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花と共に重ねる片想いの年月 一年中聴きたいコブクロ「桜」を考える

2020年3月18日にニューシングル『卒業』の発売が発表されて、より一層の注目を集めている国民的スーパーデュオ、コブクロ。この記事では、彼らの人気曲『桜』の歌詞から、コブクロの真骨頂ともいえる見返りを求めない美しい片想いについて考えます。

1年中聴きたい「桜の歌」

▲コブクロ - 桜

厳しい冬の寒さに耐えているときや、今まさに桜の季節を迎えたときに「桜の歌」を聴きたくなりますよね。

しかし、汗をかきながらかき氷を食べるような夏の日でも、十五夜を楽しむ秋の日でも、何故か聴きたくなる「桜の歌」があります。それがコブクロの『桜』です。

20年以上前、通りすがりにストリートライブで『桜』を聴いたことがきっかけで、コブクロの所属事務所の会長は二人を応援することに決めたそうです。

『桜』は、コブクロと所属事務所の会長を結びつけた運命の曲なのですね。

また、『桜』はコブクロが結成されるきっかけとなった曲でもあり、彼らを応援している多くのファンの方々もとても大切にしている曲だそうです。

そんな多くの人が応援したくなる魅力を持ったコブクロと『桜』。この記事では、この曲の魅力を歌詞から考察していきましょう。

強く清らかな片想いの悲しさ


『桜』の歌詞には「土」「太陽」「月」「風」「花」「雨」など、自然界にあるものがたくさん出てきて、それが生命の力強さを感じさせますよね。

情緒的でもあり、この曲の大きな魅力の一つになっています。

そしてコブクロの別の人気曲『赤い糸』のような明確なストーリーが示されていないため、聴く人によって解釈が違ったり、また同じ人にとっても「歳を重ねたら違う解釈ができるようになった」などの味わい深さもあります。

そんな大きな魅力を持った『桜』ですが、根底を流れているストーリーは、やはり片想いの悲しさや美しさではないでしょうか。

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桜の花びら散るたびに 届かぬ思いがまた一つ
涙と笑顔に消されてく そしてまた大人になった
追いかけるだけの悲しみは 強く清らかな悲しみは
いつまでも変わることの無い
無くさないで 君の中に 咲く Love・・・
≪桜 歌詞より抜粋≫
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「追いかけるだけの悲しみ」は返ってくるものがないのですから、きっと片想いのことですよね。

ストレートに「片想い」と表現せず、詩的に表現しているところに惹きつけられます。そして、その片想いを「清らか」と肯定的に捉えているところがコブクロらしいですよね。

残念ながら片想いがドロドロしたものになってしまう人もいます。例えば、片思いの相手が「自分の思い通りにならない」ことに腹を立て、愛情の裏返しで攻撃する人もいます。

でもコブクロの世界では、片想いは相手からの見返りを求めない美しいものとして表現されています。誰かを愛することそのものが、コブクロの世界ではとても美しいことのようです。


それは、コブクロが所属している事務所の会長をはじめ、多くの音楽関係者やファンの方々から愛され応援されていることと深いつながりがある気がします。

歌の主人公は桜の花が散る度に片想いの年月を重ねているのでしょうか。「いつまでも変わることの無い」片想いの悲しさは、心の中で花となって咲いているのですよね。

心の傷をいやす涙


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何も話さないで 言葉にならないはずさ
流した涙は雨となり 僕の心の傷いやす
≪桜 歌詞より抜粋≫
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言葉にならない、言葉にできないような心の傷。しかし、流した涙が雨となって心の傷をいやしていく。短いけれど、とても印象的なフレーズです。

「涙」が決してマイナスな意味を持つ単語にはなっておらず、心を耕し豊かにしていくことに欠かせない「雨」になっています。

その雨はきっと温かく、傷ついた「僕」の心をいやしていくのでしょう。

自分自身が感情を閉じ込めることなく、涙を流すことによって、結果的に心の傷もいやされていく。そんな人生の真理の一面が表されていますね。

一つ一つの片想いは心に咲く一輪花


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人はみな 心の岸辺に 手放したくない花がある
それはたくましい花じゃなく 儚く揺れる 一輪花
花びらの数と同じだけ 生きていく強さを感じる
嵐 吹く 風に打たれても やまない雨は無いはずと
≪桜 歌詞より抜粋≫
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追いかけるだけの想いも、実らなかったからといって意味のないものになるのではなく、心の岸辺に咲く一輪の花になります。

心の中に片想いの気持ちを一輪の花として持っていることは、時に不安になりますよね。

「片想いの気持ちを持ったままでよいのか。この気持ちを消すことが、相手のためにも自分のためにも良いのではないか。」そんな疑問を持ってしまいそうです。

また、片想いであるからこそ吹き付ける嵐もありますよね。片想いの相手に大切な人がいる可能性もあるし、これから出来る可能性もあります。

このような時は心の中に嵐が吹き荒れるでしょう。

しかし、ここでもコブクロは片想いを肯定的に捉えて「手放したくない花」「生きていく強さを感じる」と表現しています。

名前をつけたくなる一つしかない想い



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名もない花には名前を付けましょう この世に一つしかない
冬の寒さに打ちひしがれないように 誰かの声でまた起き上がれるように
≪桜 歌詞より抜粋≫
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最後の部分でも、心の中に咲く一輪の花に「名前をつけましょう」と呼び掛けています。例え片想いでも、その気持ちは「この世に一つしかない」大切なもの。名前をつけて愛おしむべきものなのですよね。

桜の道は未来へと続いていく


季節を問わずに聴きたいコブクロの『桜』は、曲の中では結果の出なかった「追いかけるだけ」の片想いも決して否定されることがなく「この世で一つしかない」大切な想いとして、一輪の花に例える温かさが感じられます。

その温かさに触れたくて、一年中この曲を聴いているのだと思います。

コブクロの『桜』は発売から10年後にシングル『未来』へとつながっていきます。

『未来』のジャケットは『桜』のジャケットをモチーフにしており、少し大人になった二人の姿を感じることができます。背筋がスッと伸びていてかっこいいですよね。

未来へと続く桜の道。これからも二人の道はずっと続いていくことでしょう。


TEXT 三田綾子

小渕健太郎は1977年3月13日生まれ。宮崎県出身。黒田俊介は1977年3月18日生まれ。大阪府出身。 ストリートライブ活動を通じて1998年9月にコブクロを結成。 2001年3月、ワーナーミュージック・ジャパンより「YELL~エール/Bell」でメジャーデビュー。 2006年のベスト・アルバム「ALL SINGLES···

この特集へのレビュー

女性

ひーちゃん

2020/02/27 14:08

ほんとに素晴らしい楽曲だと思います。詩と曲、そして彼らの温もりのある声、全てが溶け合ってます。
切ないけどその気持ちの尊さを感じます。
片想い…そして亡くした想いもあるように思います。

男性

アルベルト

2020/02/26 19:54

小渕さんは雨をマイナスなものと捉えない傾向がありますね。
ONE TIMES ONE でも「歓喜の雨」というフレーズがあります。
感性が豊かで、凄いです。

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