TOP画像引用元 (Amazon)
そもそもなぜ「恋愛裁判」は開廷される事となったのか。
ボカロ史に残る名曲をいくつも生み出した、大人気ボカロP「40mP」。彼の7曲目のミリオン達成ソングが初音ミク歌唱の「恋愛裁判」です。
この曲はその高い物語性に注目を集め、小説化までされた大人気楽曲となっています。
曲の内容は、大切な恋人に対して、してはならない罪を犯した「僕」と、そんな「僕」に怒る「君」のさまを「裁判」にたとえた恋愛ソングです。
驚愕のラストに、多くの考察がなされてきました。
はたして「僕」と「君」の裁判の行く末に待っていた、衝撃的な結末とはなんなのか。
その結末を見る為に、まずは「恋愛裁判」が行われる事になった理由に迫ってみましょう。
----------------
Oh! No! No! No!
ちょっと魔がさしたんだ
そう、僕は君だけが全てさ
ねえ、情状酌量をください
僕独りじゃ生きてけない
≪恋愛裁判 歌詞より抜粋≫
----------------
「ちょっと魔がさしたんだ」と歌う「僕」。これが裁判を起こすきっかけになったと思われます。
続く歌詞では「君」に許しを乞う歌詞が綴られています。
ではこの「魔」とはなんなのか。そのヒントと思われるものが2番で歌われていました。
----------------
性格的な問題と一度だけの過ちで
君はもう戻らない
口先の弁護じゃもう許されない
≪恋愛裁判 歌詞より抜粋≫
----------------
どうやら「僕」の「性格的な問題」によって引き起こされた「一度だけの過ち」が、「僕」が起こしてしまった「魔」のようです。
恋愛の「過ち」と言えば、思い浮かぶものはただ1つ。そう「浮気」です。
思い返せば、1番の「僕」の言葉も、まるで「君」以外の相手がいた事を隠すような内容でした。
「君だけが全てさ」と歌う歌詞は、裏を返せば「君だけが全てじゃない」と相手に勘違いさせる何かが起きたという事でしょう。
さらに、実は1番には、このような歌詞もあります。
----------------
計画的な犯行のこのアリバイ工作も
君だけは騙せない
小手先の手品じゃ No! No! No!
≪恋愛裁判 歌詞より抜粋≫
----------------
どうやら彼は、この「過ち」を計画的にやっていたようです。
そしてこの事実に加え、さきほどの歌詞「性格的な問題」。つまり、彼には元から「浮気癖」なるものがあったと、考える事はできないでしょうか。
「性格的な問題」=「浮気癖」で起きた「過ち」=「浮気」。それが「僕」に「ちょっと魔がさして」犯した罪の正体でしょう。
けれども、その歌詞からわかるように、「君」だけは騙す事が出来なかったようです。
その結果、「僕」には有罪判決がくだされます。
はたして有罪判決となった「僕」は、自分の罪に対してどのような答えを導き出すのか。
彼が導き出した、自分の罪への償いをみてみましょう。
「僕」が導き出した「君」への答え
----------------
どこが完全犯罪?
君も僕も同じだけの悲しみを
愛した人 愛された人
互いを裁き合う宿命だから
≪恋愛裁判 歌詞より抜粋≫
----------------
Cメロに入った途端、それまでとは雰囲気がガラリと変わります。
いかにして自分を許してもらうかと、自己が中心的な考えを訴えていた僕が、「君」の抱えている想いに対しても目を向け始めるのです。
「恋愛裁判」のMVでは、Cメロに至るまでの「僕」の現状を観る事ができます。
そこには、牢屋に閉じ込められた「僕」が、悲しむ「君」の姿を見つめるシーンが描かれています。
推測するに、この間奏のシーンは悲しむ「君」に対して「僕」が様々な思いを巡らせらた時間なのではないでしょうか。
その結果、今までの彼の考え方に変化が起こります。そして次の大サビで、彼は「君」にこう告げるのです。
----------------
有罪判決
君は僕にどれくらいの罪を問う?
終身刑で償う覚悟
死ぬまで君だけを守るよ
≪恋愛裁判 歌詞より抜粋≫
----------------
「終身刑」それが彼が「君」に対して導き出した、自身への刑罰。
今まで刑を軽くしようともがいていだ彼が選んだのは、最も重たい刑罰でした。本気の反省と覚悟が感じられます。
しかし、そんな「僕」に待っていたのはなんと予想外の真実だったのです。
「君」も有罪!? 罪を犯していたのは「僕」だけじゃなかった!
----------------
恋愛裁判
君が僕に教えてくれた真実
偽りの涙の後で
密かに微笑んだ小悪魔
そう、君も「有罪」
≪恋愛裁判 歌詞より抜粋≫
----------------
歌の終わりで判明したのは「君」の「有罪」。
罪を犯していたのは「僕」だけじゃなかったのです。
では「君」がした罪とはなんなのでしょうか。
それを考えるヒントが「偽りの涙」です。
実は他にも、この歌詞に似た言葉が登場しています。それが1番のサビです。
----------------
まさに恋愛裁判
君は僕にどれくらいの罪を問う?
最終弁論 涙の後に君から告げられた
僕は「有罪」
≪恋愛裁判 歌詞より抜粋≫
----------------
ここで「君」は一度涙を流しています。
これは、言い訳をする「僕」に対して「君」が泣いているようにも見えます。
しかし大サビと似たフレーズであることもふまえると、この時点で「君」が流していた涙も偽りのように見えてきませんか。
すると見えてくるのは、ある一つの可能性です。
それは、浮気癖のある「僕」を本気で反省させる為に”あえて”涙を流した、というものです。
ここで先の間奏シーンを思い出しましょう。
牢屋の中に閉じ込められた彼は、その中にいる間、彼女の事だけを考え続けています。
裏を返せば、「君」だけの事しか考えなくなるように仕向けた、という風にも捉えられませんか?
「君」が本当に狙っていたのは、「僕」の思考の独占ではないでしょうか。
「偽りの涙」も、彼を反省させる為の策だったのかもしれません。
となると「君」の「有罪」とは、「僕」を自分だけのものにするために「騙した」事だと考えられます。
つまり、最初からずっと「僕」は「君」の手のひらの上で転がされていたという事です。
「惚れた弱み」「惚れたら負け」とはよく言いますが、正しくこの裁判は「君」に惚れた被告人=「僕」の負けだった、という事でしょう。
TEXT 勝哉エイミカ