劣等感塗れの人の心に刺さる中毒ソング!?
2016年に公開された、大人気ボカロP「Neru」のオリジナル楽曲『脱法ロック』。楽曲の曲調と混沌としたMVの演出具合から「1日に4、5回はリピートしないといけなくなってしまった」と、まるで麻薬中毒のような感想も寄せられている楽曲。
そんなこの曲がもつ「中毒性」の理由を歌詞から考察してみましょう。
まずは主人公がどのような人物なのか見ていきます。
----------------
千鳥足でざわつくパーティーピーポーはファックオフ
どうして渋っている 早く音量を上げてくれ
エビバリ
現実逃避に縋れ 縋れ
負け犬になって吠えろ 吠えろ
それが 脱法ロックの礼法なんですわ
≪脱法ロック 歌詞より抜粋≫
----------------
1番Aメロの歌詞では、どうやら主人公は人生に投げやりになっているようですね。
「バカは死なんと治りゃしない」というのは、自分の事を皮肉っているのでしょうか。
『脱法ロック』に手を出したのは、そんな「どうにでもなれ」といった気持ちからのものだったのかもしれません。
さらには『脱法ロック』に手を出してしまう人達の特徴と思われるものが、サビの前半部分の歌詞でも綴られていました。
----------------
ウェルカムトゥザファッキンサーカス 脳内はパリラパリラ
グッモーニンミスタークレイジー 気分はどうだい
ただ 本番はここからです
ノイズが混じっている
≪脱法ロック 歌詞より抜粋≫
----------------
どうやら『脱法ロック』は「負け犬」のような人生や「理想像」に執着してしまうような「劣等感」に塗れた人生を送っている人達が、こぞってハマってしまうもののようです。
主人公自身も馬鹿な自分に嫌気がさしているようですし、この特徴に見事に当てはまると思われます。
つまり『脱法ロック』とは、そんな劣等感にまみれた人生を送って来た人々の心に刺さるロックソングだという事になります。
では、そんな人々の行く末を見てみましょう。
中毒になった人々の末路
----------------
最底辺に沈め 沈め
社会不適合者に堕ちろ 堕ちろ
自殺点ばっか決めろ 決めろ
それが 脱法ロックの礼法なんですわ
年中イキっていこう~
≪脱法ロック 歌詞より抜粋≫
----------------
1番Bメロの歌詞では、天国という幻覚を見ているような歌詞。
主人公が『脱法ロック』にハマってしまった事がわかります。
続くBメロでも「さらに音量を上げてくれ」と『脱法ロック』を求めている様が歌われており、どうやら主人公は完全に『脱法ロック』の世界に呑まれてしまったようです。
2番では、それがさらに加速しています。
----------------
それが 脱法ロックの礼法なんですわ
最底辺に沈め 沈め
社会不適合者に堕ちろ 堕ちろ
自殺点ばっか決めろ 決めろ
それが 脱法ロックの礼法なんですわ
愛想なんていらない いらない
化学反応を起こせ 起こせ
プライドはポイと捨てろ 捨てろ
それが 脱法ロックの礼法なんですわ
体裁なんて知らない 知らない
ボリューム一つも下げない 下げない
のべつ幕無しにキメろ キメろ
≪脱法ロック 歌詞より抜粋≫
----------------
1番とは比べ物にならない程、怪しい言葉遣いです。
後半のBメロの歌詞では「ノイズ」も混じり始め、幻聴まで聴こえているようです。
しかし、それを消し飛ばす為なのか、主人公はまた『脱法ロック』を求めてしまいます。文字通りの悪循環です。
そんな『脱法ロック』にハマッた人々を煽るかのように、サビの後半ではこのように歌われています。
----------------
≪脱法ロック 歌詞より抜粋≫
----------------
「最底辺」「社会不適合者」というのは、前半の歌詞にあった「負け犬」「理想像」の対となっている言葉でしょう。
「負け犬である事を認めてしまえ」「理想像など諦めて社会不適合者になってしまえ」とそう歌っているようです。
悪魔の囁きのような歌詞ですが、それが『脱法ロック』が見せる効能だということでしょう。
劣等感がさらに塗れ募っていくような悪作用です。しかし人々はその作用に中毒的にハマっていきます。それはなぜなのでしょうか。
真の効能とは
人々が『脱法ロック』にハマってしまう理由。それに関わる重要な歌詞が、楽曲の出だしで歌われていました。
----------------
首吊る前に アンプを繋いで
ストラト背負って クラプトン弾いて
テレキャス持った 学生をシバいて
さあ トリップしよう 愛すべき世界へ
はーなんて時代に 生まれたもんだ
ドラえもんは居ないし ポッケは無いし
バカは死なんと治りゃしないし
もう どうにでもなれ
≪脱法ロック 歌詞より抜粋≫
----------------
注目は「首吊る前に」という歌詞。
続く「アンプを繋いで」といった歌詞も含めて考察すると、どうやら自殺を図ろうとしていた人物に「死ぬ前にこの曲を聴いてくれ」と言っているようです。
つまり、この曲が一人の人物の「自殺を食い止めた」という事になります。
思えば『脱法ロック』にハマる人達は皆、劣等感にまみれており、いつその劣等感を理由に自殺をしてもおかしくない人々だともいえます。
しかしこの楽曲にハマった事で、彼らは今まで背負ってきた劣等感を全て捨て去る事に成功しています。
負け犬である事を認めれば気持ちも楽になりますし、こだわっていた理想像を捨てれば肩の荷が降りたような気持ちになるはずです。
そう考えると『脱法ロック』は何も間違った事はしていないし、むしろ人々の命を救っている楽曲だという事になります。
さらに最後は、こう歌われています。
----------------
≪脱法ロック 歌詞より抜粋≫
----------------
『脱法ロック』を使って気分がよくなった結果「年中イキっていこう」とテンションをあげている様が想像できます。
しかし字だけを見ると「生きる」という字に直す事もできます。
すると、この最後の歌詞は「年中生きっていこう」と前向きで励ましのあるものに見えてはこないでしょうか。
もしかしたらこの楽曲の真の効能はここにあるとすれば、人々が真の『脱法ロック』にハマる理由が見えてきましたね。
なんにせよ、この楽曲にハマってリピートを続けてしまう内は、人々は生き続けるでしょう。
そういう意味でも「生きる」力を『脱法ロック』が、聴く人に与えてくれているのです。
TEXT 勝哉エイミカ