弱い人間だからこそ強くなりたいと願う
オーラルは人間のリアルな感情を大切にしているため、それらが描かれている曲がたくさんあります。
他のバンドには真似出来ないような人間のデリケートな部分や、敬遠されがちなダークな感情もまっすぐに歌で表現してくれるからこそ、たくさんの人の心をグッと掴んでいるのでしょう。
たくさんある曲の中でも”自分の弱さ”を描いている楽曲がたくさんあります。
『Slowly but surely I go on』は、4月に発売されたアルバム『SUCK MY WORLD』の中でも特に”自分の弱さ”について描かれています。
そんな弱さの根源はどこから来ているのでしょうか?
ロックというと、強い人が鳴らしているイメージがありますよね。
でもボーカルの山中拓也は、自分が弱いからロックを鳴らしていると言っています。
弱いからこそロックを鳴らすということは、心のどこかで強さを求めているからなのかもしれませんね。
自分の弱さというのはなかなか認めにくいものですが、本人は自分の弱さを認め開示しています。
そんな風に弱い自分を認めていることから、本人自身も一度は「強くなりたい。」と願ったことがあるのかもしれません。
だからこそ、弱い人間が抱く様々な感情をリアルなままに表現し、寄り添うことが出来る歌詞を生み出せるのではないでしょうか。
自分自身に後悔を繰り返している。
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僕が僕であることに意味を
求めすぎた 期待したかな
誰かが犯した罪と罰も
黙ることで許せたかい
≪Slowly but surely I go on 歌詞より抜粋≫
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みなさんも親や「あなたはこう生きなさい!」「あなたはそんなことしないよね?」と理想や期待を相手に決められた経験はありませんか?
主人公も親や友達、上司など、他者に決められた理想や大きな期待を抱かれたのでしょう。
何度も自分の気持ちを言おうとしては飲み込んでしまうということを何度も繰り返していたけど、今日は思い切って自分の本当の気持ちを相手に伝えたのだと思います。
だからこそ「誰かが罪や罰を犯してもあなたは黙っていられるの?自分の本音をずっと黙ったままでいいの?」と私たちに問いかけているのではないでしょうか。
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あぁ 生きてる自分を
恥じらいまた隠してしまうんだろう
自分に嘘を またつくんだろう
≪Slowly but surely I go on 歌詞より抜粋≫
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自分に対して「またこんな風に生きてしまった…」「こうやってまた自分に嘘をついてしまった…」と後悔しているように思えます。
生きている自分=本当の自分を出すことを恥ずかしいと思ってしまい、隠してしまう。
それがまた自分に嘘をついてしまっているということになるのでしょう。
”自分にまた嘘をつくんだろう”ということから、主人公はこのように何度も自分に嘘をついて来たのだと思います。
そんな主人公は、自分にまた嘘をつき理想の生き方が出来ない弱い自分が嫌いだということも感じられます。
だからこんな弱い僕を許してほしい。
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あぁ 時に僕は他人を傷つけ
痛み嘆いてるのに
繰り返した 叫んでいた
≪Slowly but surely I go on 歌詞より抜粋≫
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人間誰しもが生きていれば誰かを傷付けてしまうことはありますよね。
もしかしたら、相手を傷つけてしまう多くの原因は自分の弱さかもしれません。
きっと主人公は自分の弱さから人を繰り返し傷付けてしまったのでしょう。
ここでは「痛み嘆いている」と表現されていますが、傷付けた相手と傷付けてしまった自分の2人のことを指しているように感じます。
もし相手を平気で傷付けることが出来るのなら、傷付けたことに対して何にも感じないはずです。
傷付けた相手以上に自分が傷付けてしまったことの方が、もしかしたら心の痛みは大きいのかもしれません。
その痛みと、弱い自分のせいで心に限界を感じ叫んでしまったのではないでしょうか。
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どんな言葉の
奥を辿っても
Love is everything, I found
I always tried to seek a fault
結局僕は
愛を探していた
Slowly but surely I go on
こんな弱い僕を
許してほしい
≪Slowly but surely I go on 歌詞より抜粋≫
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”Love is everything、I found I always tried to seek a fault”は、日本語にすると”愛こそすべて、私はいつも欠点を探そうとしていた。”という意味になります。
きっと、どんな言葉の奥深くには愛があるのでしょう。
でも、愛ある言葉を言われたとしても主人公は自分の欠点ばかり探そうとしてしまう。
それもまた自分の弱さからなのではないでしょうか。
さて、ここでやっと「こんな弱い僕を許してほしい」というワードが出てきます。
傷付けた経験を経て人の言葉には愛があることに気付いた主人公は、自分は弱い人間だということを認められたのでしょう。
自分にとって決意した今日が最初の日。
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願う今日を
絶やさぬよう明日を
I’ll be braver than before
Don’t give up and I must go
誓うそっと
枯れないようずっと
Slowly but surely I go on
照らしていくはずさ
これがFirst Day
≪Slowly but surely I go on 歌詞より抜粋≫
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この歌詞の部分は曲の中で3回出てきます。その都度主人公は願い、そして誓っているのでしょう。
「I’ll be braver than before Don’t give up and I must go」を日本語に訳してみると「私は前よりも強くなっているだろう、だから諦めないで、そして前に進むべき。」という意味になり、とても強いメッセージ性を感じます。
また何かを訴えているようにも感じられますよね。
少しづつあなたは強くなっているから、諦めなければきっと人は強くなれるという意味なのではないでしょうか。
そしてもう1つ大事なワード、この曲名になっている『Slowly but surely I go on』の歌詞が登場します。
『Slowly but surely I go on』は日本語に訳すと「ゆっくりだが確実に進む。」という意味になります。
今日が、主人公がいままでの弱い自分を変えようとゆっくり前に進むことを誓った最初の日なのでしょう。
「あなたなら前よりも強くなっているから大丈夫。ゆっくり進めば必ず強くなれるからね。」そんなふうに背中を押してくれているような気がしませんか?
ボーカルの山中拓也は『Slowly but surely I go on』をTwitterで「歌詞も合わせて読んでほしいです。
僕みたいな想いを抱えてる人がきっといると思います。少しでも楽になってくれれば嬉しいです。」とコメントしていました。
強くなりたい。と思ってもなかなか強くなれない自分に嫌になったことや、弱い自分が嫌いになったことはありませんか?
そんなあなたに心から寄り添い、力になってくれる1曲です。
ぜひみなさんも歌詞を見ながらじっくりと『Slowly but surely I go on』を聴いてみてはいかがでしょうか?
TEXT 萌依
2010年奈良にて結成。人間の闇の部分に目を背けずに音と言葉を巧みに操る唯一無二のロックバンド。 メンバーのキャラクターが映えるライブパフォーマンスを武器に全国の野外フェスに軒並み出演。 2017年6月には初の日本武道館公演、2018年2月には地元関西にて大阪城ホール公演を開催し両日と···