3年前に書かれた「黄昏にバカ話をしたあの日を思い出す時を」
あいみょんの3枚目のフルアルバム『おいしいパスタがあると聞いて』。
このアルバムに収録された楽曲の多くは、今から2、3年前に書かれたそうです。
さすがは約400曲もの持ち歌があるというあいみょんですよね。
オープニングを飾る『黄昏にバカ話をしたあの日を思い出す時を』も、今から3年前に書かれた楽曲。
あいみょんらしい繊細かつ力強い歌詞を見ていきましょう。
----------------
愛は全てを解決しない
金があれば何でもできるかもしれない
≪黄昏にバカ話をしたあの日を思い出す時を 歌詞より抜粋≫
----------------
このフレーズは、愛の力だけでは生きていけないけれど、お金の力があれば多くの問題を解決できるだろう、という意味ではないでしょうか。
綺麗事を言わない彼女らしい言葉ですね。
3年前の、まだ少しとがっていた頃のあいみょんの気持ちが伝わってくるようなオープニングではないでしょうか。
「鐘」が意味するもの
あいみょんがこの楽曲を書いた3年前の2017年といえば、2016年にメジャーデビューしてから2018年に『マリーゴールド』が大ヒットするまでの期間を表します。あいみょんの知名度が上がっていった時期ではないでしょうか。
----------------
余裕のある生き方がしたい
でも鐘のなる方へは行かないぞ
≪黄昏にバカ話をしたあの日を思い出す時を 歌詞より抜粋≫
----------------
彼女はシンガーソングライターとして成功して行く反面、売れて行くことへの嫌悪感のようなものも感じていたそうです。
その葛藤の中で書かれた「鐘」という言葉には、成功によって手に入る「安定」や「満足」などの意味があるのではないでしょうか。
成功してもそう簡単に楽な方へは行かないぞという、あいみょんの反骨精神が歌詞に現れているのかも知れません。
本当に価値あるものとは?
----------------
高いものに目は眩むけれど
安っぽいものを最後まで信じてみたい
≪黄昏にバカ話をしたあの日を思い出す時を 歌詞より抜粋≫
----------------
高級ブランドの服やタワーマンションの豪華な部屋には誰でも憧れますよね。
成功してそんな高価なものにも手が届くようになったあいみょんが「最後まで信じてみたい」と思う「安っぽいもの」とはどんなものでしょう。
それは、有名人に憧れてつけていた偽物のアクセサリーや、工夫しておしゃれにコーディネートした安い服、みんなで集まってバカ話をした狭いアパートなどではないでしょうか。
そこにこそ自分の原点があるから忘れてはいけないと、あいみょんは自分自身に向かって歌っているのかも知れませんね。
負けず嫌いのあいみょんが歌う人生賛歌
----------------
高いものに目は眩むけれど
安っぽいものを最後まで信じてみたい
≪黄昏にバカ話をしたあの日を思い出す時を 歌詞より抜粋≫
----------------
自分は負けず嫌いな性格だと語るあいみょん。
音楽に対しても常に自分を追い込み、真剣勝負で臨んでいるのではないでしょうか。
彼女のそんな性格が、どんなに成功しても立ち止まらず前進させているのでしょう。
----------------
だからもっと刺激を もっと混乱を もっと人生を
≪黄昏にバカ話をしたあの日を思い出す時を 歌詞より抜粋≫
----------------
このフレーズからサビへとドラマティックに続いて行くこの曲は、少しゴスペルのような雰囲気も醸し出しています。
刺激や混乱があってこそ力強く生きて行けるのだという、負けず嫌いの彼女ならではの人生賛歌のようにも聴こえてきますね。
「バカ話をしたあの日」を思い出すのはどんな時?
----------------
黄昏にバカ話をしたあの日を思い出す時を
≪黄昏にバカ話をしたあの日を思い出す時を 歌詞より抜粋≫
----------------
「黄昏にバカ話をしたあの日」とはどんな日のことでしょう。
学校からの帰り道、夕日の中を友達と並んで歩きながら、気になるクラスメイトや好きな芸能人の話題で盛り上がった日。
バイト仲間のアパートに音楽好きが集まって、夕暮れ時から深夜まで延々と音楽談義を交わした日。
そんな日々のことではないでしょうか。
----------------
優しさに惑わされてふらついたあの日を思い出す時を
あの歌に 涙流し 震えたあの日を思い出す時を
≪黄昏にバカ話をしたあの日を思い出す時を 歌詞より抜粋≫
----------------
もしかすると「黄昏にバカ話をしたあの日」とは、誰もが人生で一番自分らしくいられた時間かも知れません。
その時に夢中になっていたことが自分にとって一番大切なものだと、あいみょんは教えてくれているようです。
この楽曲は、自分の内面を見つめ、本当の自分の姿、人生の進むべき道を教えてくれるような楽曲なのではないでしょうか。
TEXT 岡倉綾子