した小沢健二が歌う「今ここにある この暮らしこそが 宇宙」という歌詞には、どのような意味が込められているのでしょうか。

海外でのフィールドワークを経験した小沢健二は「平凡な暮らし」がいかに恵まれているかを理解しているはず。

その平凡な日々の中でも誰かが亡くなり、そして新しい生命が誕生します。それは、今この瞬間にも日本中、そして世界中で起きている生命の営みなのです。

地球を含む無限の宇宙でも、どこかで一つの星が消えてはまた新たな星が生まれていく。小沢健二は「人々の生活は宇宙の縮図だ」と考えているのかもしれませんね。

小沢健二の中で一度は消えた「オザケン」が再生したように、消滅と誕生を繰り返し永遠に続いていく生命の営みこそが奇跡的な幸せなのだと。

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空を横切る彗星のように見てる
≪彗星 歌詞より抜粋≫
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小沢健二はよく「魔法」という言葉を使いますが、「彗星」は「ほうき星」とも呼ばれる長い尾を引く小天体で、魔女の空飛ぶ箒のようにも思えますね。

また、彗星は「ハレー彗星」でも知られるように出現する周期を持っています。そう考えれば「オザケン」とういう彗星の周期は25年なのでしょう。


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高まる波 近づいてる
感じる
≪彗星 歌詞より抜粋≫
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魔法の彗星に乗って1995年から回帰して来た「オザケン」。

90年代のオザケンが『ラブリー』で「LIFE IS A SHOWTIME」と歌ったように、全国ライブツアーが開催される2020年には、再びオザケンのショータイムが幕を開ける事でしょう。

その高揚感が「高まる波 近づいてる 感じる」という言葉から伝わって来るような気がします。


TEXT 岡倉綾子

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