宝石の名がつけられた米津玄師の楽曲
フローライトという宝石をご存知だろうか。
別名ほたる石、とも呼ばれ、パワーストーンとしても人気がある。その意味は「解き放つ」。子どものように自由で無邪気な発想をもたらすとされている。
この宝石の名前をつけられた曲が、米津玄師の『フローライト』だ。
収録アルバムのタイトル『Bremen』は、童話の「ブレーメンの音楽隊」からとったもの。動物たちがブレーメンを目指して旅をはじめるというような物語だが、このアルバムにも同じように新しい場所に向かって動きはじめる様を感じさせる曲が多い。
フローライト
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君が街を発つ前の日に 僕にくれたお守り
それが今も輝いたまま 君は旅に出ていった
≪フローライト 歌詞より抜粋≫
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ここで言われているお守りこそがフローライト。しかしそれをくれた君はもう旅に出てしまい、会うことはできない。
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君が思うよりも君は 僕の日々を変えたんだ
二人でいる夜の闇が あんなに心地いいなんて
この世界のすべてを狭めたのは 自分自身ってことを
君に教わったから
≪フローライト 歌詞より抜粋≫
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例えば、未知の生物に遭遇したとする。大人であれば、知らないものは怖い、とみなして逃げてしまう。
だが小さい子どもならどうだろう。何が安全で何が危険か判断がつかない、だから知らないものに対しては、もっと知るために自分から近づいていく。
こうした純粋な好奇心や自由な発想というものは、大人になるにつれて徐々に失ってしまう。自分もまたそういう状況に陥ってしまっているのに、ひとりでは気づくことが難しい。
しかし君は好奇心旺盛でひとつところに留まらない人だ。
知らないものが怖いものだなんて誰が決めたの?と言わんばかりに僕をたくさんの場所へ連れて行く。そして僕はかつて持っていたはずの好奇心を取り戻し、自分の世界を閉ざしていたのが自分自身だったことに気づいた。
つまり「君」こそが、僕にとってはフローライトと同じ力を持っているのだ。
君の存在の大きさ
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フローライト こんなものが
世界で一番輝いて見えるのは
フローライト きっと君が
大切でいる何よりの証だろう
確かめていたんだよ僕らは ずっと目には見えないものを
ふいにそれは何かを通して 再び出会う
≪フローライト 歌詞より抜粋≫
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手にとったフローライトを見つめて微笑む姿が目に浮かぶ。何か全く違うものから特定の人を思い出すというのは珍しくないが、僕にとってはこの宝石がきっかけになった。
こんなもの、と言うくらいだから普段宝石にはさして興味がないはずだ。それでも世界で一番と言い切るところが、君の存在の大きさを物語っている。
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夜が明ければ陽が昇る 道は永遠に続く
素敵な魔法で溢れてる 僕らは今を生きている
≪フローライト 歌詞より抜粋≫
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窮屈だった世界は君とフローライトの力によって広く、新しいものに変わった。夜が明けた世界は温かく素敵な魔法で溢れている。どこかへ旅に出るための道はずっと続いているけれど、それもきっとフローライトが照らしてくれるに違いないのだ。
●『フローライト』/ 米津玄師
TEXT:asta