アニメとパラリンピックがコラボした「アニ×パラ」とは?
パラスポーツをもっと身近に、もっと楽しむためのプロジェクトとして、2017年11月よりNHKで放送がスタートした5分間アニメ『アニ×パラ〜あなたのヒーローは誰ですか〜』。『キャプテン翼』の高橋陽一、『弱虫ペダル』の渡辺航。
日本を代表する漫画家とアニメ監督らが、独自の世界観によるオリジナル作品で、ブラインドサッカーやパラサイクリングなど、パラスポーツの魅力を発信します。
各エピソードを彩る主題歌も人気アーティストが顔を揃え、5分間という短い時間の中で、それぞれのパラスポーツの魅力を伝えるために重要な役割を担っています。
阿部真央の新曲『READY GO』は、2020年3月30日からスタートした第9弾『ボッチャ×ひうらさとる編』のテーマソングとして書き下ろされました。
パラスポーツ「ボッチャ」を知る!
『READY GO』が主題歌の『ボッチャ×ひうらさとる編』で描かれたパラスポーツ「ボッチャ」をご存知でしょうか?
ヨーロッパ発祥の「ボッチャ(Boccia)」は、重度脳性麻痺などにより運動能力に障害のある方に向けて考案されたスポーツでパラリンピックの正式種目です。
個人、またはペア、チームで対戦し、ジャックボール(目標球)と呼ばれる白いボールに赤と青のボールを投げ合い、ジャックボールにどれだけ多く近づけるかを競うボッチャ。
障害によりボールが投げられなくても、勾配具の利用や介助者の協力により参加することが出来ます。
シンプルなルールで障害の有無に関わらず、子供からお年寄りまで男女問わず参加できるスポーツとして、世界各国で親しまれている競技でもあります。
阿部真央は『READY GO』とボッチャをどのようにリンクさせているのでしょうか。
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行き方を変え 道さえも変えて
配られているカードは 誰にも変えられないから
手玉も増やせないゲームならば 捌き方で勝負だ
そうだろ?
≪READY GO 歌詞より抜粋≫
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ボッチャは個人戦の場合1エンドで6球づつボールを投げ合い、4エンドの合計得点で勝負が決まります。ボールは投げるだけでなく、蹴る、転がすなどのアプローチも可能。
限られた球数の中でどうやってジャックボールに近づくかという戦略と、その狙い通りにボールを投入するテクニックが必要とされる奥深いゲームなのです。
この冒頭のフレーズからは、ボッチャの競技の魅力が生き生きと伝わって来ますよね。
ボッチャに重ねられた人生
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動き続ける的は 今目指すべき僕さ
≪READY GO 歌詞より抜粋≫
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『アニ×パラ』の公式サイトのインタビューで、阿部真央はボッチャが「人生とリンクする」と感じてこのフレーズを入れたと語っています。
ボッチャは自分のボールをジャックボールに当てて動かし、一瞬で形勢を逆転できるスポーツです。
自分のアイデア次第で未来が切り開かれるという意味で、彼女はボッチャと人生に共通点を感じたのかも知れませんね。
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ひとつずつ重ねてく そして
君だけの輝ける場所へ
READY GO 光が射すその方へ 今
≪READY GO 歌詞より抜粋≫
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自分なりの努力をひとつずつ重ねて行けば、その先にはきっと明るい未来が待っているだろう。だから、何かいい考えが浮かんだら恐れずに未来へ向かって今すぐ動きだそう。
この歌詞は、そう勇気づけてくれているのではないでしょうか。
ボッチャに見る真の多様性とは?
ドラマ化もされた『ホタルノヒカリ』の作者として人気の漫画家ひうらさとるが描くこの物語の大きなテーマが「ダイバーシティ(多様性)」です。
脳性麻痺の障害を持つ幼馴染の美穂と、成長するに連れお互いの違いを感じて距離が出来てしまった主人公の結衣。
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投げないボールが飛ぶわけないんだ 逃げているのは僕だ
≪READY GO 歌詞より抜粋≫
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このフレーズは、結衣が職場で「ダイバーシティ」をテーマにした仕事を任されながらも、美穂との関係を考えて最も多様性に欠けるのは自分ではないか、と悩む姿が表現されているように感じます。
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READY GO その手の先へ
≪READY GO 歌詞より抜粋≫
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ボッチャのボールを握った時、結衣は美穂の手の感触を思い出し、仕事へのアイデアを求めて久しぶりに連絡を取ります。
2人の離れてしまった「手」から始まったこの物語は、お互いの違いを恐れずそれを認めることで初めて「多様性」のある社会が生まれるんだよ、と伝えようとしているのかも知れません。
この物語と主題歌の『READY GO』は、老若男女が楽しめる多様性を持つボッチャを通して、手と手を取り合った先にある輝く未来へと、私たちを導いてくれるような気がします。
TEXT 岡倉綾子