孤独な少女の境遇とは
『ローリンガール』は2010年にwowaka(現実逃避P)が投稿した初音ミクオリジナル楽曲です。シンプルな一枚絵の動画に見覚えがある人も多いのではないでしょうか?
投稿されてから約10年がたった今でも再生回数を伸ばし続けており、さまざまな年代のボカロファンから愛されています。
楽曲の意味など、はっきりしたところは語られておらず、考えさせられるこの楽曲を歌詞から考察していきましょう。
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ロンリーガールはいつまでも
届かない夢見て
騒ぐ頭の中を掻き回して,掻き回して。
≪ローリンガール 歌詞より抜粋≫
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孤独を意味するロンリーと少女を指すガール、つまり孤独な少女です。
孤独、ということは少女は学校で孤立、頼れる人もおらず苛められていたのかもしれません。
孤独な少女には叶うはずもない夢がありました。
それは平穏で、友人となんでもないことで笑いあえるような学校生活なのかもしれません。
しかし現実では孤立し、苛められている。
その事実に対してなんで私が、という思いや苦しみなど、さまざまな感情が混ざり合っています。
----------------辛い毎日を「問題ない。」と自分に言い聞かせてやり過ごそうとします。
「問題ない。」と呟いて,
言葉は失われた?
もう失敗,もう失敗。
間違い探しに終われば,また,回るの!
≪ローリンガール 歌詞より抜粋≫
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しかし精神的には限界なのか、それ以外言葉が出てきません。
少女はどうすればこんな毎日から脱却できるのかと考え、思いついたことをやってみますが上手くいかず失敗します。
何がいけなかったのかを振り返って反省して、少女はもう一回またこの現状を変えるため行動し続けるのです。
見えた何かは死だった?
----------------少女は今日も間違いを繰り返していました。しかし何故かその顔は笑顔です。
もう一回,もう一回。
「私は今日も転がります。」と,
少女は言う 少女は言う
言葉に笑みを奏でながら!
≪ローリンガール 歌詞より抜粋≫
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どう足掻いても状況は悪化していく一方で、笑顔なのは違和感を感じます。
少女の心は壊れ始めていた、ということではないでしょうか。
自殺すれば開放されることを思いつき、もうすぐ楽になれると思っていたから笑顔だったのかもしれません。
----------------今まで「もう良いかい?」と声を掛けていただけだったのが少女が回り続けるのをここでやんわりと止めようとしています。
「もう良いかい? もう良いよ。そろそろ君も疲れたろう,ね。」
息を止めるの,今。
≪ローリンガール 歌詞より抜粋≫
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その声に最後甘えてか、少女は息を止(や)めました。
今まで息を止(と)めていたこととの違いは何なのでしょうか?
「息を止める」とは何か考える
息を止(と)めていた箇所は1番と2番の最初のサビです。
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「もう良いかい?」
「まだですよ,まだまだ先は見えないので。息を止めるの,今。」
≪ローリンガール 歌詞より抜粋≫
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「もう良いかい?」
「もう少し,もうすぐ何か見えるだろうと。息を止めるの,今。」
≪ローリンガール 歌詞より抜粋≫
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止(と)める、と止(や)める、では受け取る印象が違います。
前者の止(と)める、であれば一時的に我慢しているイメージですが、後者の止(や)める、であれば一時的ではなくずっと、永遠に断つ、というイメージが無いでしょうか?
ここで最後少女がどうしたか、というのは2つの説が浮かび上がってきます。
1つは自殺を選んで文字通り息をすることをやめた、という説。
「もう良いかい?」と今まで聞き続けていたのは俯瞰した視点で客観的に自分を見ていた自分との自問自答で、最後はもう十分がんばったから楽になってもいいんじゃないかと俯瞰していた自分と意見が一致、自殺を選んだのではないでしょうか。
もう1つは1人で孤独に頑張るのを止めた、という説。
「もう良いかい?」と聞いていた声は「君も」と少女と自分が他人である、と推測させる二人称を使っています。
声は少女を傍から見ていて心配していた第三者で、明らかに疲弊していく少女を見ていられずに、今まで止めはせず声を掛けていただけだったのを自分も見ていて辛いから、とやんわりと止めました。
それに対して今まで頑なに突っぱねていた少女もそこまで言われ自分は1人で頑張らなくてもいいんだと実感、1人で頑張るのをやめました。
様々な解釈がされている『ローリンガール』。
本当の意味は何なのか、ということは作者のwowakaにしかわかりません。
しかし、そのwowakaは2019年4月に急性心不全で亡くなりました。
『ローリンガール』など、wowakaの作り出してきた楽曲を長く聴き続けることがファンができる冥福の祈り方になるかもしれませんね。
TEXT Noah