「卒業」は春の日差しのような暖かさ
令和初の卒業シーズンである2020年3月に、卒業生に温かなお祝いの気持ちを届ける歌が誕生しました。
それが、2020年3月18日にリリースされたコブクロの『卒業』です。この曲を聴いて、春の日差しのような暖かさを感じる人も多いのではないでしょうか。
コブクロらしさにあふれた『卒業』の歌詞の意味を考えていきましょう。
瑞々しいコブクロ・ワールドを味わおう
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あの日から どれだけの時を ここで重ねて来ただろう
着慣れない服を着て 並んでいた 広いこの教室
3月の川沿いを結ぶ 白いアーチ濡らす天気雨
あの日より少し寒いような 旅立ちの朝 賑やかな黒板
≪卒業 歌詞より抜粋≫
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きっと「あの日」とは入学式の日のことですよね。「着慣れない」制服を着ていたのでしょうか。初々しさが伝わってくる歌詞です。
4月の入学式の日より「少し寒いような」卒業式の日は、黒板に先生やクラスメイトたちがお祝いや感謝のメッセージを書いたのでしょう。
「賑やかな黒板」という言葉に嬉しさと切なさがギュッと詰まっていますよね。
この冒頭の部分だけで、自分も卒業式の日の教室にいるような気持ちになってきます。
コブクロといえば、数々の恋愛ソングでも有名ですよね。コブクロの作る恋愛ソングは見返りを求めない無償の愛を歌ったものが多く、”成熟した大人の包容力”を感じる人も多いのではないでしょうか。
そんなコブクロが、「卒業」に寄せた歌では、まるで昨日まで二人も教室にいたかのような瑞々しい感受性が輝く世界を展開させていきます。
あっという間にコブクロ・ワールドに惹きこまれていきますね。
教室での風景を大切にする温かさ
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今 消えてゆく この風景を
いつまでも思い出せるように 焼き付けようとしても
瞬きする度に こぼれてしまう
≪卒業 歌詞より抜粋≫
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「いつまでも思い出せるように焼き付けよう」と決心した教室の「風景」。
この歌の主人公は今見ている風景が、この瞬間から思い出に変わっていくことに気づいて、自分の中にその「風景」をとどめておこうとします。
でもうまくいかなくて、もどかしさを感じているのでしょう。主人公は瞬きすらしたくないのかもしれませんね。
歌の主人公にとっての「風景」とは「友達との思い出」と言い換えてもよいのかもしれません。
この『卒業』を聴くと温かい気持ちになるのは、主人公が友達との思い出を大切にしているからではないでしょうか。
友達を大切に想う温かい気持ちが、この曲を聴くと伝わってくるのでしょう。
瞬きすらしたくないと思うような風景を見ている主人公は、卒業式ならではの感情を味わっているのかもしれませんね。
人生に肯定的なところも温かい
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喧嘩の理由が君の優しさだったと 気付けなかった
あの日の涙
≪卒業 歌詞より抜粋≫
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優しさが瞬時にまっすぐ伝わるとは限りませんよね。
でも今は主人公に確実に伝わっています。だから優しさは相手に必ず伝わると信じられますね。
『卒業』を聴くと温かい気持ちになるのは、人生に対して肯定的なところが心地よいからでもある気がします。
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分厚いアルバムだけ抱え この部屋を出て行くよ
何一つ置いて行かないのに 何度も取りに帰るものがある
≪卒業 歌詞より抜粋≫
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たくさんの大切な思い出が詰まっているであろう「分厚いアルバム」を持って次の世界へと旅立っていく主人公。
「何度も取りに帰るもの」があるだけではなくて、何度も帰ってきたい場所もあるのでしょう。いつの間にか繋がっている絆を感じますね。
長く愛され歌われる卒業定番ソング
令和元年度を締めくくる2020年3月にリリースされた『卒業』。これからも長く愛され、歌い継がれていく新しい卒業定番ソングに出会えた幸せを感じます。
曲の終わりのピアノで奏でたチャイムも優しい音色でコブクロらしいです。
2020年3月は新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、卒業式が縮小されたり中止になったりした学校が多くあります。
なおさらたくさんの人に、この曲の温かさが届いて欲しいですね。
聴いているといつの間にか優しい気持ちになれるコブクロの『卒業』。新しい卒業ソングの誕生です。
TEXT 三田綾子