自分を表すには、文字が必要だ。
特にわれわれ日本人は、名前や気持ちを形にするために、漢字と長年夫婦のように連れ添ってきた。
当たり前のように、傍にあったのだ。
公開日:2015年12月7日
自分を表すには、文字が必要だ。
特にわれわれ日本人は、名前や気持ちを形にするために、漢字と長年夫婦のように連れ添ってきた。
当たり前のように、傍にあったのだ。
そんな漢字との関係をはっきりタイトルにしているのがMay'n『ヤマイダレdarlin'』。
2015年7月2日から放送されているアニメ「アクエリオンロゴス」のオープニングテーマである。
「ロゴス」からわかるように、文字と文字を語る声をメインに沿えた作品で、文字の世界“ロゴスワールド”が存在する。
敵キャラもM.J.B.K(モジバケ)と呼ばれる漢字が変化したものが度々登場し、主人公たちの技も自らの名前や、創声力で発言した漢字を用いて戦う。
この楽曲のMVにも、アニメに合わせて漢字が出現。
極彩色で目に鮮やかな作りとなっているが歌詞で登場する漢字がプロジェクターで投影され、漢字合体を表現している。
May'n「ヤマイダレdarlin'」
――――
ヤマイダレdarlin' darlin' 神託の冠
愛という言葉が 憂いによく似てるって
僕が気付いたとき夜があけた
青が争うほどの静けさに満ちてた
僕の右側に君は滑り込んできた
――――
楽曲にある『ヤマイダレ』とは、病などの冠のように上にのっている漢字の部首。
つまり、すでにタイトルから漢字のことを言っているわけだ。
ポップなメロディに、セクシーな色気のある声というアンバランスな組み合わせに思えるが、そこは作曲・編曲を担当した菅野よう子がカバー。
バラバラにするどころか、カッコイイ仕上がりで漢字の魅力が詰まった楽曲となった。
この楽曲の面白いところは、ただ形をなぞるのではなく意味も深いところ。
愛は、不安定でぼんやりした心を表し、憂いは心が晴れないことをいうから気持ちの状態に明暗があるだけで、確かに形も意味も紙一重のものなのだ。
青に、争いが右から滑り込んできて静という漢字も、すみきった青く美しい世界を前には争いごとも忘れて静まり返ってしまう心情を表しているのかもしれない。
“ヤマイダレdarlin' darlin' 神託の冠”
“誇りより高く頂いて”
“ヤマイダレdarlin' darlin' 癒して下心”
“今や手に負えない輪郭”
心の下には隠れた欲望や暗い願望が渦巻いている下心。
これにしても単体ではあまり良い意味を成さないが、ヤマイダレをかぶせるだけで癒しという漢字に様変わりしてしまう。
絶対、神のお告げがなければこんな事はできないはずだ。
誰が考えよう、下心に何か部首の冠をかぶせれば違う意味になるだなんて。
意思を伝えるための手段でしかない漢字が使い方を1つで傷付けることも、逆に癒すことも、この楽曲は教えてくれている。
この楽曲は、アクエリオン20周年記念作品の楽曲である前に、May'nの10周年記念第1弾シングルでもある。
言葉遊びにゴージャスさが備わったことで、ヤマイダレは冠のように輝いている。
正しく使うことができれば、漢字も答えてくれるのだ。
だから、ダーリン。漢字とは仲良くしましょ?
TEXT:空屋まひろ