投稿から10年が経過しても色褪せない魅力
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全然良いこともないし、ねえ
その手を引いてみようか?
散々躓いたダンスを、
そう、祭壇の上で踊るの?
≪ワールズエンド・ダンスホール 歌詞より抜粋≫
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ボカロ楽曲『ワールズエンド・ダンスホール』は『ローリンガール』『アンハッピーリフレイン』などで、著名なボカロPのwowakaによって2010年5月に投稿されました。
ニコニコ動画での投稿から34時間で10万回再生、1ヶ月で100万回再生を突破。
当時のボカロ楽曲の中でも、歴代3位を誇るほどの速さでミリオン再生を達成し、話題となりました。
そして10周年となる2019年には「ボカロ神話入り」と名付けられる、1000万回再生を達成しました。
楽曲の序盤は視点となる人物、主人公が誰かをダンスに誘うところから始まります。
MVでは、主人公のミクとライバルらしきルカの可愛らしいダンスを視聴することができます。
階段のその先にある「祭壇」という場所の表現は意味深に聞こえますが、ここではまだそこがどこなのか、なぜそこで踊る必要があるかは明かされていません。
本音と建前に覆われた人間関係
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はにかみながら怒ったって
目を伏せながら笑ったって
そんなの、どうせ、つまらないわ!」
ホップ・ステップで踊ろうか
世界の隅っこでワン・ツー
≪ワールズエンド・ダンスホール 歌詞より抜粋≫
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サビの前では、楽曲の核心となる部分に触れられています。
「はにかみながら怒る」「目を伏せながら笑う」というのは、内心の感情と実際に外側へと向ける顔が違っている矛盾を表現したと考えられます。
作者は、こういった「本音と建前」という矛盾に対して不満があるようです。
また、サビでは「世界の隅っこでワン・ツー」という歌詞があります。
世界の隅っこというのはどこでしょうか?周囲から離れた場所であることは想像できます。
「全然良いこともないし」「顔も合わさずに毛嫌う」から、前の歌詞と合わせて考えてみると、主人公はあまり好かれておらず、孤立している人間という姿が浮かび上がってきます。
自分の憎む「世界」は美しい?醜い?
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なんて綺麗な眺めなんでしょうか!
ここから見える風景
きっと何一つ変わらないから、
枯れた地面を這うの。
≪ワールズエンド・ダンスホール 歌詞より抜粋≫
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2番の歌詞では、踊りに身を任せた結果、そこから見える景色について触れています。
先ほど述べた「世界」から離れ、主人公が踊っている時に見えるのは「綺麗な眺め」です。
それは自分の憎む場所から離れた、開放感からきたものかも知れません。
しかし、最後には主人公は「きっと何一つ変わらない」とその景色を悲観視しています。
そこにあるのは、枯れた地面だからです。
自分が憎む世界から離れたからと言って、その場所が美しくなるわけでも、自分が救われるわけでもないと解釈することができます。
ラストは意味深な表現で締めくくられる
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さよなら、お元気で。
終わる世界に言う
≪ワールズエンド・ダンスホール 歌詞より抜粋≫
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ラストは「さよなら」と「終わる世界」という言葉で締めくくられます。
この部分の解釈に関しては難しいところがあります。
これは直接的に自殺をほのめかしているとも取れますし、生まれ変わったとも受け取ることができます。
また「終わる世界」という表現にも注目です。最初の方にもありますが、世界という言葉をどう解釈するかによって『ワールドエンド・ダンスホール』の楽曲が持つ意味合いも、変わってくるでしょう。
主観は、主人公にとっての「世界」とは、自分以外の大多数が暮らしている場所と考察しています。
マイノリティである主人公は、マジョリティからはじき出されている印象を受けたからです。
みなさんの印象はどうだったでしょうか。
今回は、ボカロ楽曲『ワールドエンド・ダンスホール』の歌詞について考察してみました。
気になった方は、ぜひ楽曲を聴いて歌詞の意味を解釈してみてくださいね。
TEXT 空野カケル