画像引用元 (Amazon)
史上最悪の麻薬王の想像を絶する人生に惹かれる!
『ナルコス 大統領を目指した麻薬王』は、動画配信サービスのNetflixで2015年から配信されているオリジナルドラマシリーズです。
コロンビア最大の麻薬密売組織を率いた麻薬王、パブロ・エスコバルの実話を基に制作されています。
当初は映画化される予定だったものの、濃密な内容が映画尺に収まりきらないということで、Netflixでのシリーズ化が決定されたそうです。
これまでに、コロンビアでの麻薬戦争を描くシーズン1~3と、その前日譚となるメキシコの麻薬戦争を描く『ナルコス メキシコ編』のシーズン2まで配信されています。
実話とは思えない壮絶な歴史とエスコバルの人物像に惹かれるファンが多く、絶大な人気を獲得しました。
ゴールデングローブ賞とプライムタイム・エミー賞にノミネートも果たし、映像業界からの注目度も高い作品です。
思わず見入ってしまう本作の面白さを、あらすじや見どころから紹介します。
コロンビアの麻薬組織とアメリカの麻薬取締局の激しい攻防戦
パブロ・エスコバルは、コロンビアでメデジン・カルテルという麻薬密売組織を創設した人物。
1970年代以降、アメリカの麻薬取締局が横行する麻薬の密売に手を焼く一方で、彼は麻薬で巨万の富を築いていました。
そんな彼にチリの密売人が近づき、コカインの取引を持ちかけてきます。
野心家であり、やり手の彼はコカイン業界でも頭角を表します。
自身の邪魔になり得る現地の警察やマスコミは、買収と恐喝によって自分の手の内に入れ、アメリカへ大量にコカインを密輸していくのでした。
アメリカ国内で麻薬中毒者が急増したことを受け、麻薬取締局のスティーブ・マーフィー捜査官がコロンビアに到着。
現地の警察や軍と手を組み、メデジン・カルテルを一掃しようとしますが、麻薬王と呼ばれる男ですから一筋縄ではいきません。
焦る捜査当局には目もくれず、彼は麻薬密売人でありながらも政界にまで参入。
非道なやり口で自身の野望を実現させようとします。
麻薬取締局捜査官の視点で追いかける、史上最悪の麻薬王と恐れられた男の半生に迫ります。
キャストのリアルすぎる演技に魅入られる
本作は、キャストの演技にも注目が集まっています。
主人公のパブロ・エスコバル役を演じるのは、ブラジルの人気俳優であるヴァグネル・モウラ。
エスコバルの人物像に近づくため、体重を増やしたりスペイン語を習得するために猛勉強するなど、入念な役作りを行ったそうです。
麻薬王の持つ危険な雰囲気を大胆かつ繊細に演じ、世界を脅かした人物のキャラクター像を強烈に印象付けました。
エスコバルを追う捜査官のスティーブ・マーフィー役は、モデル出身で注目度の高い俳優のボイド・ホルブルックが演じています。
役作りのために麻薬捜査局の本部を訪れ、本人に会って実際の話を聞いたり、訓練にも参加したそうです。
本人と交流を持つことで人物像が明確になり、観る人にとって身近な人間味のあるキャラクターを作り上げることに成功しています。
突拍子もないと思える出来事が、出演する俳優陣のリアルな演技によって現実感が増し、ストーリーをより興味深く知ることができるでしょう。
壮絶な犯罪ドラマの裏にあるアンバランスな善と悪
本作の一番の面白さは、エスコバルの人物像にあると言えるでしょう。
持ち前の頭脳で警察の追跡を交わし、運も味方につける圧倒的な力を見せつけられます。
時には人の命を顧みない非道な選択をし、躊躇なく行動に移す冷徹さもあります。
これだけではただの残虐な悪人という印象ですが、実は彼には家族思いという一面も。
愛人がいながらも、いつまでも新婚のように妻に愛情を向け、まだ幼い2人の子供のことを本当に大切に思っています。
それだけでなく、麻薬によって世界第7位にまでなった財力を使い、慈善事業やボランティア団体への寄付など、地域貢献にも積極的。
相対するはずの2つの顔を持ちながらも、どちらにも全力で取り組む姿は清々しいほどです。
凶悪な麻薬王もただの1人の人間であるということ理解でき、その真っ直ぐな姿勢に次第に惹かれていくファンが多くいます。
そして、そんなエスコバルと麻薬捜査局の攻防にハラハラさせられます。
悪と正義という分かりやすい構図で、普段犯罪ドラマを観ない人でもストーリーに入り込みやすいことが特徴です。
その一方で、麻薬捜査官が完全に正義と言い難い瞬間もあります。
何としても麻薬組織を壊滅させようとするあまり、人権を無視した行動に出るのです。
そこあるのは警察の威信とプライド、家族や仲間を殺されたことへの復讐心。
両者はお互いの狂気に即発されたかのように、まるで戦争のような激しさでぶつかり合います。
かたや慈善事業を行う麻薬王と、かたや非道な方法で正義を貫く捜査官。
どちらの行為を認めていいのか分からなくなりながらも、物語の展開に思わず見入ってしまうでしょう。
本作は悪を制圧するための解決策を見い出す作品ではなく、これまでの歴史の事実を紐解く内容だからこそ、純粋な目線でストーリーを追うことができます。
「Tuyo」がオープニングを印象的に彩る!
本作で多くのファンに評価されている人気の高いテーマ曲は、ブラジルの歌手ホドリゴ・アマランチが手掛ける『Tuyo』です。
哀愁を感じる曲調に引き込まれ、ラテン・ミュージックらしいリズム感で、秘めた情熱がにじみ出ているような印象を受けます。
ゆったりとした歌声が心地よく耳に残り、これから始まる怒涛のストーリーを前に心を落ち着かせてくれるでしょう。
タイトルの『Tuyo』はスペイン語で「あなたの」という意味があり、歌詞も全編スペイン語です。
内容は、いくつもの比喩表現を用いて2人の関係性を表したもので、印象的な「それはあなたのものになる」という意味のフレーズで締めくくられます。
エスコバル本人が映る当時のニュース映像などを取り込んだオープニング映像と共に流れるため、様々な解釈ができる歌詞となっています。
暗く危険な雰囲気が漂う本作の世界観と絶妙にマッチし、ドラマを盛り上げてくれる1曲です。
「ナルコス」は人の本質を鮮やかに描く名作!
Netflixオリジナルドラマ『ナルコス』は、世界を脅かした麻薬王を描きつつ、人の本質を暴く作品です。
誰でも一度や二度、見返りを求めて人に親切にしたり、反対に良かれと思ってした行動で相手を傷つけたことがあるのではないでしょうか、
善と悪は表裏一体で、明確に分けることがとても難しいということを、本作を通して痛感するはずです。
何が正しく、何が間違っているかという自分の考え方を改めて見つめるきっかけになるでしょう。
ネット配信ドラマだからこそ実現した『ナルコス』の過激でリアルな歴史に触れてみてください。
TEXT MarSali