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【インタビュー】「それぞれで思いを馳せてほしい」sajiの最新作は架空の短編小説集 (1/2)

3人組バンドsajiが4月1日のエイプリルフールにミニアルバム『ハロー、エイプリル』をリリースする。本作は架空の短編小説集をコンセプトにして制作。出会いや別れなど心揺れる季節にぴったりの作品が完成した。

作詞と小説を書くことはまったく違う

──ミニアルバム『ハロー、エイプリル』は本をコンセプトにしているそうですが。

ヨシダタクミ:はい。今回は小説というか、短編小説をオムニバス形式で一冊の文庫本にまとめた、というイメージで作った作品なんです。


──『ハロー、エイプリル』というタイトルには、どんな思いが込められているのでしょうか?

ヨシダタクミ:リリース日が4月1日というのが先に決まっていたんです。僕らのキャリアの中でこういった節目というか、1個の記号になるようなリリース日は初めてで。もともと今回はコンセプトアルバムにしようと思っていたので、エイプリルフールにかけよう、と。

ただエイプリルフールにかけるにしても、「なぜこのタイトルなのか?」と考察してもらうところから始めようと思ったんですよ。
それから、ハローをつけた理由は、“ハロー”は誰かに向けていう言葉なので、誰に向けて歌っているのかは、曲で伝えようと思ったんです。


──ところで、なぜ短編小説といったアイディアが浮かんだのですか?

ヨシダタクミ:もともと僕がこのアルバムとは関係なく小説を書いていまして。普段歌詞を書いているとはいえ、小説は歌詞を書くのとはまったく違うんですよ。だから、いつかこのバンドでアルバムを出すとなった時に、単にアルバムをリリースするんじゃなくて、「一冊の本を書いて、その本について歌った曲を出したい」と思ったんです。

つまり「この曲をより深掘りしたのがこの本です」という形にしようと。もっと言うと、書店で並ぶ CD みたいなものを考えていたりもしました。そんな構想がずっと頭にあって、それを今回、このタイミングで取り入れようと思ったんです。


──小説を書くのと詞を書くことには、どんな違いがありますか?

ヨシダタクミ:歌詞を書く時は、前提として制約があるんですよ。例えばメロディ。例えば、タララララ~というメロディがあったら、ここに入る言葉は7文字ぐらいなんですよ。でも歌いたいことは決まっている。もしも歌いたい言葉が7文字におさまらなかった場合、言い方を考えなければいけないんです。

例えば“嘘つき”と歌いたくても、嘘つきは4文字だから足りない。じゃあ、嘘つきを別の言い方にしようとなったときに、たとえば「ハロー、エイプリル」と言うとおしゃれになる。歌詞を書くって、そういう作業なんですよ。


──なるほど。

ヨシダタクミ:伝えたい言葉を制約の中で選ばなくてはいけないんです。だからボキャブラリー勝負。逆に小説は伝えたいことを、どう読み手に伝わるように言うか。要は感情投入しやすい言葉に直さなきゃいけない。構成の仕方がまったく違うんです。


──そうですね。

ヨシダタクミ:僕は歌詞を書く時に物語を作るので、最初は“いける”と考えていたんです。でもいざ筆を走らせようとしたら、 “最初に何ていえばいいんだろう?”、と何から書こうか悩んでしまって。起床転結でいうと小説でよくあるパターンは、物語の結末を最初に言っちゃうんです。たとえば最初に最愛の人が死んだ所からつづる。

そしてなぜその人が死んだのか、という話を本編でするというのが、結構多い。でも歌詞って起承転結をちゃんと順序立てるんですよ。いきなりAメロで「あいつが死んだ」という「結」の部分を言われると、「え?」となるじゃないですか。


──-そうか。ある意味、四コマ漫画に似ていますね。

ヨシダタクミ:ああ、近いかもしれないです。四コマって物量が少なく感じるかもしれないけど、あれはもう制約の前提があるから、むしろ難しいらしいです。ライターさんも仕事柄そういう経験はあるんじゃないですか?


