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ポルノグラフィティ「ヴォイス」呼びかけるのは誰?

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初期のポルノグラフィティには珍しい、落ち着いたトーンの楽曲『ヴォイス』。どこか神秘的な空気をまとった独特の世界観を読み解き、歌詞の意味に迫ります。

運命をテーマにした秋のバラード

▲ポルノグラフィティ 『ヴォイス(short ver.)』

『ヴォイス』は、2001年10月7日に発売したポルノグラフィティの7枚目シングルです。

ジャケット写真は、前作の『アゲハ蝶』同様、メンバー写真を使用せず、虹を切り取っただけの非常にシンプルなデザインです。

『ヴォイス』という意味深なタイトルと相まって、曲への想像力をかき立てます。

この頃の楽曲のほとんどを、作詞・新藤晴一、作曲・本間昭光(ak.homma)が手がけていました。

そんな彼らが、ポルノグラフィティのイメージを作り上げたと言っても過言ではありません。

ファンの間では言わずと知れた、数々の名曲を生み出してきたコンビなのです。

今回はそんな名コンビが生み出した、秋に聴きたいバラード『ヴォイス』を紹介します。

心に呼びかけるような楽曲の内容に触れていきましょう。

呼んでいるのは誰?


新藤晴一の作詞は、詩の一編を朗読しているような、文学的な香りを醸し出しているのが特徴です。

また『ミュージック・アワー』『サウダージ』『アゲハ蝶』のようなノリのよさはなく、テンポを抑えているため、より一層曲の世界へ入り込みやすくなっています。

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僕の名前を呼ぶのは誰?
遠いようで近いようで
耳の奥から聞こえたようで
空からのようで
≪ヴォイス 歌詞より抜粋≫
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歌い出しは、遠いような、近いような、捉えどころのない声で名前を呼ばれるところから始まります。

空から降ってくるような、耳の奥に響くような、不思議な声が聞こえてきます。

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僕の事を知っているのかい?
そうだとしたら教えて
誰かをずっと探しているそんな気がするのだけれど
≪ヴォイス 歌詞より抜粋≫
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「僕」は、声の正体を求めて「誰かをずっと探している」のでした。

まだ見ぬ誰かを求めて彷徨い歩く「僕」と、「僕」を呼ぶ誰かの声。

惹かれ合う2人の存在が、独特の世界観を生み出しています。

これまでのポルノグラフィティには、ここまで深く心に呼びかける世界観の楽曲はありませんでした。

そういった意味で、彼らにとって非常に新しい楽曲だったのではないでしょうか。

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きっと誰かに逢いたくて逢いたくて逢いたくて
僕は此処にいるんだ ねぇそうだろ?
何処かで待つ人よ 出逢うべき人よ
君は確かにいる 感じる
≪ヴォイス 歌詞より抜粋≫
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サビでは、誰かを探し求める切なさや必死さが、より伝わってきます。

「きっと」「出逢うべき人」という歌詞は、まるで運命の糸で結ばれた2人を表しているかのようです。

どこにいるかも分からない運命の人に、自分は出逢うべきなのだと信じて進む姿が、ドラマチックに描かれています。

出逢うべき、唯一無二の存在


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僕の頬に触れたのは何?
空からこぼれる粉雪
天使の羽は多分これより白くて綺麗なんだろう
≪ヴォイス 歌詞より抜粋≫
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空から舞い落ちる雪を見て、天使の羽を連想する「僕」。

まだ見ぬ「君」に思いを馳せる心情とリンクしていて、美しい場面です。

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元はひとつであるはずの心は離れて
平気なはずがないのさ ねぇそうだろ?
君に触れる以上 大切な事を
思いつかない だから行くのさ
≪ヴォイス 歌詞より抜粋≫
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目には見えないけれど、どこかにいるはずの「出逢うべき人」。

まるで前世からの恋人のように、強く惹かれ合う不思議な力が「君に触れる以上大切な事を思いつかないだから行くのさ」という歌詞に込められているようです。

まだ見ぬその人に逢って、触れて、温もりを確かめ合う。それ以上に大切なものはこの世に存在しないという思いが、彼を歩かせるのでしょう。

これだけの短いフレーズで、運命の相手を探し求める心情を、聴き手に理解させてしまうところに、新藤晴一の力を感じます。

感じるだけの存在から、触れられる距離へ


『ヴォイス』における「」の意味は、運命そのものだといえるでしょう。

不思議な声に呼ばれて、見えざる運命の人を探し、2人は徐々に近づいていきます。

どこかにいることを感じながらも、姿は見えない相手。それを信じるか否かは、自分の心次第といえるでしょう。

運命を信じる難しさを詩の一節のような言葉で巧みに表現しており、新藤晴一の秀逸さに圧倒されます。

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星を数えるよりは容易く
雲の行方を知るより困難で
僕がそれを信じれるかどうかだ
左胸の声を聞け
≪ヴォイス 歌詞より抜粋≫
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空いっぱいに煌めく星を数えるのは、気の遠くなるような作業です。それに比べれば運命の人を探し出すことは容易いことでしょう。

ですが、すぐに形を変えてしまう雲の行方を知ることよりも、運命の人を探し出すことは困難だと感じているようです。

星を数える難しさと、雲の行方を知る難しさという2つの対象物を登場させることで、「僕」にとって運命が、どのくらいの立ち位置にあるのか、聴き手に非常に伝わりやすくなっています。

改めて、新藤晴一の文学的なセンスを見せつけられましたね。


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そうさ誰かに逢いたくて逢いたくて逢いたくて
僕は此処に来たんだ なぁそうだろ?
過去がくれたのはヴォイス 明日に導くヴォイス
君が近くにいる 届くよ
≪ヴォイス 歌詞より抜粋≫
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そしてずっと聞こえていた「声」は、徐々に確かな存在へと変わっていきます。

「過去がくれたのはヴォイス明日に導くヴォイス」と歌詞にもあるように、不思議な「声」が「僕」を導き、「此処」まで連れてきたのです。

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きっと誰かに逢いたくて逢いたくて逢いたくて
僕は此処にいるんだ ねぇそうだろ?
≪ヴォイス 歌詞より抜粋≫
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そうさ誰かに逢いたくて逢いたくて逢いたくて
僕は此処に来たんだ なぁそうだろ?
≪ヴォイス 歌詞より抜粋≫
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「此処」に来た理由が明白ではなかったとき「きっと」と曖昧な表現だったのが、最後は「そうさ」と言い切った表現になったことから、心情の変化が現れているといえます。

「届くよ」という歌詞からも分かるように、声が近くで聞こえてくる距離まで来ているのでしょう。

「運命」というテーマを「声」で表現したこの楽曲は、新藤晴一の芸術性や圧倒的な作詞の才能を見せつける重要な楽曲だといえます。


TEXT 岡野ケイ

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