アニメ『ワンパンマン』のエンディングテーマ『星より先に見つけてあげる』。森口博子が歌っています。
『ワンパンマン』は、主人公サイタマがワンパンでどんどん敵を倒していくアニメ。
森口博子はデビュー曲『機動戦士Zガンダム』の主題歌で有名。バラエティタレントとしても有名です。そちらのイメージのほうが強い人もいるかもしれません。実は、歌もたくさん出していて特にアニソンとは縁があります。
オープニングテーマが熱い曲なのに対して、このエンディングテーマは優しい曲です。熱いOP、ギャグとアクションが混合する本編、そして懐かしのアニソンのような優しいこのED。絶妙なバランスのアニメです。
エンディングの作詞は畑亜貴、作曲は前山田健一。見事に森口博子の良さを活かしています。
一見本編の内容とかけ離れているようにも見えるこのエンディング。本当にかけ離れているのでしょうか?
まずサイタマの弟子ジェノスが師匠サイタマを思う気持ちなのではないか、とも言われているサビの歌詞。
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大好きなひとが 強くって心配
私にだけは 弱さみせて
星より先に見つけてあげる
まっすぐ帰って来てね
≪星より先に見つけてあげる 歌詞より抜粋≫
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アニメ内容とリンクしています。「大好きなひとが 強くって心配」の歌詞。主人公サイタマはとにかく強いキャラ。にも関わらず心配になるキャラ。
それは、ワンパンで誰でも倒せるほど強いということを、劇中のほとんどのキャラが知らないから。ただのモノ好きなハゲマントとしてさげすまされるのです。
しかし、趣味でヒーローをやっているサイタマは気にしません。だからこそ視聴者に「この主人公、本当は最強なのに…気付かれてない!」と心配させるのです。そのストーリー構造を反映させている歌詞。
だから「私にだけは 弱さみせて」というのも視聴者の気持ちの代弁。サイタマ少しは人を頼れよと、視聴者は思うわけです。
そして何より「星より先に見つけてあげる」というフレーズが『ワンパンマン』がたどってきた道そのもの。
そもそもONEの原作漫画はWEB上でこっそりスタートした作品でした。特に初期は画がかなり下手。タイトルも『アンパンマン』のパロディなので期待する人は少ないわけです。
しかし、徐々にその内容の面白さが広まっていき、『アイシールド21』をスマッシュヒットさせていた漫画家、村田雄介が「見つけ」ます。
数多のきら星のごとき編集者が気づいていなかった中、村田雄介は「星より先に見つけ」ました。そして超絶に上手い自身の作画でのリメイクを希望します。
プロトタイプの漫画を作り各出版社をまわり、一番コミックを発行してくれる集英社のヤンジャンWEB連載が決定。こうしてコミックが発行され、漫画好きが「星より早く」『ワンパンマン』を「見つけ」ます。
そして今、アニメ化されたこの作品は気が早いアニメ好きに「星より先に見つけて」もらっている真っ只中。
「まっすぐ帰って来てね」のフレーズは、この作品が無事に完結してくれるよう祈る作品ファン心理の投影。
村田雄介のリメイク版もONEの原作漫画もまだ完結していません。無事にまっすぐ終わって欲しいとみんな願っています。「ねえ、早く帰ってきてね!」とこの主題歌が念をおすように、見つけてしまった読者はもう待ちきれなくなっているのです。
穏やかなメロディ、女性目線のこの曲は一見『ワンパンマン』の内容とかけ離れているように見えます。
実は「幾多の星より先に見つけてあげたい」ファン心理を投影しているんですね。
TEXT:改訂木魚(じゃぶけん東京本部)