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映画「くちびるに歌を」は大人にこそ観てほしい名作
2015年に公開された『くちびるに歌を』という映画は、プロのミュージシャンをはじめ多くの大人たちの心を打つ作品として話題となりました。一体どんな映画なのか、詳しくご紹介しましょう。
原作は中田永一によるベストセラー小説
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映画『くちびるに歌を』は、中田永一による同名青春小説が原作です。
学校の定番ソングとなっている『手紙~拝啓 十五の君へ~』を作詞・作曲したシンガーソングライター、アンジェラ・アキのテレビドキュメンタリーを基に小説化されました。
中学校の合唱部をテーマとし、多感な十五歳の少年少女を描いた本作。
年齢にかかわりなく、誰もが抱える悩みや痛みに寄り添ってくれるような温かな作風が魅力です。
決して中高生のためだけの作品ではなく、かつて十五歳だった大人たちにも過去や今を振り返るきっかけをくれることでしょう。
実際に、この優しい物語に心を動かされた人が多く、2012年の小学館児童出版文化賞を受賞し、同年の本屋大賞では第四位にランクイン。
さらには読書メーターおすすめランキング第一位を獲得するなど、一躍ベストセラー作品に名を連ねました。
合唱が人生を紡ぐ成長物語
舞台は、長崎県・五島列島にある中学校。
この中学校の卒業生である元ピアニストの柏木ユリは、同級生の合唱部顧問・松山ハルコが産休に入る代わりに臨時教師として、母校に戻ってきます。
一年間の期限付きで合唱部の指導を始めますが、暗い表情でそっけなく、ピアノを弾こうともしない柏木に合唱部の部員たちは困惑。
加えて、女子生徒しかいなかった合唱部に美人のユリを目当てにした男子生徒が続々と入部したことで、女子生徒の不満が募ります。
そして追い打ちをかけるように、男女混声合唱で行われるNHK全国学校音楽コンクール長崎県大会への出場を柏木が独断で決めてしまい、合唱部の仲はどんどんこじれていくことに。
そんな中、柏木はコンクールの課題曲である『手紙~拝啓 十五の君へ~』に対する理解を深めるため、部員に十五年後の自分に向けた手紙を書くよう勧めました。
突然の提案にはじめは戸惑いを見せた部員たちですが、その手紙によってそれぞれが誰にも言えない悩みや心の傷を抱えていることが明るみになっていきます。
小さな島で音楽を通して行われる、教師と生徒との心の交流を描いた青春物語です。
音楽の価値を再認識するストーリー
映画『くちびるに歌を』の最大の見どころは、心が洗われるようなストーリーと美しい音楽。
温かみのある映像作品を多く手掛ける三木孝浩監督がメガホンを取り、心地よいピアノの旋律と生徒たちの豊かな混声合唱の歌声が、ストーリーを大いに盛り上げてくれます。
さらに、実力派をそろえた豪華なキャスト陣の演技にも注目です。
主演の柏木ユリ役を務めたのは、映画やドラマに引っ張りだこの新垣結衣。
本作のために猛練習したというピアノの演奏には、心を揺さぶられるでしょう。
生徒役は、歌の上手さよりも演技や歌唱に可能性を感じられることを基準にオーディションで選ばれました。
恒松祐里や葵わかな、佐野勇斗など、いまや次世代を担う若手たちの初々しい様子と、劇中での成長の模様に引き込まれていきます。
そして、音楽に向き合う人々を丁寧に描いているため、歌うことの楽しさや自分を表現することの価値を改めて見つめ直すことができるところも、この映画の大きな魅力です。
誰でも、励まされる曲や気分が盛り上がる曲をひとつは持っているのではないでしょうか。
そんな身近にある音楽というものが、どれほど人の人生を支えているのかを『くちびるに歌を』からは感じ取れるはずです。
その証拠に原作のみならず映画も、ぴあ映画初日満足度ランキングで第1位を獲得。ストーリーと歌声に涙が止まらないという口コミが後をたちません。
中高生も大人も、音楽が好きな人ならきっと想いがあふれるでしょう。
主題歌「手紙~拝啓 十五の君へ~」が胸に迫る
映画『くちびるに歌を』の主題歌は、アンジェラ・アキが歌う『手紙~拝啓 十五の君へ~』。
2008年のNHK全国学校音楽コンクールの課題曲として書き下した『手紙』を、自身の歌唱用にアレンジしたこの一曲は、多くの人の耳に残っていることでしょう。
コンクール用の曲ということもあり、流麗なピアノ伴奏と芯のあるメロディーラインが特徴です。
しっとりとした曲調でありながら、前進を促すような明るい演奏に力づけられます。
アンジェラ・アキ自身が受け取った十五歳の自分からの手紙をモチーフに制作された歌詞は、まさに映画の内容にぴったり。
十五歳の自分は誰にも話せない悩みを抱え、それでも何とか必死で生きているのです。そして、その悩みは未来の自分に宛てた手紙でしか吐露できません。
そんな過去の自分からの手紙に対し「大人の僕」は自分の声を信じるよう伝えます。
大人になってからの道も決して平坦ではないものの、自分の声を信じれば今を強く生きられるということです。
この繊細かつ力強い歌詞は、十五歳の部員たちと柏木ユリという女性の対話のようにも感じられます。
だからこそ、劇中でピアノの旋律と部員たちの歌声、歌詞が全て交わったときに、悩みながらも懸命に生きる様に胸を打たれるのかもしれません。
タレントの杏と足立梨花が出演したPVでは、過去の自分と未来の自分が語り合う様子が描かれていて、曲の魅力に一層引き込まれます。
混声合唱とは違う、アンジェラ・アキの表現力たっぷりの歌声も圧巻です。
映画「くちびるに歌を」を観れば音楽がもっと好きになる!
いくつになっても、人生には悩みがつきものです。それでも踏ん張って生きようとするとき、そばにはきっと心を支える音楽があるでしょう。
映画『くちびるに歌を』では、音楽の素晴らしさとともに自分を信じて生きることの大切さを学ぶことができると思います。
それはいま十五歳の人も、かつて十五歳だった人も変わりません。
頑張る人をそっと支え、背中を押してくれる映画『くちびるに歌を』は、必見の名作です。
TEXT MarSali