これぞ三谷ワールド!大晦日のホテルは大忙し
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2006年公開の映画『THE有頂天ホテル』は、喜劇の天才と名高い三谷幸喜が監督と脚本を務める映画第3作目。
ユニークなタイトルは、映画「有頂天時代」と「グランド・ホテル」の2作を脚本のモチーフにしたことから付けられたそうです。
日本アカデミー賞の11部門で優秀賞を受賞する高評価で、興行収入は60億円を突破。
三谷幸喜監督作品で歴代1位を記録する傑作と呼べる本作について、あらすじや見どころを紹介します。
思わぬ騒動が起きた老舗ホテルは無事年越しを祝えるのか?
大晦日を迎えた老舗の高級ホテル・アバンティ。
新年まであと2時間と迫る中、副支配人の新堂平吉を始めとする従業員たちは、支配人が発案した年越しのカウントダウンパーティーの準備に追われています。
その裏では、夢を諦めたベルボーイ、シングルマザーの客室係、元妻に偶然再会した副支配人が複雑な思いで業務にあたっていました。
さらに宿泊客も、歌いたい歌を歌わせてもらえない歌手、汚職問題でマスコミから逃げ回る国会議員、会社社長の愛人、自殺したい大物演歌歌手など、多種多様な悩みを抱える人物が集まっています。
従業員と宿泊客の様々な事情を抱えたホテルの大晦日は平穏に終わらず、予期せぬアクシデントが各所で勃発する事態に。
果たして、無事に年越しのカウントダウンを行うことができるのか。
1年の最後に老舗ホテルに集まった人生に行き詰まった人々が、新たな希望を見つける群像劇です。
豪華オールキャストで見逃し厳禁!
本作は「オールキャスト・ムービー」と呼ばれるほど、超豪華なキャストが集結していることでも話題です。
主演の役所広司をはじめ、佐藤浩市、香取慎吾、西田敏行、梶原善、戸田恵子など三谷幸喜作品でお馴染みの俳優陣が物語を動かします。
さらに、伊東四朗、生瀬勝久、松たか子、篠原涼子、堀内敬子、YOUといった映画界が誇る実力派俳優陣が共演。
三谷幸喜が描く、クセが強いのに愛らしいキャラクターをのびのびと演じ、現場の楽しい空気感が伝わってくる作品となっています。
作り込まれた世界観と人間味あふれるキャラクターが魅力
本作は三谷幸喜作品らしい緻密に作り込まれた世界観が見どころです。
その世界観を支えるのが、本作のために造られたという日本最大スケールのホテルのセットや、細かい部分にも手を抜かない美術。
三谷幸喜自身がホテルを取材して「新旧がうまく融合した由緒あるホテル」をイメージしたそうです。
そのイメージ通り、老舗ホテルにふさわしい温かみのある懐かしさと、現代の雰囲気を取り入れた新しさが絶妙にマッチ。
そして、宿泊客を最大限もてなそうと努めるホテルマンの心意気が、従業員の働きやホテルの風景に映し出されています。
趣があり居心地の良さそうな空間に、このホテルに泊まってみたいと感じた人も少なくないでしょう。
そんなホテルで起こるのは、あり得ないような出来事の連続。
しかし、それぞれのキャラクターが個性豊かで人間味にあふれているので、不思議と親近感が湧いてくるでしょう。
騒がしいほどに様々なことが一度に起きてしまうストーリーは、境遇の違う人たちが集まるホテルという空間ならでは。
宿泊客の知らないところで行われているホテルの裏側や、宿泊客が持っている秘密を覗き見するような感覚が面白い作品です。
自分もその場で見守っているような臨場感で、共感したり驚いたりしながら、1つ1つのエピソードを追うことができます。
さらに、無関係に思えたエピソードがきれいに繋がっていく様子も見事です。
コメディあり、ロマンスありのドタバタ劇は、新しい年の幕開けと共に最高のエンディングを迎えます。
観た後には、きっと爽やかな余韻に包まれますよ。
「If My Friends Could See Me Now」が明るい気持ちにしてくれる!
本作の主題歌は、YOU扮する歌手の桜チェリーが歌う『If My Friends Could See Me Now』です。
1966年のミュージカル「スイート・チャリティ」で初めて歌われた楽曲で、その後何度もリバイバルや映画化がされている名作なので、耳馴染みがある人も少なくないでしょう。
この曲は、ビッグバンドが演奏するノリの良いメロディに乗せた陽気なジャズ・ナンバー。
ダンスホールで働く貧しい女性が映画スターと交流を持つようになり、セレブ生活を楽しみつつ過去の仲間のことを思い返す歌詞が印象的です。
YOUの艶っぽい独特な歌声が明るく歌い、作中の年越しカウントダウンパーティーの気分を盛り上げます。
桜チェリーを含め、ホテルに集まった人たちが様々な境遇や悩みを抱えながらも、前を向いて進もうとする姿とリンクし、心を動かされる主題歌です。
本作では他にも、香取慎吾が歌う「天国うまれ」や堀内敬子が歌う「大晦日に想う」など、魅力的な歌が流れるので、ストーリーと共に音楽も楽しめますよ。
「THE有頂天ホテル」は人生を前向きに送れる傑作!
三谷幸喜監督の傑作映画『THE有頂天ホテル』には、社会の様々な場所で起こりうる問題や悩みが詰め込まれています。
従業員も宿泊客も1人の人間として描かれているので、共感できたり滑稽さが際立ったりと、人生の面白さが垣間見えるでしょう。
なかには、自分と同じような悩みを抱えていたり、自分より大変な思いをしている登場人物がいるかもしれません。
しかし、彼らは最後に晴れ晴れとした表情で新年を迎えます。
人生に行き詰まっているように感じる人も『THE有頂天ホテル』を観れば、きっと心がふっと軽くなりますよ。
TEXT MarSali