東京スカパラ×奥田民生
----------------
戸惑い纏って飛んだ
鮮やかな蝶を 独り
静かに見つめてた
悲しみを連れて
出口無くして 森の入口
≪美しく燃える森 歌詞より抜粋≫
----------------
東京スカパラダイスオーケストラ、通称スカパラと奥田民生のコラボ曲『美しく燃える森』。
2002年発売のシングルです。スカパラは数々のアーティストとコラボして歌モノを発表していますが、その中でも最もセールス的に売れた曲。
スカパラのホーンのリズムと奥田民生の歌声がよく合っているコラボの成功例。非常に大人っぽい雰囲気が漂う楽曲です。
歌いだしは歌詞の主人公が森の入口で蝶を独り見つめているという歌詞。その蝶は戸惑いを纏って飛んでいるといいます。蝶に人のような意思がある表現。
ピアノ音でさえも…
----------------
束ねた譜面を開き
不慣れな手つきで Woh
奏でたピアノから
聞こえてくるのは
呼び止める声
出掛けの『さよなら』
≪美しく燃える森 歌詞より抜粋≫
----------------
次にピアノが出てきます。奏でたピアノから声が聞こえてくる。
「きこえる」の漢字を、音楽が「聴こえる」の字ではなく、音がなんとなく「聞こえる」の字を使っています。
ピアノから声が聞こえるという表現で、ピアノを人のように表現。
----------------
かけてゆく 月の夜
変わり行く数字
見つめる君に
火をつけて 森の中
飛べなくなる蝶見つめて
酔い痴れていようか
≪美しく燃える森 歌詞より抜粋≫
----------------
「かけてゆく」をひらがなににして、「欠けて」で月の満ち欠けを表現し、さらに「駆けて」で疾走していく時間を表しています。「変わり行く数字」も時の流れですね。
ここで「君」が出てきます。ここまで出てきた歌詞の中の「蝶」も「ピアノ」も「君」を暗示しています。君との恋愛で美しく燃えている。酔い痴れている。森とはその状況の比喩なんですね。
「火をつけて」は「君に」と「森の中」両方にかかっています。君の心に恋の火をつける意味と、森=主人公と君の関係そのものに火をつける意味。
「飛べなくなる蝶」は「君」のことを主人公がつかまえている状況を暗示しています。主人公の気持ちが盛り上がっているタイミングなんですね。
この後に間奏が入りますが、間奏が入る直前で、音的にも歌詞上のストーリーとしても盛り上がりを作っています。
迷いをみせる主人公
----------------「目隠しで 森の中」という、まさしく恋は盲目な状態。
目隠しで 森の中
戻らない旅に
出掛けて君を忘れようか?
≪美しく燃える森 歌詞より抜粋≫
----------------
しかし、序盤で出てきた「出掛け」が、終盤でまた出てきました。序盤の「さよなら」そして、終盤の「戻らない旅」から、「君」とは別れて離ればなれになることが暗示されています。ただし、「?」があることから、主人公は迷っているんですね。
----------------
止められない時を
迷わず焦がしてく
炎で燃やし尽くしてくれ
≪美しく燃える森 歌詞より抜粋≫
----------------
「変わり行く数字」と対応する「止められない時」が最後に出てきます。もうさよならすることは止められないけれど、そんな時を、恋焦がす炎で燃やし尽くしてくれ、という願望で終わる歌詞。
結構切ない歌なんですね。歌詞も良いですが、奥田民生の哀愁漂う歌声とスカパラのホーンの美しいメロディが、この曲をより魅力的なものにしています。
だからこの曲はヒットしたんですね。
TEXT 改訂木魚(じゃぶけん東京本部)
ジャマイカ生まれのスカという音楽を、自ら演奏する楽曲は"トーキョースカ"と称して独自のジャンルを築き上げ、アジア、ヨーロッパ、アメリカ、南米と世界を股にかけ活躍する大所帯スカバンド。 アメリカ最大のフェスティバル”Coachella Music Festival”では日本人バンド初となるメインステージ···