「泣けるポップス」の第一人者、そのテクニックを徹底解剖
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2006年にシングル『シンクロ』の発売と共にメジャーデビューを果たした秦基博。
類稀なる才能にあふれた透き通るような声質と、どこか切ない感情を思い起こさせる歌詞にマッチしたメロディセンスが話題を呼びました。
翌年に発売したシングル『鱗』は彼の人気を後押しし、現在でも弾き語りソングの定番として様々な層に歌い継がれる名曲となりました。
その後も実力派シンガーソングライターとして活動を続け、数多くのタイアップ曲を発表しながら知名度を高めていきました。
2013年には『君の名は』や『天気の子』で日本を代表するアニメーション作家へと登り詰めた新海誠による劇場短編アニメーション『言の葉の庭』のイメージソング・主題歌として『言ノ葉』『Rain』を提供。映画の人気と共に秦基博の名前がさらに知れ渡るきっかけとなりました。
そんな彼の人気を決定づけたのはやはり2014年公開のフルCGアニメーション作品『STAND BY ME ドラえもん』主題歌としてタイアップを果たした『ひまわりの約束』ではないでしょうか。
映画のストーリーと完璧にマッチするような、シンプルな日本語で紡がれた優しい歌詞が心にスーッと染み渡っていき、彼が得意とするアコギ主体の王道ポップスサウンドの完成度と相まって平成を代表する名曲の一つとなりました。
秦基博の人気をここまで決定的にした要素の一つは、やはりそのシルクのように優しく伸びやかな声質ではないでしょうか。
音楽ファンからの評価も高く、まさに「絶品」と評する声が溢れています。
美しいファルセットが印象的なハイトーンボイスだけでなく、スモーキーかつ力強さを感じる地声の魅力も兼ね備えているのが彼のボーカルの聴きどころ。
どの楽曲を再生しても「鋼と硝子でできた声」と称されるその特徴を最大限に味わうことができます。
また音楽的な面白さを兼ね備えているのも彼の魅力の一つ。
彼の得意とする切ないメロディを最大限に表現するために、彼自身による非常に鋭い分析のもとに生まれたテクニカルなコード進行が使用されています。
以前テレビ番組でも紹介され話題を呼んだ、日本人らしい切なさを表現する和音である「メジャーセブンスコード」の使用なども彼の得意とするテクニックの一つ。
ポップスとして簡単に消費される楽曲ではなく、そこに音楽的なエッセンスを加えることで聴き手に多層的な面白さを提供している点は、彼の音楽ファンからの信頼の理由となっているのかもしれません。
「ひまわりの約束」から聴きつなげるオススメの3曲
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『ひまわりの約束』で一躍国民的アーティストとなった秦基博。
彼が生み出した楽曲はどれも日本人の心を静かに打つような美しさと切なさに溢れています。
そんな彼の数ある名曲の中から今回はオススメの3曲をセレクト。
『ひまわりの約束』から聴きつなげるプレイリストを紹介します。
あの日降った雨の美しさを思い出す。「Rain」
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2013年発売のシングル『言ノ葉』に収録、新海誠作品である映画『言の葉の庭』エンディングテーマに起用された『Rain』。
梅雨の季節の恋愛模様を美しい雨の描写と共に表現した、映画のストーリーにぴったりの楽曲です。
そんな『Rain』、実は1988年にシンガーソングライター・大江千里がアルバム『1234』収録曲として発表した楽曲のカバー。
心揺さぶる一曲として槇原敬之など数多くの著名アーティストのにカバーされてきた名曲となっています。
こちらの秦基博によるバージョンには彼らしいアコギ主体のサウンドアレンジに浮遊感のあるリバーブを纏ったエレキギターの音色が与える奥行き感がプラスされ、楽曲の持つ優しさを後押ししています。
雨の日に聴きたい、美しく儚い一曲となっています。
ノリノリなポップスの中に見える切なさ「スミレ」
2016年にシングルとして発売された『スミレ』も彼の魅力を形作っている一曲。
ドラマ主題歌として起用されたのを覚えている人も多いのではないでしょうか。
スローなバラードで泣かせるような楽曲が多い彼の作品ですが、こちらはハートフルで爽やかなポップスサウンドを纏った疾走感あふれるサウンドが特徴です。
彼のハスキーなボーカルの魅力も健在。バラードだけでなく、ノリノリな楽曲も歌いこなす才能には思わずドキドキしてしまいますね。
クールな一面を見せる、秦基博の新境地「Raspberry Lover」
2019年12月に発売された最新アルバム『コペルニクス』に収録されている最新曲『Raspberry Lover』では、秦基博の新たな境地を楽しむことができます。
再生してすぐに飛び込んでくるのは、アコギの低音サウンドを活かしたソウルフルなリフ。
4つ打ちのエレクトロニックなバスドラムにパーカッションが加わり音圧を増していく構成は「クール」な印象を聴き手に与えるものとなっています。
ルーツを感じさせるアコギの使い方に、現代のトレンドに合わせた洗練性をプラス。
泣きのポップスにとどまらず貪欲にサウンドを変化させていく彼の吸収力には驚かされます。
秦基博が見せる新たなステージに期待が高まる
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唯一無二の美しい声と圧倒的な作曲センスで国民アーティストへと登り詰めた秦基博。しかしそんなキャリアを持つ中でも彼は真摯に最新の音楽シーンと向き合い、常に新たなサウンドを求めて活動を続けています。
アコギと声でオーディエンスに想いを届けるシンガーソングライター。
彼のメッセージは持ち前の才能を通して最大限に増幅され私たちの耳に届けられています。
そんな秦基博が目指す新たなステージも、きっと私たちを楽しませてくれることでしょう。
秦基博のこれからの活動からも、目が離せませんね。
TEXT ヨギ イチロウ