──キャッチコピーをつける時とか。

ヨシダタクミ:そう。限られた文字数の中でどう端的に表現するか。



──言葉を膨らませるのではなく、どう削ぎ落とすかですよね。そしてふさわしい言葉を探すのは、意外と楽しい作業で。

ユタニシンヤ:替え歌もそうかも。はまったら楽しいよね。

ヨシダタクミ:そうそう。替え歌があまり上手じゃない人って、言いたいことが先行した結果、グタグタになりがちですよね。メロディが違うとか、字余りとか。


──替え歌も言葉のセンスをどれだけ持っているかにかかっているか、なんですね。だけど一方、小説は言いたいことがメインだと。

ヨシダタクミ:後はどう伝わるかだと思うんですよ。小説って興味を引く、で終わってはいけないので。インタビューとか四コマ漫画や歌詞は、脳内補完が可能だから。「この曲って多分こういう曲だよね」とかできるじゃないですか。
でも小説っていうのは読後感が欲しいわけだから、「え? で?」となったら、ダメなんですよ。ちゃんと「はー、面白かった」にならないといけないんです。


ヨシダタクミ、名作に触れ始める

──ちなみにsajiの皆さんはどんな小説が好きですか?

ヨシダタクミ:僕はもともと小説を読まなかったんですよ。映画も見てなかった。でも今年から映画を見て、小説も太宰治とか宮沢賢治の名作と呼ばれるものを読み始めたんです。いろいろな人としゃべっている時に、最低限みんなが素養として押さえているものを知らないと「教養がない」と思われるじゃないですか。それは大人として寒いな、と思っておびえたんですよ(笑)。それでちょっと読み始めようと思って。ユタニくんは映画がすごい好きなので、お勧めの映画と定番を教えてもらいました。


──何をお勧めしたんですか?

ユタニシンヤ:『フォレスト・ガンプ/一期一会』とかお勧めしました。

ヨシダタクミ:タイトルは知っていたけれど、見たことがなかったので。

ユタニシンヤ:僕は逆に小説とか全然読まないですけど。

ヨシダタクミ:『人間失格』は面白かったですよ。映画(『人間失格 太宰治と3人の女たち』)もちょうど去年だっけ?

ユタニシンヤ:あ、見た!


──小説を読まなくても、映画で補完できてしまう、というのはありますよね。

ヨシダタクミ:そうだよね。原作がある映画は多いからね。

ヤマザキヨシミツ:小説は読む?

ユタニシンヤ:昔、『鬼武者』っていうゲームがあったんですけれど、それの小説があって読みました(笑)。それくらいかな。ほとんど読まないですね。


──映画の方がビジュアルもあるから。

ユタニシンヤ:そうですね。画面でストーリーを見たいので。

ヨシダタクミ:「鬼武者」をノベライズした本でしょ? 彼はそういう意味でいうと、全部教えてほしいタイプなのかもしれないですね。小説が好きな人っていうのは、やっぱり自分の頭の中で絵が浮かびますからね。主人公像とか。


──ヤマザキさんはどうですか。

ヤマザキヨシミツ:小説は飛行機とか移動のひまつぶしでしか読まないです。1冊、2冊くらいしか持っていないですけれど。ミステリーホラーしか読まないです(笑)。


──怖くならないですか?

ヤマザキヨシミツ:怖くないと、飽きちゃって読み続けられないですね。本はそんなに得意ではないので、そういう系じゃないと読めないです。


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北海道出身の3人組バンド。 2010年に「phatmans after school」を結成。全楽曲の作詞・作曲を手がけるVo.ヨシダタクミの透き通る歌声、圧倒的で叙情美溢れるメロディーライン、そして葛藤や憂いをストレートに表現した歌詞に、Gt.ユタニシンヤ、Ba.ヤマザキヨシミツのパフォーマンスが相乗効果を···

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